横浜地球物理学研究所

YOKOHAMA GEOPHYSICS RESEARCH LABORATORY
地震予知・地震予測の検証など

串田嘉男氏のFM電波による地震予測について

2013年11月05日 | 地震予知研究(その他)
電磁波による地震予測を行っている、アマチュア観測家の串田嘉男氏という方がいます。雑誌や夕刊紙にときおり登場し、書籍も出版しているようです。

ですが、串田氏の研究内容は、率直に言って非科学的すぎて信頼できません。アマチュアの方ですので厳しい言い方はしたくありませんが、観測値の変動を盲目的に地震前兆と結びつけてしまっている感を受けます。以下、最近発刊された彼の著書である『地震予報』(PHP新書)の内容をもとに、その理由を説明します。


■ 前兆の種類が多すぎる

串田氏は、遠方からのFM電波を受信して、その信号強度を観測しています。その信号の特徴的な変動が、地震の前兆だと言います。ですが、ともかく前兆形態の種類が多すぎるのです。

前兆の種類の例(284~285頁)
・波形がうねる
・周期的な波形を示す
・周期的にパルス状になる
・背景振幅が増大する
・背景振幅がなくなる
・盛り上がるような変動を示す


しかも、それぞれの変動周期や継続時間も、数秒から数時間まで様々だと言うのです。さらに、これらが組み合わさって現れることもあるのだそうです(287頁)。これだけで、無数の種類の前兆があることになります。

そのうえ、各前兆に対して、異常の大きさの時間変動も様々あり、それぞれ異常極大から地震発生までの期間が違うとしています。

異常の程度の時間変動の例(304頁)
・極大が1回
・極大が2回
・極大が終息したのち、小さな極大が出る
・極大のあと、やや小さな極大が現れる
・極大の経過後、群発地震が始まる
・先行前兆があったのちに、極大が現れる
・数ヶ月から数年も続く長期継続前兆


これらの組み合わせの数だけ前兆形態があることになりますから、前兆はほぼ無限の態様をとることになります。たしかに地震の起こり方は1種類ではありませんが、殆どの地震はおおむね「断層のずれ」と説明できます。それに対して、無限の前兆形態が電波伝搬に現れるというのは、極めて不自然に思います。

また、串田氏は、M5以上の地震の前兆を捉えられるとしていますが、その規模の地震は日本では年間せいぜい100個ほどです。そんな頻度でしか前兆と地震発生を対応づけた実績がないはずなのに、無限の前兆形態に対して「~のような前兆なら、~のような地震が起こる」と言い切っている時点で、信用できないと言わざるを得ません。

そもそも、年間100個発生するM5以上の地震に対し、無数の種類の前兆があり、しかも前兆の継続時間も様々で数ヶ月に及ぶこともあるのだとするなら、ほとんど毎日さまざまな前兆が出て、それらが重なりあって複雑な信号挙動を示すはずです。だとすると、特定の前兆を抽出することなど、明らかに不可能です。

推察するに串田氏は、地震と関係なく年がら年中みられる、信号のうねりや変動といった様々な特徴を、地震の発生後に見つけて、あとづけで作為的に(無意識にだとは思いますが)選んでしまっているだけだと思われます。


■ 前兆から地震発生までの期間がまちまち

もっと大きな問題点は、前兆出現から地震発生までの期間が、地震によってまちまちであることです。しかも、串田氏自身が、それを全く特定できていないのです。

たとえば、東北地方太平洋沖地震(2011年)を予測できなかった言い訳として、「規模の大きな地震は、前兆極大から数日で発生するのではなく、2~3か月を要する可能性があると思い込んでいた」とも述べています。つまり、前兆が現れてから、地震が発生するまで、数日なのか数ヶ月なのか、特定できないというのです。

繰り返しますが、日本では年間100個ほどM5以上の地震が発生しています。前兆から発生までの期間が、数日でもよいし、数ヶ月まででもよいのなら、何らかの特徴的な信号変動を、ほとんどのM5以上の地震に結び付けられてしまいます。

こんな状態で、なぜ「地震予測ができる」などと断言できるのか、率直に言って全く理解できません。


■ 発生した大地震を全く予知できていない

串田氏は1993年の北海道南西沖地震をきっかけとして、前兆に気付いたとしています。であれば、それ以降の国内の大きな地震は予測できたはずです。ところが、全く予知できていないのです。それぞれ、以下のように苦しい言い訳をしています。

●兵庫県南部地震(1995年、M7.9)
当時はまさか、この変動が大地震の前兆だとは考えなかった。(中略)
「あの太い基線は、兵庫県南部地震の前兆だったのか!」
私は青ざめた。

(80頁)

●十勝沖地震(2003年、M8.0)
取材やデータ整理に追われ、まだ忙しい状態が続いていた。(中略)
南関東圏の一般公開のために忙殺され、その後まったく解析が行なえず、直前に正確な予報が出せなかった。

(122頁)

●新潟県中越地震(2004年、M6.8)
(前略)当時わかっていたら、すべての前兆変動がひとつの地震活動を示していることに気づいただろうが、当時はまだそこまでわかっていなかった。
(124頁)

●岩手・宮城内陸地震(2008年、M7.2)
なぜこれだけの大規模な地震が正確に予測できなかったのかと、完全に自信を失った。(中略)
大変な間違いと思い込みで、長期継続前兆が繋がらないで、全体の形が見えていなかったことに気づき、自分の馬鹿さ加減に呆れた。

(133頁)

●東北地方太平洋沖地震(2011年、M9.0)
(前略)観測事実が示す重大さに、私はまったく気づいていなかったのだ。
(中略)しばらく様子を見ようと、すぐに詳しく解析調査しなかった。

(32頁)

…こうした記述からも、串田氏は単に、地震が発生した後に、「この信号が前兆だったのか!」と思い込んでいるだけだと思われます。もちろん、事前に地震を予測することなどは、到底できないわけです。特に、M9.0という未曾有の震災の前兆を、「まったく気づいていなかった」と言うのですから、この予測法を信頼しろと言うほうが無理です。


■ 非科学的な考察が散見される

非科学的な考察により、自己の都合のよい解釈に理論を誘導している点も、多々あります。

たとえば、上述した前兆の種類の例に、背景振幅(つまりノイズ)がなくなる、というものがあります(串田氏は「基線が糸状態になる」と表現しています)。通常時に観測されるノイズは、ハードウェア的な問題などから定常的に存在するものですので、それがなくなるというのは、現象的に理解できません。電源異常、断線、故障といったハードウェア的な問題を疑うべきでしょう。少なくとも、地震の前兆でノイズがなくなるというのは、受け入れられません。

また289頁の説明では、基線が下にさがっている異常があるのですが、串田氏はなぜか、基線変動方向とは逆の周波数に異常があると言っています。串田氏の使っているセンターチューニングメータの原理的に言えば、基線の変動方向の周波数が強くなっているはずです。なのに、なぜか経験則的にはその逆だと言っているのです。科学的に理解できません。

ほかにも、たとえば311頁の図で、前兆が1ヶ月もの間ある決まった時刻(この図の例では午前8時30分)に現れ、実際の地震もその時刻に発生することがある、と言っています。つまり、地震が発生する「時刻」が1ヶ月も前から予め決まっていて、毎日その時刻に前兆が起こり出すというのです。これは噴飯ものです。震源が時計でも持っているというのでしょうか? ふつうなら、ある時刻から放送していた試験電波を拾っていたとか、ある時刻に設定していた電子機器のタイマーからのノイズを拾っていた等の、人工的な要因を疑うべきでしょう。

…このように、明らかにハードウェア的な異常や、人工的な要因によるものまで、なんでもかんでも地震の前兆にしてしまうという、極めて狂信的な傾向がみてとれます。


■ 予測実績が示されていない

最大の問題は、予測実績を開示していない点です。唯一、本書61頁に、東北地方太平洋沖地震が発生してから1ヶ月半ほどの余震を予測した結果が、予測成功例として示されています。ですが、こんな毎日のように発生していた余震を「予測できた」などと自慢されても、全く驚くに値しません。

そのうえ、この期間の予測についても、これらが「全予測実績」なのかどうか明示されていません。つまり、当たった予測だけを記しており、外れたものは隠蔽していると思われます。これでは公正な評価ができません。

串田氏は、M5以上の規模であればほとんど前兆が観測できると言っています。ならば、今すぐにでも予測を発表し、その正確さを示すことができるはずです。それをやって初めて、我々も予測の精度を信頼することができ、串田氏が予測情報を発表した場合にも信じて対応できるのではないでしょうか。なのに、当たった予測だけを公表し、リアルタイムの予測は開示せず、予測実績を隠蔽し続けているという事実だけをみても、彼の予測法は全く信頼できません。


以上の議論に対しては、串田氏や関係者からは反論もあるでしょう。ですが、そのような反論をするのであれば、その前にまず予測を公開することです。論より証拠です。

ジャンル:
科学
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13 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-11-07 09:28:06
 何やら今月半ばに近畿地方で大地震が発生するらしいので、期待せずに待ってみましょう。
本串田批判に全面的に賛意を表します (p)
2013-11-14 02:45:15
宇宙から飛来する磁気嵐みたいなものの影響の方が強いんじゃないでしょうかね?
これらについては信州大学で宇宙天気図(宇宙天気予報図)とか作ったりしてますよね。
Unknown (安)
2013-12-01 08:30:33
串田予報
とある人のブログにて書いてあった。・・・・異常伝播波を体験されていなかったのが誤探知の原因
?
確かに海溝型は電波にでないが? (theJapaneaseBoy)
2014-05-31 22:26:13
非科学的?
圧電効果と
コンデンサを
学んでいない記事だ。

確かに、串田さんは、海溝型の、東日本大震災を、見逃した。ノイズと判断したのだろう。

海の下で、何が起きても、電離層には影響が無いからだ。

しかし、秀吉の時代の、天正の大地震のような、
内陸の直下型は、大地が圧電効果により帯電し、放電する。地電流が流れる。

同心球コンデンサである、大地と電離層で、大地で放電すれば、当然として電離層は乱れる。

天正の大地震が、再来するならば、いったい幾つの大地震が重なり、幾つの断層が割れるのだろうか?


串田さんは、もんじゅや大飯を直撃する、福井地震や阪神大震災のような、内陸の直下型は、必ず予想できる。

東日本大震災のような、海溝型のノイズを、
しっかり分析して下さい。
Unknown (Unknown)
2014-06-08 17:52:31
仮説理論そのものを否定しているのではなく、検証・考察しようとする過程を非科学的といってるんでしょうに。。。

地震予知だけではなく、計測、センシングにおいては、検出率と同等に、誤り率が大事なのですよ。

検出率90%、誤り率80%なら、
検出率10%、誤り率1%の方が有意であり、
後者を利用することで前者を大きく改善することも可能。

後者理論・手法が出てきたとき、
電磁波予想が正しく検証されていれば活きてくる可能性があるのです。

どうなるのか知りたいですね。 (Unknown)
2014-10-26 21:58:12
今日知ったこと。
11月8日±2日

何も言わない地震学者よりも、可能性を言ってくれる人のほうがまだましかもしれません。
オオカミ少年として誰も相手にしないか、それすらできないお金もらってる学者がいいのか。

もうすぐなので、待ってみたい。
地震大国 (Unknown)
2014-10-27 17:17:56
数打ちゃそのうち当たるでしょう。

それを自慢げに語られてもなぁ・・・

今年地震が来ますって、毎年言っていれば
素人さんでも予言ができますって。

地震は毎日起きている (白クマさん)
2014-11-17 20:15:57
まずは防災研のホームページの「地震の基礎知識」を読もう。地震は周期的に必ず起きる。地震があっても、津波が来ても大丈夫な場所にしっかりした家を建てて住むことで心配は無くなる。
Unknown (長野県ー)
2014-11-22 23:11:47
で今日起きたのはどうだったんですかね
そもそもFAX送られてる人本当に居るの?
Unknown (名無し)
2015-04-12 22:24:09
それで自分の論証がただしいという根拠はどこに明記されてるんでしょうか?

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