文明開化と平仮名英語

流れるような筆使い、崩し字満載の平仮名で書いた英語は日本国開国・文明開化の一時期を象徴するような出来事でした。

「英語寄(5/21)」(41u)第41丁裏

2010年01月04日 | 文明開化と平仮名英語

  英語寄[いぎりすのことばよせ]は、商売に関係する言葉を寄せ集めた商用英語集のようなもの。『萬国通商往来』(明治6年出板)の第39丁裏から第49丁裏まで全21頁にわたって頭注に掲載されている。 今回は、その第5回目(5/21)、当時の往来物に掲載の英語を知る上で大へん興味深い。皆さんと共に当時の英語を垣間見て、興味を分かち合えれば幸いです。

 頭注は、それぞれ十行にわたり、「通商」つまり商売にかかわる用語を取り上げ、その英語読みを片仮名で表す。つまり片仮名英語を収録している。
  表わし方:「(平仮名による振り仮名付きの漢字)・・・を(片仮名英語)・・・≪≫といふ」、≪≫に英文字を補足。ここでは、振り仮名は[ ]で示し、平仮名の崩し字の読みは()で示す。 崩し字には悩みが尽きない。お気づきの点はご教示を願います。

 以下、数字は行を示す。
出店[でみせ]をメルチェンダイス≪merchandise≫といふ、意味を取り違えているようだ。
店[みせ]をショツプ≪shop≫といふ
金子[きんす]をモニー≪money≫といふ
銭[ぜ尓(に)]をコイン≪coin≫といふ
札[さつ]をペープルモニー≪paper money≫といふ
手形[て可(が)多(た)]をスエルテイフイケート≪*≫といふ
利息[りそく]をイントレスト≪interest≫といふ
拂方[者(は)らい可(か)多(た)]をペイメント≪payment≫といふ
貸方[可(か)し可(か)多(た)]をクレデイトル≪creditor≫といふ
借方[可(か)り可(か)多(た)]をデブトル≪debtor≫といふ


①『和英語林集成』を見ると、デミセ、出店 とあり branch store とある。訂正したい。
⑥『和英語林集成』を見ると、テガタ、手形とあり certificate とある。不安解消*印に補充≪certificate≫

  <挿図>
『萬国通商往来』明治6年(1873)、神奈川県立図書館k670.3/2
『和英語林集成』慶応3年(1867)、明治学院大学デジタルアーカイブ、横浜開港資料館D.VIII.7C