はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

花鳥ー愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉

2006年06月03日 | 文化・芸術(展覧会&講演会)


宮内庁三の丸尚蔵館(大手門から100m)で展示中の
伊藤若冲の花鳥図他を見て来ました。
そこは小ぶりの展示室ですが、皇室所蔵の名品を
無料で観覧できる場所
です。かなりの穴場
皇居内を散歩の折りには、是非お立ち寄りくださいませ。
 

三の丸尚蔵館前のつつじ。その色合いが眩しいばかり…

今、皇居内は新緑が瑞々しく若葉の爽やかな香り漂い、
色とりどりの季節の花々も咲き乱れ、ことのほか美しい。
今日散策して、今さらのように気付いたのですが、
皇居(東御苑)内の植栽は優雅に枝を伸ばし、
ツヤツヤとした葉をつけています。
さすがは天皇陛下のお庭。手入れが行き届いています。


《群鶏図》より一部抜粋

伊藤若冲の絵は、マニアックな細密描写と大胆な筆使いとが
ひとつの絵の中に共存しています。
細密描写では”点描”とも言うべき筆遣いが見られる。
西洋美術史では、19世紀後半にフランスのジョルジュ・
スーラやポール・シニャックの点描画が新印象主義として
注目を集めましたが、それに先駆けて18世紀には、
ここ日本で若冲が点描画を描いていたのです。

さらに、写真のように徹底した具象もあれば、
幾何学模様のような意匠化された描写もある。
絵画の中のデザインと言えば、尾形光琳が想起されますが、
ほぼ独学で絵を学んだ若冲が、古今の画家の技法をどん欲に
吸収したのが、その作品の多様性から見てとれます。

また対象を多角的に捉え、
平面図の中で大胆に再構成している作品などは、
ピカソらが実践したキュビズムを彷彿させる。
型に囚われるこのとない自由闊達な作風は、特定の絵師に
師事することなく、ほぼ独学で絵を学んだからこその成果と
言えるでしょうか?それが現代の感覚にもマッチする。
近年の彼の作品の評価の高まりは、時代が彼に追いついた、
と言えるのかもしれません(彼の作品の魅力を世界に
知らしめたのがアメリカ人というのが何とも悔しい)。

色彩感覚も素晴らしく、その作品が放つ魅力は
見る人すべてを圧倒し、魅了します。

他に中国の花鳥図も展示されています。
展示の最後を飾るのが若冲作品。
観光でたまたま立ち寄った地方からの来訪者は、
若冲を知らなくても、その魅力に心を奪われるようで、
絵を前にして様々な感想が口から次々と繰り出されます。
そういう鑑賞者と作品との対話を(言葉は悪いですが)
秘かに盗み聞きするのも楽しい。

「花鳥ー愛でる心、彩る技<若冲を中心に>というテーマで、
今年の3月25日から始まり、9月10まで開催。
会期を5期に分け、各期に若冲の作品を数点ずつ
展示しています。既に3期目に入っており、
惜しくも1、2期を逃してしまいました。
第3期(6/3-7/2)展示作品(…以下は私の注目したポイント)
《梅花小禽図》(1758)…梅花は点描?
《秋塘群雀図》(1759)…群雀の洒落た色遣いと意匠的な構図
《紫陽花双鶴図》(1759)…幾何学的な紫陽花の花びら
《老松鸚鵡図》(不明)…細密描写と大胆な筆遣いの対照
《芦鵞図》(1761)…細密描写と大胆な筆遣いの対照
《蓮池遊魚図》(制作年不明)…日本版キュビズム?


つつじと紫露草とどくだみ。写真より実物が何倍も美しい!

皇居内の端正な庭を楽しみ、三の丸尚蔵館で〆る。
なかなか有意義な休日の過ごし方ではないでしょうか? 
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