はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

犯罪を防ぐには、犯罪のチャンスを与えるな

2009年01月15日 | はなこ的考察―良いこと探し
先日、書店で立ち読みした新書の内容がとても印象に残っている。タイトルも著者名(確かどこかの大学の先生)も忘れてしまったが、犯罪を防ぐには、犯罪者の更正を促し再犯を防ぐよりも(←もちろん、これも大事なことなんだけどね)、犯罪者予備軍に犯罪の機会を与えないことが有効だ、と言う主旨の内容だった。

では、具体的に犯罪の機会を与えるとはどういうことか?著者は言う。

外から入りやすく、外から見えにくい場所で犯罪は起こる。

以前、学校に侵入し児童多数を殺傷した男は、公判で「なぜ、このような行為に至ったのか?」と問われ、「門が開いていたから」と答えたと言う。すごくシンプルだが、上述の著者の指摘にピッタリと当てはまる。確かに、この事件が起きるまでは、学校の門は常に開かれており、出入り自由だった。そして一旦、入ってしまえば、外部からその様子は見ることができない(そう言えば、空き巣に対して1ドア2ロックが有効なのは、解錠に5分以上かかれば空き巣の殆どが犯行を諦めるからだと言う。件の男も、もし事件当日、校門が閉じられていたなら犯行までに至らなかった可能性が高いのだろうか?”たられば”論は虚しいが、”事件から学ぶ”と言う意味では、考えるべき事柄だと思う)

このことがしばらく頭を離れないでいたら、昨日の午前にも都心にある私立大学で、教授が殺害されるという事件が起きた。犯人は逃走し、未だ逮捕されていない。事件は講義が始まる前の休み時間、大学の研究棟4階の男子トイレで発生した。事件の目撃者はいない。校門には守衛がいるが、基本的に誰もが出入り自由だと言う(私が通った女子大は結構人の出入りに厳しいチェックがあったが…共学はそうでもないらしい)

「犯罪者予備軍に犯罪の機会を与えるな」と言う主張は、既に欧米でそれに基づいた防犯対策が功を奏したことを論拠にしている。どんな社会であれ、一部の人間に、反社会的、反道徳的衝動に駆られる性向があるのは否定できない事実であり、だからこそ、その衝動に遂行の機会を与えない物理的・心理的セーフティネットを社会全体で構築することの必要性を著者は訴えているのである。

確かに、私たちは信じがたい凶悪事件が起きる度に、「なぜ、そのような犯罪が発生したのか?」と、もっぱらその原因探しに躍起になっていたように思う。その槍玉に様々なものが挙げられた(テレビゲームとか、過激な映像作品とか、小説とか、ネット社会とか…etc)。しかし、いまだに決定的な原因は究明されていないのだ(複合要因ではあるのだろう。しかし最終的には個人の問題だと思う)。私たちはそろそろ発想の転換を迫られているのかもしれない。そのひとつが「犯罪の機会を与えない」と言うことなのだろう。犯罪を未然に防げれば、犯罪者を増やすこともなく(←これは社会的コストの観点からも重要)、人々も社会で安心して暮らせるようになる。為政者は、こうした主張に耳を傾けないのだろうか?是非傾けて欲しいよね。
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