はなこのアンテナ@無知の知

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喪中欠礼

2022年11月10日 | 家族のことつれづれ

11月に入ると郵便局や街の商業施設に特設された売り場で、来年の年賀状の販売が開始されます。

我が家は今年(義)父が亡くなったので、10月中に喪中欠礼の葉書を送付しました。来年の正月は年賀状の来ない寂しい年始となります。もちろん、それは仕方のないことです。

そして、11月は喪中欠礼の葉書が届く時期でもあります。

先日、夫の元同僚で同期入社の男性の奥様からの喪中欠礼の葉書が届きました。思いがけないことで、夫婦共に驚きました。

今年のGWの頃に65歳で逝去されたとのこと。長らく年賀状のやり取りだけが続いていた関係ではありますが、夫とは同い年です。同時代を生き、かつて共に社会人生活をスタートさせ、今年、本格的にリタイヤ生活に入ったであろう矢先の訃報。

私自身は直接その方を存じ上げないのですが、それでもショックです。同期入社の職場結婚で、同い年でもあられると言う奥様の心情を慮ると、いたたまれない気持ちになります。私自身が現時点で夫と永遠に別れるなんて想像もつかないのですから。

でも、先日も当ブログで書いたように、人生の終わりは誰にでも平等に訪れるし、それがいつ何時かなど本人にも他人にも基本的に知りようがないのです。たとえ自死するにしても、死の瞬間がいつ訪れるかは、死ぬ瞬間まで分からないはずです。

私が人間の死について考えたきっかけは妹の死でした。私が小学校に入学して間もない頃、当時4歳だった妹は自宅近くの道路でトラックに轢かれて亡くなりました。

その日のことは50年以上経った今も断片的に覚えています。その日は雨が降ったり止んだりの天気でしたが、学校から友人達と帰宅する頃には雨も上がっていました。帰り道、友人達と歩道の水たまりを避けながら自宅に向かい、自宅近くの坂を上り切ったところで大勢の人だかりを目にしました。

ちょうど坂を上り切ったところには小さな商店が一軒あり、その店を取り囲むように人だかりができていました。店の前には一台のトラックが停まっていて、その周辺の路上の血だまりを、警官がホースの水で側溝に流しているところでした。

その時は、よもやその血が自分の妹の血だとは想像もつかず…その後の記憶と言えば、地元の新聞の社会面トップに妹の事故死を告げる記事、葬儀前後に自宅の庭にある2人乗りブランコに自分が一人で乗ったこと、火葬の直前、「いよいよ最期の別れ」と妹の遺体が納められた小さな棺の小窓が開かれ、頭部が包帯でぐるぐる巻きになった衝撃的な姿を彼女の死後初めて見たこと、その痛ましい姿に(既に一度は見ていたはずの)祖母や母が号泣したこと等、まるでそれぞれの場面がスナップ写真のように断片的に蘇って来ます。

その後思い返すと、妹の死を予兆させるような不思議なことが幾つかありました。

ひとつ目は、いつも初詣の後に写真館に寄って家族写真を撮るのが当時の我が家の習わしでしたが、その年に限って亡くなった妹が激しくぐずって、仕方なく妹抜きで家族写真を撮って貰ったのです。二つ目はその前年に三女が生まれ、母は膝を悪くしていたので、亡くなった妹を両親は4月から保育園に入園させたのですが、入園当日から妹はぐずって泣き止まず、それが一週間も続いたので園の方から面倒を見切れないと入園を断られ、結局、妹は自宅で母や生まれたばかりの三女と過ごすことになったのです。

その二か月後に妹は交通事故で亡くなりました。

なぜ、あの時に限って写真を撮られることを頑なに嫌がったのか?なぜ、保育園で過ごすことを、周囲を困惑させるほどの拒みようで嫌がったのか?今にして思えば、幼い妹が、無自覚に自らの死を予見していたかのようにも…

ともあれ、「妹の突然の死」は、朝一緒に朝ごはんを食べたはずの妹が、学校から帰った時にはもういないと言う受け容れがたい現実を、まだ世の理を把握しきれていない幼い私に冷徹に突きつけたのでした。人って否応なく突然いなくなることがあるのだと。

6歳の私はそういう喪失感や無常感を、言葉ではうまく表現はできないまでも、感覚的には理解できたように思います。それが後の自分自身の死生観に繋がっており、誰かの死を通じて、自分が「今、生きていること」「今、生かされていること」の意味をその都度考える、自分自身に問う、きっかけになったように思います。

少なくとも(私)個人は、まだ来てもいない未来に思いを馳せ、あれこれ憂うことより、今、自分はどう生きるべきかに集中して、確実に「今の生」を充実させること、そして今の自分と関わりのある人々とは出来る限り誠実に向き合うこと後悔のない人生を送る上で大切なことだと考えています。


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