kouheiのへそ曲がり日記

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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(1)

2012-03-22 09:49:08 | 日記
昭和55年の7月3日の夜中(正確に言うと7月4日の未明)、大学近くのアパートで勉強していた僕の部屋をノックする音が聞こえた。

「kouheiさん、電話ですよ」
「あっ、どうもすみません」

電話にでると、それは大学の同級生Nからだった。

「今ZさんとFさんと3人で○○(繁華街)に、皆からはぐれておるんやけど、Fさんが泥酔して歩けない状態なんや、電車ももうないし、タクシーでFさんを下宿まで送っていこうと思うんやが、金がないんだ、お前金もって××駅まで来てくれないか、時間を見計らってタクシーで駅まで行くから、そこでお前を拾ってFさんを下宿まで送り届けてから、俺とZさんはお前のアパートに一晩泊めてもらおうと思っているんや」

じつは6月30日から1週間の集中講義でN大学のK教授が来られていて、K教授は7月4日の昼に帰らねばならないということだったので、3日の授業終了後、K先生と我が母校の社会研究室の一同は繁華街へ繰り出して行ったのだ。

僕は行かなかった。
なぜなら7月7日にH教授のゼミで、初めての研究発表が予定されていたからだ。
僕はジョセフ・ガベルの『虚偽意識』という本を読みながら、要約のノート作りをしていたのである。

だが、Fさんは女性だし、ほっとくわけにもいかない。
僕は勉強を中断し、財布をつかむと駅まで走って行った。
駅前はもう暗く、タクシー待ちの人が15人くらい並んでいた。

ほどなくタクシーがやって来た。
僕は「お~いN、ここやここや」と声を出したのだが、僕の声に気づかずNとZさんがFさんを抱きかかえるようにしてタクシーから降りると、すぐにタクシーは帰ってしまった。

僕が「どうしたんや?金あったんか?」と声をかけると、Nは「そんなところにおったら分かれへんやないか、お前の姿が見えないのでFさんの鞄を開けてみたんや、そしたら財布が入っていて、その中に千円札が一枚あったんや、それで(タクシー代を)支払ったんや」と言った。

見るとFさんは完全に心神耗弱状態に陥っているようであった。
NとZさんがFさんを左右から支え、タクシー待ちの列に並ぼうとしたら、「どうぞ先に行ってください」と皆さんから言われた。
僕らはお言葉に甘え礼を言い、次に来たタクシ―に乗り込んだ。(つづく)

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