感染症内科への道標

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呼気中にはインフルエンザウイルスが排泄されている

2018-02-15 | 微生物:ウイルス その他
論文名: Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community.
雑誌: Proc National Acad Sci 2018; 115:1081–1086.
著者名:Yan J, Grantham M, Pantelic J, et al.
要旨
目的
咳の程度と呼気中に含まれるウイルス量の関連を検討する

方法
Dec. 2012-Mar. 2013
University of Maryland-College Park campus とその周辺
急性呼吸器症状を持つボランティアを募り、質問紙法で基礎疾患、症状等を調べ、鼻咽腔拭い液を採取しインフルエンザ迅速検査・PCR検査を行う
①迅速検査陽性または口腔温37.8℃以上+(咳または咽頭痛) ②発症後3日以内 の条件を満たす者をinclude
対象者からthe Gesudheit-II human source bio aerosol samplerを使用して30分間呼気を採取
呼気採取中は会話、咳、くしゃみは自由にさせる
5分・15分・25分の時点でアルファベットを発音させる
“coarse” (>5µm) aerosolと”fine” (0.05µm<, ≦5µm) dropletを採取
採取中の咳・くしゃみの数は直接観察して測定
検体中のウイルス量をRt-PCR、MDCK細胞を使用した培養法で測定

結果
355人のボランティア中178人をenrol, 156人(88%)がRT-PCR陽性, 142 casesのデータが得られた(A 83, B 50, A+B 3)
多くが若年成人(19-21才), 喘息罹患率が高い(21%)、低いインフルエンザワクチン接種率(22%)
咳の頻度とcoarse aerosols中のウイルスRNA量は相関を示した一方、fine aerosols中のRNA量とはよく相関した。
咳がなかった検体でもcoarse aerosolsの3/23(13%), fine dropletsの11/23(48%)でウイルスRNAが検出できた
くしゃみの数はRNA量との相関を示さなかった
回帰分析では発症後の期間が経つほど急激にfine aerosols中のウイルス量が減少した( coarse aerosolsはぎりぎり有意な減少)が、鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量は変わらなかった
咳の頻度はfine, coarse aerosols中のウイルス量と有意に相関した
男性の方が女性と比較し3.2倍fine aerosols中のウイルス量が多かった
BMIは高いほどfine, coarse aerosolsのウイルス量が有意に増加したが鼻咽腔ぬぐい液のウイルス量は変わらなかった
当該シーズンのワクチン接種はfine aerosolsのウイルス量と相関する傾向を示し、前シーズン・当該シーズン両方のワクチン接種を受けている群は両方受けていない群と比較して6.3倍aerosols中のウイルス排泄量が有意に多かった
鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量・体温・喘息の既往・喫煙・インフルエンザの型はウイルス排泄量と相関しなかった
症状はウイルス排泄量と相関しなかったが、鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量とは有意に相関した
年齢が高いほど鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量が減少したが、ウイルス排泄量とは相関しなかった。

まとめ
インフルエンザウイルスは空気中に長時間滞在し空気感染のリスクとなる小さな粒子として一定の量が排泄されている
自覚症状はウイルス排泄量と相関しなかったが鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量とは相関した
くしゃみはあまり観察されず、ウイルス排泄量とも相関しなかった
ただしくしゃみは多量のしぶきを撒き散らすため環境汚染の原因となっているかもしれない
咳はウイルス排泄量と相関したが、咳が無くても微細なaerosolsとしてウイルスは排泄されていた。←呼気中の微粒子は肺の細かな気道閉塞・開通で発生する
咳は比較的大きな粒子としてウイルスを排泄すると考えられる
咳の頻度はcoarse aerosolsよりfine aerosolsのウイルス量と相関したが、これは原因と言うより高ウイルス量の結果として咳が多くなったと考えられる
男性の方が咳とfine aerosol中のウイルス量が相関を示した。これは女性の方がより刺激に敏感に咳が出やすいため男性の方がウイルス量と咳の回帰曲線が急になるためと考えられる
上気道症状は鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス量と相関したが、ウイルス排泄量と相関しなかった。そのため上気道はウイルスの排泄には関与しないと考えられる。
発症後の期間と鼻咽腔ぬぐい液中のウイルス排泄量の減少の相関は認めなかったが、aerosols中のウイルス排泄量の減少とは相関しており、感染における上気道と下気道の違いを示唆する
ワクチン接種がウイルス排泄を増加させたのは肺の炎症を惹起させた結果かもしれない。この発見は再検討が必要である。

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