7月15日 大阪府大会 1回戦
大阪桐蔭 10-0 大阪園芸 (5回コールド)
レポート 氏原英明
これも、高校野球だ。
きょうは、昨夏全国優勝の大阪桐蔭の初戦を見に行ってきた。
決勝戦を史上最多の17得点、ならびに最大得点差で制した大阪桐蔭。昨年秋と春は結果を残せていないが、その存在感は、大阪でPL学園と双璧である。
何をやっても強く見えてしまう、「TOIN」のユニフォームにはそんな威圧感さえある。
今日の試合は、大阪園芸を相手に投打に力強さを発揮し、10-0の5回コールド勝ち。
攻撃面では1回裏、相手投手の制球難に乗じて3点を先行。2回裏には、スラッガーで3番を打つ松下が満塁一掃の適時三塁打など、5点を追加した。4回裏に2点を追加し、試合を決めた。
投げても、公式戦初先発の室井が3イニングを3四死球のみに抑え、2番手に上がった福井は6者連続三振で園芸打線を完ぺきに封じた。
10得点に無安打無得点。
完勝で大阪桐蔭が好スタートを切った。
全国的にはまだ知られていない選手ばかりだが、3番を打つ松下はこのチームの顔である。
故障がちで昨夏のメンバーには入っていないが、思い切りのいい打撃は驚異である。満塁など好機でめっぽう強く、甘いボールが来ると逃さない。集中力の高さは凡人離れしている。
先発した室井は公式戦初登板。それどころか、これまでも一度だってベンチ入りしてなかった選手だ。
「最後だけ背番号をもらった選手は初めてじゃないか」
とは西谷浩一監督である。
それだけ、急激に伸びた存在ということだ。右のオーバーからストレートとスライダーの投げ分けが上手い、本格派右腕である。
しかしながら、今日の試合の興味はそこだけではなかった。
対戦相手となった大阪園芸高校の姿勢には拍手を送りたくなったので、王者の好発進とともに、紹介しておきたい。
大阪園芸は、16人の部員のうち、12人が1年生だ。残りが3年生。春季大会は人数不足で出場辞退している。1年生を迎え入れ、突貫工事でチーム力を強化してきた。そんな苦しい台所事情の中、王者・大阪桐蔭との戦いに挑んできたのだ。
技術の差は明らかである。練習量も明らかである。
しかし、たかだが、ひとつのアウトを取っただけで大喜びする様は、見てい、清々しかったものだ。
会場となった舞洲ベースボールスタジアムは風が強いことで有名だが、それでも、ボールにしがみつき、おとさなかった。10失点のうち、エラーが絡んだのは1点もなかった。彼らはノーエラーだったのだ。 技術的には劣っていたけれども、ひたむきな姿勢には心打たれた。
試合後、北之坊監督が選手を讃えて、こういった。
「きょうのお前らは100点満点。
理由は3つ。
まず、空振り三振。よく振りに行った。お前らが思い切ってやった証拠だ。
バッテリー、パスボールがなかった。
3つ目。いつも二けた得点取られるとき、エラーするよな。きょうはそれがなかった。100点満点だ」
野球というものを考えれば、大阪桐蔭のように強いチームが褒められるべきであろう。しかし、レベルが低くても、これも野球なのである。 ひたむきに白球を追いかけて、自分の成長を確認する。それが高校野球の求めることの一つなのである。
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