Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 小学生悲恋物語 太郎のその後 第7回

2010-11-01 02:34:35 | 日記
 昭和三十九年十月に始まった東京オリンピックは数々のドラマを生んだ。
「男子体操、レスリング、柔道、女子バレー」
 金メダルのラッシュだった。
だが、太郎の心に残ったのは、大会最後に開催された男子マラソンでの、円谷選手の活躍だったのである。
 この大会では優勝候補はエチオピアのアベベ選手が絶対に有力視されていて、大会二連覇は確実とされていた。そして、アベベ選手は見事その期待に答えた。独走だった。
 円谷選手は、競技場に二位で入ってきたが、最後にイギリスのヒュートリー選手に抜かれ銅メダルだったが、だがその力走に日本中が沸いたのである。
 太郎は夕子と一緒にテレビを見ていて、円谷選手がヒュートリー選手に抜かれた時、
「あー・・・・・」
 と手をとって絶叫したが、どうにもならなかった。
「だが、この銅メダルは日本人にとって価値のあるメダルだったのだ」
 大観衆の前で日本人選手が活躍するのを見て、どれだけ日本人が勇気付けられたか。
「円谷選手は小柄な選手だったが、大きな外国人選手に混じって走る姿は圧巻だった」
 この東京オリンピックは、新しい日本の歴史を作ったのだった。
「その後の高度成長の礎となった」
 太郎は、東京オリンピックを見終えて、
「生きていて良かった」
 しみじみとこう思ったのである。
「今からは新しい時代が来る」
 新しい日本の到来を予感したのだった。
「夕子ちゃんありがとう、生きていてよかった」
 太郎は夕子にお礼を言った。