のちのおもひに
立原 道造
夢はいつもかへって行った 山の麓のさびしい村に
水引き草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しずまりかへった午さがりの林道を
うららかに 青い空には陽が照り 火山は眠っていた
―――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれも聞いてゐないと知りながら 語りつづけた...
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまったときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥の中に
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう
立原 道造
夢はいつもかへって行った 山の麓のさびしい村に
水引き草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しずまりかへった午さがりの林道を
うららかに 青い空には陽が照り 火山は眠っていた
―――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれも聞いてゐないと知りながら 語りつづけた...
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまったときには
夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥の中に
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう