私はジェット・リーが大好きなので、予告編を見た時から
是非見たいと思っていました。
先週の月曜日だったでしょうか?何とはなしに
NHK教育テレビの中国語会話講座を見ていたら、思いがけず
ジェット・リーのインタビュー映像が始まりました。
それは彼が本作『SPIRIT』の製作を決意した経緯を
語ったものだったのです。
彼はこう切り出しました。
「昨年、中国では28万人の自殺者が出ました…」
驚異的な経済発展を遂げる一方で、
都市部と農村部の経済格差が広がり、
生きる方向性を見失った人々が多く出ている
中国の現状を憂うジェット・リー。
彼は現代を、欧米列強が中国へとなだれ込んで来た
20世紀初頭になぞらえ、その当時実在した武闘家フォ・
ユァンジアの成功と失意を経て後に至った境地を描くことで、
母国中国国民を励ましたいという明確な意図を持って、
この映画を製作したと語っていました。
その語りは知的で論理的で、引き込まれました。
SPRITというタイトルが示すように、
一つの道を究めるということは、
精神を研ぎ澄ますことであり、
無私(悟り?)の境地に至ることなのでしょうか?
ジェット・リー自身、現在世界最高の武道家のひとりであり、
その彼がインタビューの中で
「武術の技術を極めて9段、それを越えた10段とは
精神性を高めることにある」
というようなことを語っていました。
人が目指す道はそれぞれですが(武道であれ、芸術であれ、
スポーツであれ、文学であれ…)、
最後に至る境地というのは同じものなんじゃないか?
超一流の人に共通するSPIRITは同じなんじゃないか?
ジェット・リーの語りには崇高な精神が感じられたのです。
「人生における最大の敵は自分自身」という言葉も、
ジェット・リーの口から出たなら説得力があります。
一緒に見ていた夫も感銘を受け、
「明日『SPIRIT』を見に行こう!」
と言い出したのでした。
しかし、映画の出来自体は、リーの意気込みは理解しつつも、
物語の展開が少し単純明快過ぎて、完成度は今ひとつ。
もう少し、例えば『インファナル・アフェア』のような
重厚かつ重層的な物語(脚本)にはできなかったのか、
と悔やまれる内容でした。
主役級の扱いだった(エンドロールでは”主演”と表記)
中村獅童は期待通りの好演でした。
【追記】
エンディングの”ハイ&マイティ カラー”の曲は、
本作のテーマやカラーにはそぐわない騒々しさ。
どうしてわざわざオリジナルの曲から、
この曲に差し替えたのでしょう?
日本の配給会社の見識を疑います。
NHKではありませんが、WOWOWのHPで同様の内容を発見!
⇒ジェット・リー インタビュー
月曜日に内容を更新する、とあったので、
もし更新されていたら、
シネマ・ボイス3月放送分第3週VOL.222を
探してください。それがジェット・リーの放送分です。
彼の穏やかな表情、言葉は、正に悟りを開いた僧のようです。