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■阿羅健一(あら・けんいち) 評論家・近現代史研究家。1944年、仙台生まれ。東北大学卒業後、会社員を経て、82年の教科書誤報事件をきっかけに南京事件などの調査・執筆を始める。現在、南京戦の真実を追究する会会長。著書・共著に『謎解き「南京事件」』(PHP研究所)、『吉田茂という反省』(自由社)、『史料が語るノモンハン敗戦の真実』(勉誠出版)など。
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ロシアで今年世論調査を行ったところ、ヨシフ・スターリンに対して肯定的な感情を抱く人が5割、スターリンが歴史に果たした役割を肯定的にとらえる人が7割を超えた。あれほどの餓死者と追放者を出し、ソ連時代を放擲(ほうてき=投げ出すこと)したはずのロシアだが、スラブ民族としての歴史を否定しないということだ。
スラブ民族は、もともとウクライナやベラルーシ一帯に住んでいた。16世紀に入ると東に向かい、ツンドラ(凍土)やタイガ(森林)を進み、シベリアを自国領にし、ベーリング海峡を渡ってアラスカも自国領とした。長い年月の間の東漸(とうぜん=文明や勢力が次第に東方に移り進むこと)はスラブ民族の特徴の1つとなった。
プーチン大統領は15年、東方経済フォーラムを開催した。極東は貧困層が多く、人口は減少を続けており、ここで何ができるというのだろうか。メドベージェフ首相は今年8月、北方領土・択捉島を訪れている。スラブ民族は東漸でここまで来たと言わんばかりで、スラブ民族の特徴は変わっていないように見える。
ロシアがノモンハン事件をいまのように評価している限り、ロシアは北方四島返還の要望に応じないのではないか。また、いまの日本のゆがんだノモンハン事件の評価では、ロシアの評価を変えさせることはできないだろう。北方領土解決のためにも、日本でのノモンハン事件の正しい分析が求められている。