面会の前に主治医との面談があった。
・薬の量を抑えたことで現在、落ち着いているとのこと。
・食欲も普通にある
・時折、感情を爆発させる
・他の患者さんに暴力的なところはない
お袋と面会。
俺は面談室で待機。
お袋が車椅子で連れて来られるのがわかる
どうも眠そうで面会を嫌がっているような感じで部屋に入ってきたが
俺を見るなり、泣き顔に。そして笑顔に。
お互い、手を握りしめながら、いろいろと話してみる
もちろん、お袋からの応えは、おかしなことが多いけど、それでも。
お袋は、相変わらず、俺を心配している。
俺はなんどか死んだことになっていたり
お金に困って警察に捕まっていたりしやいないかと不安に思っていたりで
まじめに、そんなことを言う。
身内がみんな死んじゃって独りぼっちになっちゃったとか。
お袋を安心させようと、そんな話をひとつひとつ否定していく俺。
会話をしていて
ふと、
お袋が俺の名前を言っていないのに気がついて
俺の名前を尋ねてみた。
お袋が言った名前は、叔父の名前だった。
何回か俺の名前を言って聞かせ、
俺の名前を言ってみてと試したのだが、
どういうわけなのか、
俺の名前は、言葉にすることができないようだった。
もしかしたら、今日が、お袋が俺を忘れる日。
お袋の記憶から、グラデーションみたいに俺が消えていくのかもしれない。
「ずっと大好きだからね」とお袋は俺に伝えてくれたけど。