21:本文41-44
前回の「20:本文38-40」では収録語彙のあまりの様変わりに手の出しようがなく、まさにお手上げ状態であった。今回は、台風一過、何事もなかったように従前の状態に戻って一安心。
挿図の赤数字は①の場合、全109語の35番目を示す、以下同様に②の場合は全189語の、③は全186語のそれぞれ41番目を示す。
ここでは東西南北を扱う。
東西南北の順を意識していたが、①の『外国商通古と者つけ』では東西北南。②③では東西南北の順であった。『ゑんぎり志ことば』では、どういうわけか北東南西の順となっている。 並び方が不可解。なにか特別の事情があったのか。情報をお持ちの方はご教示頂ければ・・・。ここでは、②③の順に従う。
41行目:日本語いずれも「ひ可(が)し」その英語読み①③とも「ゑいる」。「ゑいる」ではeast にどうにもつながらない。何かと混同した恐れもある。このよみは『ゑんぎり志ことば』の「ヱイル」を受け継いでいるのかもしれない。『外国言付』も同様であるところを見ると、かなり広範囲にわたっていたようだ。
②の英語読み「いーすー」、『英語実用便』で「イースー」どうやら east の最後のt を飲み込んだ形になっている。難解
42行目:①②③いづれも日本語読「尓(に)し」英語読み①②とも「うゑ春(す)と」(west)③は「うゑすと」で読みは同じ。
43行目:①「三(み)奈(な)み さ於(お)す」(south) 、②では「そうす」、『英語実用便』では「ソウス」で類似の読み。『ゑんぎり志ことば』では「ソウチ」で (south) の (th) を(ch) と取り違えか。後出の(north)も同じようだ。
③では、なぜか「つうち」、『外国言付』も同様である。≪ソ⇒ツ≫の読み違えで「つ」としたのだろうか。わからなくなってきた。
ところで、『英語実用便』の見出し語は「となみ」と読めるが、「三(み)」の最初のひと筆(一画)が刷りむらの影響で消え、二画と三画のつながりで「と」に見えるいたずらか。注意を要する。
44行目:①②③の日本語読み「きた」英語読みは①「のるす」②「のる春(す)」(north)、③ではなぜか「のるち」、『外国言付』も同様である。『ゑんぎり志ことば』も「ノルチ」。何故「ち チ」の読みなのか、思い当たらない。前出の(south)と同様か。
次回 22:本文45-49
挿図
①佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
②佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
③佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
『外国言付初編』(刊年不明)早稲田大学図書館所蔵
尾嵜冨伍老『英語実用便』明治11年(1878)神奈川県立図書館所蔵