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大腸菌 O157:H7に感染した児童でのHUSのリスクファクター:多変量解析

2012-06-14 | 微生物:細菌・真菌
Risk Factors for the Hemolytic Uremic Syndrome in Children Infected With Escherichia coli O157:H7: A Multivariable Analysis
Craig S. Wong et al
Clinical Infectious Diseases 2012;55(1):33–41

・大腸菌O157:H7はHUSの代表的な原因菌であり、感染児童の15%がa thrombotic microangiopathyをきたす。 
・HUSはE. coli Shiga toxinによってひきおこされる。
・大腸菌O157:H7による疼痛を伴う血便はしばしば培養結果を待たずして抗菌薬処方を行う。しかしながら1980年代より抗菌薬処方によりHUSの発症について指摘されていた。 
・日本のアウトブレイクにおいてホスホマイシン治療群ではHUSの発症が少ないとされていたが全例抗菌薬を処方されており、抗菌薬の有無については評価がされていない。
・筆者らは以前にE.coli O157:H7に対して早期に抗菌薬を処方することによりHUSにリスクについて示したが、n=71と少ない状態であった。(NEJM 2000)。今回9.5年間の観察期間を経て259名の症例を蓄積し報告。
・1997年4月-2006年10月までに前向きに259名のE.coli O157:H7に感染した10歳以下の子供を登録(同意は本人又は保護者)。発症から7日以内に限定し、HUSを発症していない患者。
・Primary outcomes((hematocrit <30% with smear evidence of hemolysis, platelet count <150 × 103/μL, and serum creatinine concentration > upper limit of normal for age)とsecondary outcomesはHUSを14日までに発症とHUS発症から1日以上の間,oligoanuric HUSを発症
・登録から2日以内に質問表を保護者に渡し背景因子を聴取

結果
・259人から231の異なるstrinsを検出(16 sib or household pairs and 4 outbreaks)
・259人の内、36人(14%)がHUSを発症、11人がOligoanuric HUSを発症、死亡はなし。
・抗菌薬暴露で高いHUS発症率(36% vs 12% p=0.001)、同様にoligoanuric HUSも高い発症率。MNZ, ST合剤で他の抗菌薬よりも有意に高い。Antimotility agent useは相関なし。
・多変量解析:白血球高値群ではリスクが10%増加(aOR 1.10; 95% CI, 1.03–1.19; P =
.008).嘔吐群ではリスクが3倍(aOR 3.05; 95% CI, 1.23–7.56; P = .02).
抗菌薬: (aOR 3.53; 95% CI,1.29–9.66; P = .01)
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