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アーティストリレー日記(133)長井直樹さん

2022-06-26 09:53:22 | アーティストリレー日記

現在、インドネシアから一時帰国中の長井直樹さんの日記をお届けします。なお、長井さんは、7月23~24日の「ドキわくマイム♪」に出演します。

今日は、コロナ禍でビザの更新ができず、強制帰国となる前に滞在していた、インドネシアのパントマイム事情についてお話ししようと思います。特に、子供たちにスポット当てて。

インドネシアでは、インドネシア教育文化省主催による、Festival dan Lomba Seni Siswa Nasional (通称FLS2N) というものがあります。日本で言う、文科省みたいなところ、ね。
これは、小学校、中学校、高校、職業訓練高校の児童・生徒が参加する2008年から始まったアート・コンペティションというものです。
早い話が、芸術関連の”甲子園”みたいなもの。
日本でもダンス甲子園みたいなものがありますが、アレ。
でもインドネシアでは国が主催で、スケールが違う。
小・中・高と、競い合うカテゴリーが色々と異なり、その中でも、興味深いのは、小学校部門にある5つのカテゴリーの中に位置する、パントマイムのカテゴリー。
パントマイム部門、当初はなかったんだけど、私の友人のSeptian D. Cahyoが尽力した結果、加えられたようで、2013年から組み込まれたとのこと。
(私個人としては、中学校以上でも挑んでほしいところだけど…)

他のカテゴリーに比べると、確かにまだまだマイノリティであることは否めないインドネシアのパントマイムだけど(ん?どの世界でもパントマイムはマイナーか?)、エントリーされているだけでも、羨ましい限り。
日本でもこのような境遇があれば良いのに…

以下、参考までに小学校部門のカテゴリー5種。

1. Lomba Menyanyi Tunggal (ソロ歌唱)
2. Lomba Seni Tari  (舞踊:主に群舞のようです)
3. Lomba Pantomim (パントマイム:基本ソロ・マイム、デュエットがあることも)
4. Lomba Kriya Anyam (編み物工作:端切れ布や段ボールの切れ端など、廃品を用いて紐状にして、籠を編んだり…、といったもの) 
5. Lomba Gambar Bercerita (ストーリー性のある絵画:紙芝居ではなく、一枚の絵で)

中学校では、楽器演奏や詩の朗読、一人芝居などもあったり…、ですが、なぜかパントマイムは小学生向けのみ。

小学生部門で、しかも3・4年生のみ。(なぜ5、6年生はダメなんだろう?不思議)
独りでパントマイムの小作品を作るの?大人でも大変なのに?って、経験者の方はよくわかるでしょ、生み出す苦しみが…(それには秘密があるのですが、後程)
地区大会から群・州大会みたいに、どんどん勝ち進んでいき、最終的に甲子園のように全国大会へと進む。
上位入賞者には高額な賞金と、何よりインドネシアでは重要視される、賞状と名誉。
これが後々の人生に大きな影響を与えるの。
入試ももちろん、給料にも影響するだろうし、大切な要素なのだ。
話がそれちゃった。苦笑

私も何度か地区大会の審査員を引き受けたことがあるけど、ある程度勝ち進んだ挑戦者は、なかなかのテクニックを持っていたり、オリジナルの興味深いストーリーであったり。。。
芸術に甲乙をつけるのは、どうかなという疑問を抱きつつも、点数をつけなければいけないのは辛かったなぁ。
確か、衣装やテクニック、独創性、ストーリー展開、表現力、BGM・音楽などといった項目で点数をつけないといけない。
そもそも全国大会規模競技で優勝を目指すわけですからね、そこは勝敗をつけなければいけないから無理やりに。審査員の方が大変かもと思ったね。
で、かつて、一観客として地区大会を見た時、点数ではなく作品として一番面白い、
共感できるなどといった視点で、自分なりの視点で好評価だったパフォーマンスが、
審査員の判断では、もっとも低い評価だった。なぜ真逆?感性の違い?悩んじゃったよ~


さてさて、当の小学生、独りでパントマイムの小作品を作るのは至難の業でしょうし、もちろん、テクニックもハードルが高いはずって話、その秘密とは?
YouTubeを介してか、または実際に生で見ることができる機会も少ないだろうし、あるとしたらテレビや街頭でのテクニックを見せるだけのエンターテイメント性の高いパフォーマンスくらいかなぁ。
日本と同じく、パントマイム自体がまだまだマイノリティで、だからこそ余計、指導者も希少な存在なのは事実。
指導している小学校の先生から、そもそもパントマイムってなに?あれは?これは?って質問攻めされた経験あるけど、指導者本人もパントマイムを見たことも演じたこともない、そもそもよくわからないという事実。
想像力を高めるためという使命だったはすが、結果的には連続した効果音の羅列に合わせて無言劇をする、という想像力のかけらもない、「パントマイムもどきのお遊戯」になってしまっている末端の大会、第1回戦目。音に合わせて動く心のこもっていないアテぶりといったところか。

そんな問題を回避するため、いろんな学校それぞれでパントマイムの経験者を探し求め
られ、私の友人たちのパントマイム仲間にたどり着く、となっているのが現状。
インドネシア各地にいる、私のパントマイムの知人たち、彼らの教え子たちが勝ち進み、競い合うのが毎年の恒例となっている。
だって、小学校の先生がそう簡単に指導できるわけないじゃない?
私の友人のパントマイム経験者も、パントマイムを通しての収入源として、このプロジェクトは見過ごせない美味しいチャンスなわけ。。。笑
だから、この大会は、友人たち、指導者同士の戦いでもあるわけ。
それが、来年の声がかかる、つまりは収入に直接つながるとなっちゃ、力も入るわけなの~。
指導者は、影でストーリーを考えたり、入れ知恵したり、BGM作ったり…。
純粋に、いきなり小学生3年生が独りでできるってことはなかなかないだろうからね。
実情はそんな…なのに、よく全国大会レベルでパントマイムのカテゴリーが存続してるなぁって。
それもこれも策士としてのSeptianのなせる技なのか…。


では次に、大人も含めた、インドネシアのパントマイム全体についてと思ったんですが、ちょっと長すぎました?
首都ジャカルタの芸術大学でのパントマイムの話題や大人のパントマイムの実情については、またいつか機会があったらお話ししますね。

国レベルでパントマイムを通して、想像する力を育成しようとする姿勢は、日本よりも進んでいるけど、教育現場では、パントマイムの理解さえままならない…う~ん、このギャップ!
そこを埋めてあげるお手伝いをしたいと思うこの私なんですぅ~っ!

日本でも、子供たちが感性を磨くための一つの方法として、文部科学省牽引でパントマイムが学べるようになったら、いいのにね。
その辺りは、諸先輩方にお任せして、私はインドネシアに戻って、未来のある可能性のあるインドネシア国民に、もっともっとパントマイムの基礎を、その面白さや可能性を伝えていきたいと考えているところ。

COVID-19が1日も早く落ち着き、全世界に再び、いや新しく、戦争もない平和で自由な日常が戻ることを祈って、今日の話はここまで。


長井直樹(ながいなおき)

 


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