文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば94:下段③98-101_127

2012年04月23日 | 文明開化と平仮名英語

 下段③98-101_127
 

88までに②『外国商通言葉集』下段の「言葉の部」を中心に調べてきた。しかし、②の「言葉の部」にはどのような経緯があったのか、①『外国商通ことばつけ』や③『外国商通古と者附』にある臨場感あふれる商売上のやり取りなどの言葉が収録されていない。その部分が本命の筈なのだが・・・③と①は多少の言葉つかいに違いがあるものの同じといってよさそうだ。③を上①を下に分けて搭載したから細部の違いも比較検討できるでしょう・・・

今回は、③『外国商通古と者附』の98行目から101行目までと127行目を掲載

98行目 ③『外国商通古と者附』:日本語≪
()多たくしのいへ尓()き多たれ≫英語よみ≪かむまひ者()うす≫①『外国商通古と者つけ』では言い回しもほぼ同じ。英語綴りは・・・Come my house.・・・

99行目③『外国商通古と者附』:日本語≪かう志
()()①『外国商通古と者つけ』では≪高志()≫その英語読みは③①とも≪でやぷらいす

英語綴りは・・・dear price・・・
この「かうじき」には全くお手上げ、中央図書館の専門員のご教示をいただいた。多謝。

100行目 ③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』とも日本語≪いそぎ≫英語よみ≪れいす≫から英語綴り・・・race・・・。raceにこのような意味があるのを初めて知ることに・・・

101行目 ③『外国商通古と者附』、①『外国商通古と者つけ』とも日本語≪遍(へ)んじ≫英語よみ≪於(お)ゝらい≫・・・all right ・・・

127行目③『外国商通古と者附』:日本語≪ありがとう≫英語よみ③≪たんきょう≫ ①≪たんき由(ゆ)う≫・・・Than you.・・・

ところで佐野屋冨五郎の師匠格にあたると思われる④清水卯三郎編著『ゑんぎり志ことば』の下巻「あいばなし」(これは会話のこと)から「ありがとう」がどのように使われているか探してみた。
上段に日本語≪そうして、く多(だ)されバ、ありが多(た)し下段にその英語読み≪センキ、ユウ、 か多(た)ぢけなし≫≪イフ、 もし≫≪ユウ プリース このむなら
これから・・・Thank you if you please.・・・。何回も見比べて当時の英語を味わってみたい。

清水卯三郎は学者、実業家、商人など多彩な肩書を有し、パリ博覧会での貢献でフランス政府から勲章を授与されたとも聞く.当代随一の人物とも評されていた。卯三郎ならではの値引き交渉の最たるものとして、熟読玩味してみよう。

③『外国商通古と者附』は④清水卯三郎編著『ゑんぎり志ことば』の影響をかなり強く受けていたものと思われる。
尤も十分理解して転記しようとしたか疑わしい部分も散見される。

改めて、③『外国商通古と者附』下段”ことばのぶ”全129語と、下段全107語と比較してかなり収録語数の少ない①『外国商通古と者つけ』において、ご覧のように遜色ないところを見ても、まさに両者の呼び物のやり取りの場面・・・。

次回 :95:③『外国商通古と者附』の下段102行目から108行目まで

挿図
   ①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
   ②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
   ③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
   ④清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵