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くるみ割り人形

2011-01-02 16:29:50 | レビュー


ABT (American Ballet Theatre) の新プロダクション「くるみ割り人形」が今日で幕を閉じる。
このプロダクションは3代目だそうだが、いくつか面白い点がある。

まず、一番の注目はクララ役(子供)の Catherine Hurlin だ。
彼女はバレリーナとして理想的な天賦の才を持っている。
手足が長く、足の曲がり具合がまさにバレリーナ。
そして「生の喜び」が体の中から溢れだしている。
観るものを惹き付ける理由がそこにある。
表現力もすばらしくとても14歳とは思えない。
去年より数々の賞を勝ち取り注目度ナンバー1の若手だ。
このバレエでも一際、光彩を放っている。

次に振り付けと演出。
くるみ割り人形の暗い部分を全て取り除き、軽い喜劇として描かれている。
ある意味、新鮮でオリジナリティーに富んでいるといえよう。

第一幕はとても楽しめた。
子供達の踊りは古典バレエと言うよりモダンな動きを取り入れたコミカルなバレエに仕上がっている。
ハーレクインやコロンバインの踊りも楽しく、毎年くるみ割り人形を見に行く人にとっても斬新に感じられただろう。
最後の雪の場面はとても美しく、古典バレエを十分に堪能させてくれる。
この場面で初めて大人のクララが登場する。
今日の舞台では Paloma Herrera と Cory Stearns がクララとくるみ割り人形を踊った。

私が17年前に渡米した時に、彼女はABTのソリストからプリンシパルに昇進するところでまさに陽が昇るようだった。
それ以来、彼女のファンなのだが、久しぶりに見る彼女はすでに大御所の貫禄。
舞台に登場するだけで空気が変わる。

休憩に入ったとき感じたのは、独創的な演出とそれを具現化する踊り子達の技術の確かさだ。
とても見応えがあり、第二幕への期待が高まった。

後半で特徴的なのは Sugar Plum のアダージョで Pas de Deux を踊るのが大人版のクララとくるみ割り人形という点だ。
確かに「クララが夢の中でこの曲を踊る」と解釈する方が物語としては筋が通っている。
そしてここで再び Paloma Herrera と Cory Stearns を観ることが出来た。
振り付けに少し不満が残ったが全体としてはよい仕上がりだと思う。
Cory の jetes に高さが足りないように見えたが、リフトは美しく、回転系の踊りを二人ともきれよく決めていた。

唯一不満だったのは、中国の踊りとロシアの踊り。
どちらの踊りにもジャンプに高さがないし、中途半端な振り付けだった。
振り付けを変えて欲しい。

アラビアの踊りはユーモラスで楽しめたし、花のワルツも工夫されていた。
目新しいのは黄色い頭の仮面ライダーが4人登場したこと。
イエロージャケットのつもりだったかもしれないが、古い世代の日本人には仮面ライダーにしか見えない。
花のワルツの群舞は仮面ライダーが登場したにもかかわらず非常に楽しめた。

まとめると、独創性に溢れる斬新なくるみ割り人形を高い技術を持った踊り子達がきっちり演じている。
それも子役や端役にいたるまで優秀なダンサーだ。

最後に、入れ物について。
今回初めてBAM (Brooklyn Academy of Music) のオペラハウスを訪ねた。
音響が悪く、生演奏が十分生かされていないというのが感想だ。
ちなみに席は Mezzanine の前から2列目で、本来オーケストラの音が一番映える場所だ。









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