kouheiのへそ曲がり日記

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

女性の交換と近親婚の禁止

2005-05-04 07:53:00 | 日記
なぜ近親婚が禁止されるのかについては、いろいろな説明がある。

代表的なものには、血族結婚による遺伝上の弊害を防止するためだという説明がある。
しかし、家畜や作物について、同族交配が一定期間続けられれば、むしろ安定した基型に到達することが知られている。

また、本能的な恐れの感情に基づくという説明もある。
しかし、「恐れ」とは、むしろ禁止から派生する感情である。

精神分析学者は、人間精神の奥底に潜むインセストに対する願望を指摘している(エディプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックス等々)。

ともあれ、インセスト・タブーは、あらゆる社会に存在し、近代社会においても存続し続けている。
過去の個別的事件や習慣に由来しているとは、とても言えない。
近親婚の禁止の規則は、社会的規則としては例外的ともいえる普遍性を有しているのだ。

そこでレヴィ=ストロースは、近親婚の禁止という一規則を、社会的交換のシステムのなかへ位置づけた。

社会は、女性の自然的分配(各家族内の女性)を社会的分配に置換するのだ。
その場合の消極的規則は「女を家族(父・兄弟)に対して凍結」することであり、積極的規則としては、「外部集団の男との婚姻(女性の社会的分配)」を強制することが挙げられる。

近親婚の禁止は一見一方的にみえるが、それは互酬性の規則なのである。
なぜなら、自らの集団内の女性の断念は、他集団の成員も同じくその集団内での女性を断念することが条件になるからだ。

婚姻とは、一方的な委譲行為・非対称的制度ではなく、双方的行為・対称的制度なのである。

たとえば、父系的・父方居住的親族集団AとBとで観察されたことであるが、その部族の場合、Aの先行世代がBの女性を獲得していれば、Aの兄弟は姉妹を、父は娘をBに与えるべく義務づけられている。

つまり、近親婚の禁止は、外婚制の規則と表裏一体なのである。
外婚制は自らの集団内で配偶者を求めることを禁止するのみならず、積極的に結婚すべき望ましい相手を規定する。

また、アルカイック(古制的)な社会では、交叉イトコとの結婚の優先的規定がしばしば観られる。
優先的に結婚すべき交叉イトコとは、男からみれば父の姉妹の娘であり、母の兄弟の娘のことだ。

これに対して、平行イトコとは、男からみれば父の兄弟の娘、母の姉妹の娘である。

血の濃さは一緒なのに、交叉イトコとの婚姻は望ましいものとされ、平行イトコとの婚姻は禁止される。
つまり、そこに働いているのは、生物学的ではなく、社会的配慮なのだ。

交叉イトコ婚は、父系社会であれ、母系社会であれ、異なる親族系統間の女性交換をもたらす。

レヴィ=ストロースは、近親婚の禁止の規則は、次のような人類普遍の潜在意識のなせる業だというのである、すなわち「社会的財として高価な女性を他社会と交換することによって、友好的社会関係がもたらされる」と。

コメントを投稿