文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

外国商通ことば 18:本文30-33

2010年11月01日 | 文明開化と平仮名英語

 18:本文30-33

挿図の赤数字はの場合、全109語の20番目を示す、以下同様にの場合は全189語の、は全186語のそれぞれ30番目を示す。
読み進めていくうちに収録語彙に変化が現われ、その加除と並びの前後不順は編者の意識の動揺・変化を暗示しているようで興味深い。

   注:行数の表示はを基準にした場合(も同じ)30行目から33行目までとすべきところ、説明の都合で、32行目(せん月)を追加したため、このページでは34行目までとしている。

30行目:②③日本語「とし」その英語読み「いーあ」(year)「ゑぐや」これは難解、year に程遠い。 の場合は既に17に出ている。そこでは、周りとの馴染みはなく取って付けたようで座りは悪かった。こちらに持ってきた方がはるかに座りはよさそうだが。

31行目:「一ト月 ゑもんす」(a month)、②③「ひとつき」の英語読みはでは「王(わ)んもんす」(one month)、では「ねつき春(す)ともんす」(next month)で、来月と取り違えている。調べてみると『外国言付』も同じ過ちをしている。この様な過ちの踏襲は調査上の重要ポイント。

さてこれから、先月、今月、来月を扱う。この順が座りが良いと思うのだが先月はのみ収録、もともと収録語数が多い②③にはいずれも収録されていないのは不可解。さらに、②③とも来月、今月の順で、配列が良ろしくない。理解に苦しむところ。

32行目:の「せん月 らすともんす」(last month)ピンクボタン表示をしたのは、②③には見当たらないため。では次の33行の「らいげつ」に「らすともんす」があるなど大混乱。

33行目:「こん月」34行目「こんげつ」英語読みはいづれも「て春(す)もんす」(this month)、≪てす⇒です≫濁音はかなり恣意的。では34行目に「こんけつ」≪けつ⇒げつ≫濁音は同様恣意的。英語読みは「志(じ)すもん春(す)」

34行目:「らい月 ねつきすともんす」(next month)、②③は33行目に「らいげつ」、英語読みはねき春(す)ともん春(す)」、但しでは「らすともんす」と混乱。の「ねっき春(す)ともんす」は31行目の「ひとつき」のところに現れるなど大混乱。

こちらまでオカシクナリソウだ!この様な混乱はなぜ起きたのか、今後の検討課題が増えた。

ゑんぎり志ことば』では「きたるつき」云い換えて「らいげつ」「子キストモンチ」とある。「ひとつき」、「あとつき」、「きたるつき」の並びがいい。編者清水卯三郎のセンスか。

  次回 19:本文34-37 

挿図
佐野屋冨五郎『外国商通古と者つけ』(刊年不明)手持ち原葉、一枚もの
佐野屋冨五郎『外国商通言葉集』(刊年不明)横浜市中央図書館所蔵、折本
佐野屋冨五郎『外国商通古と者附』(刊年不明)神田外語大学付属図書館所蔵、折本
清水卯三郎『ゑんぎり志ことば』万延元年(1860)早稲田大学図書館所蔵
外国言付初編』(刊年不明)早稲田大学図書館所蔵