日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

国立大学法人化という大学潰し

2024年04月15日 08時10分44秒 | 政治
 「2004年に国立大学が法人化され、4月で20年。法人化とその後の大学政策の影響について、朝日新聞が全86国立大の学長に尋ねたところ、回答者の7割弱が、教育・研究機関として『悪い方向に進んだ』と考えていることがわかった。国や産業界がイノベーション創出を期待する国立大だが、国から配られる運営費交付金が減額された影響を指摘する声が多かった。大学同士の競争を促すことで、教育や研究を活性化させる――。国の一機関だった国立大は、そうした目的で法人化された。関係する12万人近い公務員を削減する狙いもあった」(2024/04/08「学長7割『悪い方向に進んだ』」朝日新聞)
この見出しを逆に読めば「国立大学法人化」は「悪い方向ではなかった」と思っている学長が3割いるとも読める。新聞受けから朝刊を取り出して真っ先に感じた思いは、「そういう3割の回答者にお目にかかりたいものだ」ということだった。
何を隠そう、筆者の現役最後の仕事は国立大学同士の統合・合併という戦後には例の無い業務が入っていたために大学法人化に向けての作業日程を全く持たないままに時間を空費し、そのケリが付いた時には直前1年と6カ月に迫っていた。法人組織編制や財政基盤の確認から経営方針の策定等々、当面向こう10年の計画を書き上げて、主務官庁の文部科学省の審査を受けるという膨大な作業をこなすことだった。その悪夢は、20年余を経た今でも、時折文字通りの「悪夢」となって寝汗をしばしばかく原因になっている。
今だから告白するが、日本において自らの創造した学術成果を売りにして自らの口を糊するなどということのできる大学は1校たりとも存在しないということだ。国公私立合わせて780ほどもある日本の大学で大学自体の教育(学費収入)と研究(特許獲得やその販売・学術指導料等々)という本業の稼ぎによって成り立っている大学などは皆無と言ってよい。アメリカの名門大学をモデルにして資本主義世俗社会にしっかりと基盤を持っている例を参照して構想された日本政府が夢見た制度、それこそが国立大学法人化政策であった
アメリカの大学を囲む学術環境には研究開発に巨額の出資をする民間企業や個人Donation文化があるが、日本の物まね企業文化というにあっては古来いたって心もとない。特に近年長期の円安構造は、技術革新にまい進せずとも輸出競争力が付与され、消費税還付の恩典もあれば安穏に輸出市場で食っていける。研究開発は後まわしとなってアカデミズムの寄与も期待しないままに内部留保をため込んでいる。結果、日本の国立大学は国家予算を減らされた分を企業に売った技術で賄うというわけにはいかないことになる。それが、この20年間、年1%ずつの予算減額は往時の8割に貧困化し、ついに気息奄々となったのである。
かくなる上は、待って死あるのみだ。「43兆円」(しかもこれでは円安でとても賄えない)と言われる軍拡予算に国費を回すのを今すぐ止めて、岸田内閣は大学を救うべきだ。アカデミズムすら守れないような国家を守る価値があるとは断じて思えない。
 


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1 コメント

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Unknown (integrale)
2024-04-15 09:31:58
「軍拡よりアカデミズムに国費を使うべき」には大賛成です! それこそが平和憲法をもつ日本という国のあるべき姿ではないでしょうか。

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