うちの近所に、まるでヤギさんみたいにおとなしい雌犬がいる。
私はその犬と毎日、顔を合わせるようになって5年になるというのに、一度も「ワン」と声を発しているのを聞いたことがないのである。
門扉につながれていて、いつも道路で腹ばいになっている。
そして通りすぎる車や人を、退屈そうに見上げているのだ。
「こんちは」と声をかけても、愛想よく尻尾を振るわけでもなく、つんと無視するわけでもない。
普通は犬といえども、ここぞという時には、それなりに自分の性根を見せる時がある。
ある犬は番犬としての任務を肝に銘じて、飼い主以外の人間に対して「そこまで吠えなくてもいいのでは?」と言いたくなるくらい吠える。
又、ある犬は餌を貰う時だけ、必死になる。
飼い主にとっては問題が多いかもしれないが、それもまた、犬の個性である。
しかし、その犬は、とにかく何に対しても、無感動、無気力のように見える。
エサを食べている時でさえ、淡々とどうでもよさそうな顔をしている。
他の飼い犬が散歩のついでに、ヤギさん犬を見つけて吠えていても、じっとその犬の顔を見ているだけ。
縄張り意識もゼロ。
「この子には感情があるのだろうか」
私が犬の前に立っていても、こちらの顔を上目づかいに眺めている。
本当に口から音声を発することがない、おとなしいというか、やる気のない犬なのである。
ところが、ある日~
つづく
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