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スクラッチ木造帆船製作日記と映画、スタトレなどあれこれです。

次のスクラッチの教科書

2007年03月31日 | 海洋関係本紹介

 ヒヤシンスも船体はほぼ目鼻が付いてきたので、そろそろ次の船を捜しています。一応、完全にスクラッチで、船体も作れたことなので、次は、もう少し上の段階を試してみたいところなのです。ヒヤシンスと同じ製作法で、タンブルホームのついた船に挑戦してみるか、フレーム構造の模型に挑戦してみるかといったところなのですが、フレームモデルの方で行ってみようという方に気持ちが傾いています。


 そこで、大枚はたいて、上下巻二分冊になった、SloopのH.M.S.SWAN級のフル・フレームモデルの製作をステップ・バイ・ステップで追いながら、帆船の構造について解説した書籍を購入しました。しかし、こちらは、数あるSWAN級の中から好みの船体をチョイスしてグリニッジのナショナル・マリタイム・ミュージアムから当時の図面を購入して取り組む方式で、図面が付いていません。著者の書いた図面も入手できるようなのですが、個人の型に接触して、そこで分けていただくという方式のようなので、今回は、見送り、ゆっくりこの本を読みながら、次回の製作課題にすることにしました。


 この本を買ったとき、こういうこともあるかなと思い、別の本も同時に注文しておきました。こちらの書籍は、1700年代中葉から1950年代までの200年の中から、三隻の帆船をチョイスして、製作法を解説した本で、それぞれの図面も別に販売していて入手可能になっています。三隻中二隻は、スクーナー系の縦帆船ですが、一隻は、1600年代に建造された王室ヨットの1700年代中葉の再建造バージョンを取り扱っています。


 このヨットは、いわゆる17世紀の帆船の、豪華な彫刻に覆われた船体で、帆装はケッチ(メインと水ンの二本マスト)です。王室ヨットなので、船尾側の船室の床は、豪華な寄木細工ですし、船尾側キャビンの天井を高くとるため、全通のデッキはなく、砲も小型の砲が儀礼用に数門搭載されているだけです。船体全周に渡って彫刻が施されていますし、何より、私が最初に作ったキットがロイアル・キャロラインという王室ヨット(こちらは三本マストのシップ艤装でした)だったので、生まれて初めて作った船と同種の(船の時期は似ていますが、スタイルとしては、100年くらいの隔たりがあります)船なので、フレームモデルとして製作すると、以前は作れなかった船内も再現できて、楽しい気がします。


 今回購入した図面は、シングル・フットフックという構造のフレームモデルの図面で、著者によると、当時の文献の「軽量構造」であるとの記述や、諸般の状況から考えて、おそらくこの船のフレーム構造は、一般的なフレーム構造ではなく、こちらであるとみて間違いないだろうとのことです。


 通常の船体の骨組みは、継ぎ足し位置をずらせた二本のフレームが一組となり、この二本のフレームセットが、隙間を開けて並んでいるため、全フレームは、骨格構造としては、キールでのみ繋がっています。


 一方、シングル・フットフック構造の骨組みは、キールから、一番上まで、一本につながって見えるフレームはなく、いわゆる市松模様のように、上のフレームと交互に組み合わされているため、キール以外にも二か所で艦首から艦尾までフレームがつながる部分ができる構造です。


 このため、メリットとしては、いわゆるフレームモデル製作で必要とされる正確で複雑なジグが不要であることと、フレームが連続して艦首から艦尾まで並ぶ部分があるため、船体形状が取りやすいこと、そして、フレーム工作の中で一番難しいとされるキャントフレーム(艦首に並ぶフレーム)が不要なこと(キャントフレームの部分は、一枚板で構成される)などが挙げられています。


 デメリットとしては、従来のノウハウが使えないこと、フレームモデルとしては、フレーム接続部などの工作部分がないため、若干面白みに欠けることなど、あまり深刻なデメリットがありません。なにしろ、初心者ですから、従来のノウハウなど無縁ですし、解説本に、この構造のノウハウが書かれているので、問題はありません。フレーム構造の面白みに欠けるということは、フレーム構造の難しい部分が一つないということなので、初心者にはむしろメリットになります。


 その分、全体の彫刻やキャビン回りなど、楽しめるところは多いので、今回はこれに挑戦してみることにします。


 いくらヨットとはいっても、前回のヒヤシンスとは違い、同じ縮尺でも結構な大きさになりますから、今回は、艤装はオミットするかもしれません。ロワマストの立て込みまでするのか、マストも下の方だけで、シュラウド類も排するのかはまだ考えていませんが、もしかしたら、ストライキング(トップから上のマストを下におろして固定した、大きな嵐に備えたりする状態)で作るか、進水状態(ロワマストの位置にダミーのマストが仮固定され、王室旗や軍旗などで飾った状態)で作るかもしれません。また、候補としては、船台上で、組み立て中のようなディスプレイにして、甲板なども一部だけしか張らず、ディスプレイすることも考えられます。


 そうしたわけで、当面、ヒヤシンスの艤装類を作りながら、この解説本を日本語にする作業をすることになりました。英国の武装と艤装品の精読も早く仕上げないといけませんが、こちらはそろそろ、武装関係の章に入るところですから、遠い将来、このヨットの艤装品を制作する頃には、終了しているはずです^^;


 解説本の方は、武装と艤装品と違って、当時の文献の引用もないし、あまり難しい言葉も使っていないようなので、もう少しスピードがあげれるかもしれません。ただ、三隻の製作法を解説しているとはいえ、内容的には重複がないように配慮されて様々な製作法について書かれているので、一冊すべてが必要になりますから、それなりの量があります^^;


 この解説本はShip Modering Techniquesというタイトルで、著者はPortia Takakjianという女性です。取り上げている船は、1600年代建造、1750年代再建造の王室ヨットFubbs、19世紀建造のハドソン河スループVictorine、20世紀の調査船Vemaの三隻で、三隻とも図面が別売されています。


 この書籍や図面は、アマゾンでは扱っていないので、専門店で購入する必要があります。下記のピア・ブックスは、海洋関係の書籍の専門店で、品ぞろえも豊富ですし海外通販も問題ないので、お勧めです。


Pier booksのHPはこちらhttp://www.pierdupont.com/


 


 このフレームモデルの製作は、ヒヤシンスと異なり、日本の模型店で入手可能な木材では、大きさ的に製作が難しいので、ある程度の製材作業が必要になりそうです。とはいえ、あまり大型の材木を買ってきて製材することはスペース的に困難なので、ある程度、材木屋さんで小さくしてもらってから、その先を自分で製材する必要がありそうです。また、使用木材も、アメリカと日本では、利用できる材木の種類に差もありますから、このあたりも勉強しないといけません。


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