「ロシア外務省のザハロワ情報局長は23日の記者会見で、岸田文雄首相の21日のウクライナ訪問について、先進7カ国(G7)議長国・日本が『米国の論理と圧力』の下で計画を遂行したと論評した。そのタイミングは、21日のモスクワでの中ロ首脳会談にぶつけて影響を及ぼすためにあえて選んだ可能性があると主張した。一方で国営タス通信は、岸田氏がウクライナ訪問時、ゼレンスキー大統領に<必勝>と書かれた広島名物のしゃもじを贈ったことを紹介した。日本の報道などを引用して『日露戦争時の兵士のお守り』と強調。現地メディアはロシアへの挑発と捉えたもようで『奇妙なプレゼント』と不快感をもって伝えた」(「岸田首相のウクライナ訪問に論評 広島名物『必勝しゃもじ』は挑発―ロシア」2023/03/24 モスクワAFP時事)
記事前半の岸田氏のウクライナ訪問が、習近平中国国家主席氏のモスクワ訪問・中ロ首脳会談と見事なほどに一致したのが意図的であったというような事実は必ずしも当たってはいまい。とにかくG7議長の役割から唯一ウクライナ訪問無しというわけにはいかないとして、右顧左眄している中で忽然として実行したキーウ訪問のこと。針の穴を通って実行した行動であった。どうひいき目に見ても、深い意味が有ったとは思えない。
それよりも、核戦争さえ不安視されているウクライナ戦争、百害あって一利も無いウクライナ戦争が一刻も早く休戦になることが望ましいこの無益な戦争について、大国七か国の指導者を集めて会議を取り仕切る岸田氏の歴史的な役割は、彼が唯一の被爆国の、かつその被爆都市広島の市民であるという因縁を考えれば、今無益な戦争の一刻も早い停戦と和平をこそ創造する役割であるべきを、そこに戦勝祈願のしゃもじを持参する愚こそがここでは語られなければならない主題である。
甲子園での高校野球といえば、そこに広島県のチームが出場したら、まず間違いなく応援席に「必勝」と大書された巨大な「しゃもじ」を屹立させ、応援団は別に用意の二つのしゃもじを持たせて、これをかたかた鳴らして景気をつける。この「必勝しゃもじ」の謂われは、相手を「飯(召し)取る」の語呂合わせから厳島神社必勝祈願の「縁起物」だという。このしゃもじが日本全国に広く知れ渡ったのは、あの苛烈な日露戦争二百三高地の争奪戦。獅子奮迅の戦に臨んでロシアの兵を<召し捕りたい>という文字通り藁にも頼る最後の「手だて」であった。
いま、一国を代表する岸田氏がやるべきことは一刻も早い休戦のすすめ以外にない。しゃもじで景気をつけては問題は難しくなるばかりだろう。世のニヒリストたちは岸田氏の行動を下のように575に詠んで嗤う。
〇「めしとれと 戦地へしゃもじの 御目出たさ」(東京都 堀江昌代)
〇「贈り物 必勝しゃもじの 能天気」(長崎県 張本雅文)
〇「総理秘書 キーウ土産は 何配り」(北海道 土屋正人)
以上朝日川柳
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます