受難の季節
朝、猫の遠吠えで目覚めた。
猫は毛を逆立て、壁を蹴って走っている。時々脚をプルプル痙攣させ、背中はヒクヒクと動く。
やれやれ、季節の変わり目のアレルギーだ。
拾った時からクシャミをして、結膜炎。
あぁ、この子はアレルギー体質だ……(u_u)
私自身と我が子でよくわかっているので直ぐに覚悟をして、医者からアレルギー体質用の餌を買っている。特別な餌とはいえ、缶詰めの餌に比べて割安だと思う。それでも年に二回は症状が出る。
マッサージするように身体を調べると凸凹している。毛皮だから見えないけれど蕁麻疹だ。
今朝も全身で私に「助けてくりょっ!」と訴えてきた。
動物病院に電話して薬だけもらいに行く。猫を病院に連れて行くのはさらにストレスをもたらすので可哀想だから。
もうすぐまる六年、私も投薬のプロになったし、猫も慣れてきた。
結膜炎の時は
「めめちゃん」
というと、ケージに飛び込んで観念のポーズでまぶたと眼球への塗り薬を受ける。
終わればケージから悠々と出る。「おしまい」がわかるのだ。
少し大変な飲み薬。

私は軍手を左手にはめ、大きめのスポイトに水を入れて丸薬を隠し持つ。どんなに隠れて準備をしても猫は異変に気付く。
私の表情をガン見して早々と察する。私は知らぬ顔で家事をしているふりをして猫に隙を与える。
そして、おもむろに近づき、左手でがっしりと捕まえ身体を固定して
「ごっくん!かいかい!ないない!」
と繰り返し言い聞かせる。
親指と人差し指でグワっと口をたてにこじ開け丸薬を投入、すかさずスポイトで水をチューッ!!鼻と口を抑えてごっくんと喉が鳴るのを確認してから「いいこいいこ!お終い!」と褒めてやる。猫はゲフゲフするも、終わったことを理解してケロっと毛繕いをする。
これに至るまでには猫にいつもしてやられていた。
猫はなんと、
「飲んだふり」をするのだ。
投入してちょっとの間は力で口を閉じさせておかないと、暫くして離れた所で「ぺっ!」と吐き出しているのだ。
タイミング、迅速性、絶対負けない!という信念が大切。
どれが足りなくても猫はケダモノの力で抵抗し、ケダモノの知恵で薬を吐き出す。
こちらの勢いさえ勝れば患畜は抵抗の途中で観念するし、やがてはその儀式が終わると身体が楽になることを覚えてか抵抗の力は弱くなってきた。
猫の蕁麻疹にもステロイドだ。
劇的に効く。それだけにさっさと治す必要がある。
娘もアトピーで耳の後ろが切れている。私は毎朝両手が蕁麻疹で腫れる。
大好きな秋なのに、受難の季節だ。
おやすみなさい、明日があるならまたね。