Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 中学生の恋日記 太郎の月曜日 第9回

2010-11-13 22:57:29 | 日記
 太郎と弘子はどちらからともなく体をくっつけあった。
「あったかい」
 太郎の言葉に、
「私も」
 と弘子が言葉を返した。
しばしの沈黙の後、弘子がぽつりと言った。
「ずっと一緒にいようね」
 こう言って太郎の顔を見た。
「うん」
 太郎は言葉を返した。
「心地よい無言の雰囲気が二人を取り巻いた」
 気がつくともう夜の帳が呉の街を覆っていたのだった。
「広島に帰ろう。時間が・・・・・・・」
 この太郎の言葉に弘子は激しく泣きじゃくった。
「どうした」
 太郎が心配して声をかけた。
「広島に帰ろうという言葉がうれしいの」
 弘子は太郎にこう言った。
「だって僕等の住んでいる街じゃないか」
 この太郎の言葉に弘子は太郎に取りすがって泣いたのである。

二宮正治の短編小説 中学生の恋日記 太郎の月曜日 第8回

2010-11-13 05:15:52 | 日記
 太郎と弘子は音戸の瀬戸から三峰を歩いて休山へと向った。太郎と弘子が休山の頂上についた頃は、夕日が呉の街を赤く染めていた。
「うわあ、きれい。音戸の瀬戸もきれいだったけど、この休山から見る風景はなんともいえない」
 弘子は絶句した。
「国定公園だからねえ」
 太郎が静かに言った。
「はるか彼方に広島が見える」
 弘子は驚いたようにこう言った。
「うん、広島の西も見えるよ・・・・・・」
 この言葉を太郎は口にして、急に黙ってしまった。
「広島の西にいた頃のガールフレンド由紀を思い出したからである」
 弘子はこの太郎の異変にすぐ気がついたのだった。
「太郎ちゃんも色々な思い出があるんだよね」
 この言葉には弘子の、
「自分の事だけ考えて欲しい」
 と言う願いがこもっていた。
太郎もこの弘子の気持を察して、
「うん」
 と返事をして、弘子の手をそっと握ったのだった。