文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

「英語寄(7/21)」(42u)第42丁裏

2010年01月18日 | 文明開化と平仮名英語
英語寄[いぎりすのことばよせ]は、商売に関係する言葉を寄せ集めた商用英語集のようなもの。『萬国通商往来』(明治6年出板)の第39丁裏から第49丁裏まで全21頁にわたって頭注に掲載されている。
 今回は、その第7回目(7/21)、当時の往来物に掲載の英語を知る上で大へん興味深い。皆さんと共に当時の英語を垣間見て、興味を分かち合えれば幸いです。

 頭注は、それぞれ10行にわたり、「通商」つまり商売にかかわる用語を取り上げ、その英語読みを片仮名で表す。つまり片仮名英語を収録している。

 表わし方:「(平仮名による振り仮名付きの漢字)・・・を(片仮名英語)・・・≪≫といふ」、≪≫に英文字を補足
ここでは、振り仮名は[ ]で示し、平仮名の崩し字の読みは()で示す。 崩し字には悩みが尽きない。お気づきの点はご教示を願います。以下、数字は行を示す。
①合印[あいいん]をバツジ≪?≫といふ
②荷物[にもつ]をカルゴー≪cargo≫といふ
③贋物[尓(に)せ毛(も)の]をコーントルフヱイト
≪?≫といふ
④船[ふ年(ね)]をシツプ≪ship≫といふ
⑤馬車[盤(ば)しや]をカリホイジ≪carriage≫といふ
⑥乗合馬車[のりあいくるま]をオミ子(ネ)ブス≪omnibus≫といふ
⑦郵舩[ひきゃくせん]をメイルステイームル≪?≫といふ、mail steamer かもしれない。『和英語林集成』には見当たらなかった。
⑧屋形造[や可(か)多(た)づく]りの渡[王(わ)多(た)し]し舩[ふ年(ね)]をヘレボウト≪ferry-boat≫といふ
⑨大舩[おゝふ年(ね)]を引[飛(ひ)]く蒸気舩[ぜうきせん]をタグボウト≪tugboat≫といふ
⑩艙[尓(に)?]をホールド
≪hold≫といふ、艙の振り仮名が読めない、残念。

 注:①合印[あいいん]を『和英語林集成』で見ると、アヒジルシ、合印、badge とある。補充 ≪badge≫
贋物[尓(に)せ毛(も)の]は『和英語林集成』には、ニセモノ、贋物、counterfeit とある。補充
≪counterfeit≫

<挿図>
『萬国通商往来』明治6年(1873)、神奈川県立図書館k670.3/2
『和英語林集成』慶応3年(1867)、明治学院大学デジタルアーカイブ、横浜開港資料館D.VIII.7C