8月11日 一回戦
常葉学園橘 2-0 旭川大
レポート 小関順二
投手としてはMAX145キロのストレートとキレ味鋭いスライダーを織り交ぜて旭川大高を散発6安打完封に抑え、打者としては先制点を叩き出す右前打で存在感を発揮した庄司隼人(常葉橘)。
常葉橘中学時代は軟式野球の全国大会に出場して、144キロというとんでもない数字をマークしている。
もちろん大騒ぎされて入学し、その名前は高校野球マニアの間で鳴り響き、専門誌やネットの世界では現在に至るまで超有名人と言っても過言ではない。
この庄司を1~3年まで見て、投手としては線が細い、と思った。
上背がない(175センチ、70キロ)ことは高校生投手の場合、ハンディキャップになる。大学生や社会人なら技術的習熟度が重要視されるのに対し、高校生には「将来性」とか「大物感」のような、実体のない言葉が評価基準の物差しになってしまう。
そういう曖昧な物差しを使って庄司を「線が細い」と批判するのはフェアじゃない気もするが、実は上背以外にも庄司のピッチングに目がいかない理由がある。
それはバッティングのよさのほうに気が行ってしまうからだ。
第1打席の先制打となったライト前ヒットは、1-2からのカーブを十分に呼び込んでから引っ張ってライト前に持っていた一打で、まず打球の強さに目をみはった。
さらに打ちに行く直前の急なバットの引きや、強引なインステップという安定して打てない悪癖がありながら、バット操作が柔軟で、左右広角に打ち分けることができる。
こういう部分は「素質のよさ」としか表現できない。
さらにいいのは、バント処理で見せるフィールディングだ。
2回の無死一、三塁の場面では門前伸之介のスクイズを好ダッシュで好捕するとグラブトスで捕手に送球、三塁走者をアウトにしている。 さらに5回の霜津陽のバントは一塁手が処理しなければならない打球だが、庄司が楽々とボールに飛びつくと一塁に送球しアウトを取っている。
1回表には精神面の強さも見せている。
先頭打者・藤森和磨に初球を投げ終えると、主審から何やら注意を受けている。2段モーションの指摘だと思うが、初っ端から気勢をそがれること著しい。この藤森が遊撃ゴロを打つと遊撃手の稲角航平(2年)がエラー。ますます嫌な展開である。
しかし、諸橋幸平の投手前バントを軽快にダッシュして好捕すると、迷うことなく二塁に送球してアウトを取り、さらに塁に残った諸橋に対しては1・10秒台前半のクイックと素早いけん制球大きな離塁を許さない。
ヤケクソ気味に敢行した二盗はもちろん成功せず、1回を3人で切り抜けることができたのには驚いた。
みごとな野手的才能であると同時に、精神面の強さを感じさせる一連のプレーである。
ピッチングにも触れると、味方が2点目を取ったあとの8回、ほとんどのストレートは142~145キロを記録し、旭川大高の追いすがろうとする気持ちを断ち切った。ペース配分の巧みさより、気持ちでナインを引っ張るエースの顔が垣間見えた。
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