つづき:
数年前、新聞でソノ作品の書評を読んだ記憶があった。
HDの容量が512MBしか無いmy脳にも関わらず、
知らない作家の読んだことも無い作品の記憶が残っていたのは、
ひとえにそのタイトル~『田村はまだか/朝倉かすみ』~が秀逸だった所為であろう。
……言っときますけど、『田村、はまだか(浜田化)』じゃねーですから。
平積みされた文庫本を手にとった。
表紙にはリリーさん(「おでんくん」の方)に似た人物が椅子に座っているイラストが、
帯には吉川英治文学新人賞受賞作品であることを示す文言が書かれている。
少し読み進めると、スグに“コレは当たり/自分が好む傾向の作品だ”とわかった為、
財布の中身と株価、血中コレステロール、好きな相撲の決まり手などを確認し、レジへと向かった。
同窓会の三次会会場となったスナックで、
同級生である“田村”を待つ5人とその店のマスターが、田村を軸にソレゾレの人生/生活を回顧する物語りである。
ただそれだけ。
ただそれだけなのだが、
状況・心理・人物の描写/表現が素晴らしい為、人生の機微に触れまくることが出来る。
登場人物と同世代の人間(40歳前後)なら、“触れまくる”どころか握り締めて機微汁を搾り出すことすら可能な作品だと思う。
久しぶりに正面きって「大好物。」と言える作品に出会えた。 とても嬉しい。
…表紙のイラストは、文中で語られている内容から、スナックのマスターであることが判明する。
近年中に映画化、なんてことになれば、そのまんまリリーさんが演じられるのであろう。