ーQ1-
今回の 5 基の廃炉決定を契機に、わが国の原子力発電は「建設~運転・保守」 に「廃炉」を加えた 100 年にも及ぶライフサイクルが完結することになる。こ のサイクルを適切に閉じながら、次なるリプレースに繋ぐことで、原子力発電 を持続可能な成熟した技術体系として確立することができる。
また、建設プ ロジェクトが通常 5 年程度であるのに比較して、廃炉作業は更地に戻すまでに 20~30 年という長期間を要することが特徴
本格化する電力システム改革を見据えると、原則 40 年とされる運転期間 延長申請の許可の見通しや新規制基準対応にかかるコスト増等、原子力を取り 巻く事業運営の不確実性が増す厳しい環境下においては、これまで一律に取り 扱ってきた原子力発電所の選別が進むのは経営判断として当然あるべき姿であ ろう。
ーA1-
弧状列島日本全土及び経済的排他的水域内における
のエネルギー安全保障を満たすために、
A1.1正常原発の運転・保守ライフサイクル=建設期間5年+運転・保守期間40年+廃炉作業期間20~30年=75年最大を「10年ひと昔」×2の世界的技術進歩を考慮して、正常原子炉の運転・保守標準ライフサイクル=建設期間5年+運転・保守期間40年÷2=20年+廃炉作業期間20~30年÷2=15年=40年を想定して、①燃料自給率0%固定型原子力発電所、燃料自給率0%固定型火力発電所、燃料自給率100%固定型水力発電所、燃料自給率100%固定及び可搬型メッシュ分散NW型太陽光発電・蓄電・放電・送電所・・・のライフサイクルサイクルコストを試算か。
A1.2事故発生原発の運転・保守ライフサイクル=建設期間X年+運転・保守期間Y年+廃炉作業期間Z年=X+Y+Z年(注1)を想定して、①正常固定型原子力発電所、固定型火力発電所、固定型水力発電所、固定及び可搬型メッシュ分散NW型太陽光発電所・・・のライフサイクルコストを試算か。
(注1)福島第一原発の廃炉作業の「いま」 ~東日本大震災・福島第一原発事故から11年3月9日宮本泰明
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/f6aad39783c08e39d18c7183d9803edc
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/f6aad39783c08e39d18c7183d9803edc
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2015 年 3 月 19 日
一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 服部 拓也
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服部 拓也(はっとり たくや、1944年6月17日 - 78歳)は、日本の技術者、実業家。東京電力副社長を経て、現在日本原子力産業協会理事長、原子力国際協力センター理事長。
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先日、関西電力㈱をはじめとする 4 事業者が計 5 基のプラントの廃炉を公表 した。
本格化する電力システム改革を見据えると、原則 40 年とされる運転期間 延長申請の許可の見通しや新規制基準対応にかかるコスト増等、原子力を取り 巻く事業運営の不確実性が増す厳しい環境下においては、これまで一律に取り 扱ってきた原子力発電所の選別が進むのは経営判断として当然あるべき姿であ ろう。
今回の 5 基の廃炉決定を契機に、わが国の原子力発電は「建設~運転・保守」 に「廃炉」を加えた 100 年にも及ぶライフサイクルが完結することになる。こ のサイクルを適切に閉じながら、次なるリプレースに繋ぐことで、原子力発電 を持続可能な成熟した技術体系として確立することができる。
世界的に見ても、現在 431 基が運転中、76 基が建設中と原子力利用拡大の流 れは変わらず、既設炉を最大限有効活用するとの考えに立って、運転期間延長 を進める国が多く見られる。しかしながら、運転中の 431 基のうち約 74%に当 たる 318 基が運転開始から 25 年以上を経過し、そのほか 133 基が既に廃炉の ために停止しており、新増設と並行して廃炉が進められる時代が既に始まって いる。
本格的な廃炉時代の到来を迎え、これを円滑に進めるために 4 点指摘したい。
○魅力ある廃炉ビジネスに成長させ、世界のトップランナーに
わが国は、1960 年当初に商業用原子力発電所の建設を開始して以来、これま で途切れることなく計 57 基のプラントを建設してきた。こうした経験を重ねな がら確立した「工期通りに予算内でプラントを完成させる(on time and on budget)」わが国独自のプロジェクト管理手法は、世界各国から高い評価を受け ている。 多くの企業が関わる建設プロジェクトにおいて、設計、許認可、部品調達、 工場製作、検査、輸送、据付、試運転までのプロセスを高い品質と信頼性を確 保しながら管理し、モジュール工法を駆使して合理的・効率的に進めるプロジェクトマネジメント能力は、世界的に見ても他国の追随を許さないレベルであ る。
このビジネスモデルを廃炉作業に適用すれば、その能力を最大限発揮する ことができるはずだ。
既存の技術に加え、遠隔操作におけるロボット活用など の新たな分野が活躍しうる廃炉作業においては、日本人のこうした特徴、能力 を生かした「廃炉ビジネスの日本モデル」をグローバルなフィールドで展開で きるに違いない。 是非、これからの若い世代が魅力を感じられるグローバルなビジネスモデル に成長させ、世界のトップランナーとなって活躍できる環境を整えていくこと を、国、そして事業者に期待したい。
○柔軟な発想で、効率的かつ人と環境にやさしい廃炉作業を
わが国では、健全なプラントの廃止措置については系統除染、安全貯蔵、解 体撤去のプロセスを経てグリーンフィールド(更地)に戻すことを基本として いる。
通常の廃炉作業は放射線環境下での作業という特徴はあるものの、技術的に 大きな困難を伴うものではないと考えられる。
従って、安全かつ効率的で、周 辺住民はもちろん作業員の被ばく量の低減とともに廃棄物発生量を抑える「人 と環境にやさしい廃炉」を如何に進めるかが重要な課題となる。
また、建設プ ロジェクトが通常 5 年程度であるのに比較して、廃炉作業は更地に戻すまでに 20~30 年という長期間を要することが特徴である。 こうした観点からいえば、複数基が同じ敷地内にある我が国の場合、将来の 後続プラントの廃炉も考慮して、長期的な視点から作業量を平準化し、全体最 適を測りながら工事を進めるのが合理的である。
例えば、使用済燃料の貯蔵施 設や放射性廃棄物の保管管理施設の合理的な設計を行うとともに、使用機材を 共用することで全体コストの低減や廃棄物低減に大きく貢献できるだろう。事 業者は、常にこうした柔軟な発想を持って、効率的に廃止措置を進めることが 肝要である。
○オープンな姿勢でグローバルなビジネス展開を
健全な商業用プラントの廃止措置は既に海外で実績があり、必要な技術は確 立しているといえる。
しかしながら、国内の実績といえば研究炉や小型の動力 試験炉(JPDR)の実績、現在進行中の新型転換炉(ATR)ふげんなどの経験は あるものの、商用炉では現在廃炉作業中の東海発電所(ガス炉)および準備作 業中の浜岡原子力発電所 1,2 号機のみであり、海外の廃炉先進国に比較して十分 な経験を有しているとは言えない。既に、海外の廃炉先進国からわが国に積極 的な売り込みがなされている状況にあるが、国内のみならず、世界中で展開されつつある廃炉ビジネスに参入するためにも、世界に門戸を開いて積極的に廃 炉先進国の英知を取り入れる姿勢を持ち、グローバルなビジネスに成長させる 舵取りが国、事業者に求められる。 そのためには、廃炉を手がける個社が対応するのではなく、オールジャパン で廃炉に取り組む体制を構築することが望ましいのではないだろうか。廃炉に 関する技術と人材を集中し、海外企業とアライアンスを組むなど、グローバル に、かつ長期にわたる今後のビジネス展開を視野に入れた体制造りが求められ る。
○立地地域の理解とともに地域経済の支援を
原子力発電は、国策として国民生活や産業活動の根幹をなす「電気」を長年 にわたり安定して供給し、国民はその恩恵を受け、豊かな生活を実現してきた。 廃炉を進めるにあたり、計画段階から建設、運転・保守に至るまで、長年に 亘りご理解ご協力をいただいてきた立地地域の方々に対する丁寧な説明が欠か せない。廃炉により発生した使用済燃料や放射性廃棄物は当面発電所内で貯蔵 管理することになるかと思うが、この点についても地元の理解を得ることが必 要であろう。 また、長年にわたり原子力発電所との共存という形で発展してきた地域経済 への影響を最小限に止める施策を講じるなど、廃炉後の新たなまちづくりに向 けた環境整備が不可欠である。廃棄物処分の基準整備や処分場の確保など、着 実な廃炉の実施に向けた環境整備を進めると同時に、廃炉が進められる時代に おける立地地域のまちづくりに、国、事業者が積極的に支援・協力していくこ とが求められる。
以上、国、事業者をはじめとする関係者には、廃炉本格化の時代が現実とな った今こそ、立地地域の理解や地域経済への影響緩和などの課題解決を図りな がら、わが国の廃炉ビジネスを世界に通用するものに成長させるべく、リーダ ーシップを発揮していただけることを期待している。
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