Seiji Ninomiya (二宮正治)

Let me tell "JAPAN NOW"

二宮正治の短編小説 中学生の恋日記 太郎の月曜日 第13回

2010-11-18 02:33:53 | 日記
 呉からの転校生晴美は太郎にわが身を嘆くのだった。
「何で私はこんな目に遭わなければいけないんだろう。呉で幸せな生活を送っていたのに広島で生活をしなければいけないなんて」
 この言葉に太郎は、
「広島も素晴らしいよ、辛いのは最初だけだよ」
 と優しく声をかけたが、晴美は聞く耳を持たなかった。
「呉がいい」
 この一点張りである。
太郎は晴美を比治山に連れ出して、弘子と眺めている展望台から見える広島の町を見て、
「この風景を自分の故郷だと思うんだ。そうすると必ず広島を好きになる」
 こう言ってポケットからハーモニカを取り出して、
「明日があるさ」
 を晴美に吹いて聞かせた。
晴美は涙を流していた。そして、
「ずっと私のそばにいて」
 と太郎に哀願するのだった。
太郎は何とか晴美の登校拒否を止めさして学校に連れ戻そうとしていたので、
「そうするよ」
 と返事をしたのである。
だが、この返事が波乱を起す事になった。