月刊パントマイムファン編集部電子支局

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アーティストリレー日記(123)しいなまんさん

2021-06-17 20:28:35 | アーティストリレー日記

今号では、東京マイム研究所にて故・並木孝雄氏にパントマイムを師事し、現在、サラリーマンパントマイマーとして活躍するしいなまんさんの日記をお届けします。リレー日記2度目の登場となります。

おんパンPlusに出演予定の、しいなまん です。
今回はオンライン配信と劇場での観劇の併用公演です。

そこでちょっと葛藤していることがあります。
映像重視でカメラを意識して作るか、足を運んでくれる観客を意識するのか。
両者は空間の使い方とか、動く範囲とか、まるで違うように思うのです。

もちろん 生の舞台がいいに決まっている、と誰もが言うのですが、こうもこの状況が長引くと、配信ならではの作り方や見せ方をするアーティストが増え、配信を担うスタッフもメキメキ腕を上げるという状況になってきています。

僕も、配信の時代に乗り遅れないようにしないといけないのだろうか。

音楽の世界でも、全ての楽器がコンピューターによる打ち込みでボーカルも人ではなく機械の合成だったりするものが、若い人の間で支持されているようです。とても人が弾けたり歌えたりする曲ではないし、どこが良いのかさっぱり分からない。それもそのはず、彼らは人が演奏できるものを作っても「意味がない」と感じ、演奏のことを全く考えずに「自由に」作っているらしいのです。
「この曲を バッハが聴いたら びっくりするだろうな」
なるほどね、でも僕は好きじゃないなあ。
けど、家から出ずに作れるし、時代に合っているということか。

そんなことを考えていると、とあるパントマイムの先生からこんなことを言われました。

しいなまんさんは、マルソーを生で観た最後の世代かも知れないねえ。

生で観た事は僕にとってすごく大きい。もしかしたらそこで世代が分かれてしまう程の事だったのかもしれない。
「今回が最後か?」と言われたマルセル・マルソーの来日公演。バブルの終わった頃でした。
もしもその公演が、今のように 配信やアーカイブでしか観ることができなかったとしたら、そこまでの強い体験として残っていなかったのではないか。そんな事を思います。

アーリーアメリカン調の内装でクラシックなロックがかかるお気に入りのバー。そこのトイレのドアには「レッドツェッペリン 東京公演 武道館 S席 ¥2,700 」と書かれた チケットがひっそりと誇らしげに貼ってあるのです。
年頃からしてマスターのものに違いない。あのレッドツェッペリンを生で聴けたなんて、想像するだけでも鳥肌です。
でももしマスターにその体験がなかったら、このお店はあったのだろうか、なんて思ってしまいます。

そんなこんなで、不自由な状況になってみて、改めてそれまで当たり前だった 生の舞台の魅力やその影響力についてより深く考えるようになりました。

芸術の分野はもともと好き嫌いがはっきりとあって、例えば音楽でもジャンルによって最初から受け付けないという事もある。パントマイムが好きな人は限られている。広く多くの人に届けようとするのも良いけれど、自分の好きな事を追求するのがいいと思うよ。
これも先出の先生の言葉です。

“生の舞台と配信のそれは別のジャンルである”と捉えると、自分の中で落ち着きます。好きな事をすれば良いし、新しい事に興味が湧いたらトライすれば良い。
配信にも配慮しつつ、足を運んでくれる観客のために全力を傾ける。
どの方法で観るかは観客が決めればいい。それでいいのだ。
今はそんな事を思っています。

おんパンPlus、ご予約をお待ちしています!
バラエティに富んだ出演者で、配信ならではの作品も飛び出すかも知れません。

6月27日(日曜日) 13時、17時です。

そういえば、矢沢永吉さんが こんな事を言っていたそうです。
「コンサートは、音楽を聴くだけのことじゃない。何か気持ちを持って歌っている男に、会いに行くものなんだ」

しいなまん


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