ある音大生二人の物語。
ヴィオラを弾く彼女の実家は裕福であった。
ヴァイオリンを弾く彼の実家は貧しかった。
入学式で出会った瞬間から二人は惹かれあい、いつも一緒に行動するようになった。
練習も一緒に真剣に続けた。
彼に非常な才能があることを早くに確信した彼女は、彼が演奏家として大成するために自分は何でもすると心に決めていた。
ある試験の日、彼のヴァイオリンに合わせて彼女はヴィオラを弾いた。
担当の教授は彼女のことを苦々しく思っていた。
彼女のヴァイオリンが彼の演奏の邪魔になっていると、また、彼女の存在が彼の将来の邪魔になるだろうと、そう考えたのである。
それを察した彼女は身を引こうとするが、彼は彼女の手を離さなかった。
彼は生活に困窮していた。
学費は免除されていたが、実家からの仕送りはほぼ途絶えていた。
二人の交際は彼女の実家でも良く思われる事はなかった。
彼の生活を支える為にも彼女は一緒に暮らそうと提案する。彼女は親の庇護から離れて大学を辞め働くという選択をしていた。
朝から空はどんよりとして、昼にはしんしんと雪が降り始めた年末のある日、二人は学友達に挨拶をしていた。
彼は誰もから愛されていたが、彼女は有る事無い事様々な汚名に包まれてしまっていた。
でも二人は臆することなく、特に彼女は堂々と胸を張って共に生きていくことを学友達に伝えた。
愛する彼がそばに居る、何も怖くはない、こんなに誇らしい気持ちになれる、その喜びに満たされていた。
二人は暗い夜道を歩いていた。
学友達の前でとった自分の態度を振り返り、彼女はまたあたたかな喜びと新たな勇気を感じた。
街灯の下で足を止めふと見上げると、雪が放射状に迫ってくる。
そこだけが白い。





















