母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

「夏は過ぎ去った」エミリー・ディキンソンの詩界 

2020年09月11日 | 季節
  
  夏 は 過 ぎ 去っ た   

                エミリー・ディキンソン(アメリカ)
           
悲しみのようにひそやかに
夏は過ぎ去った
あまりにもひそやかで 
ついには 裏切りとも思えないほどに―

もうとうに始まったたそがれのように
蒸留された静けさ
またはみずから引きこもって
午後を過ごしている自然

夕暮れの訪れははやくなり
朝の耀きはいつもと違う
ねんごろでしかも胸の痛むような優美さ
立ち去ろうとする客人のように

このようにして翼もなく
船に乗ることもなく
私たちの夏はかろやかに逃れ去った
美しき ものの中に

 
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2 コメント

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Unknown (シタテルヒコ)
2021-04-20 10:29:33
初めまして。
この記事をアップされた昨年の9月「エミリー.ディッキンソンを読む」という本を読み、以前から欲しかった彼女の詩集をますます読みたくなり、11月にやっと入手することが出来ました。ずっと宝にして行きたいと思います。
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Unknown (はな)
2021-04-20 12:48:22
ご訪問、コメントありがとうございます。
詩集は『自然と愛と孤独と』でしょうか。 続編もありますね。 大変厳しい生き方でこの世のものと思えない言葉の感覚が、美しいですね。
返信する

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