なんとなくそんな気持ちの日々に

本ブログは、もう更新の予定はありません。しかし閉鎖はせずに、記事を残しておきます。

危機管理について――口蹄疫の報道を見て思い出したこと

2010-05-22 22:44:20 | 国内関係
 ここ1週間で口蹄疫の報道が急に増えた気がします。報道管制が敷かれていたとの噂もあります。

 連休前から自民党議員が口蹄疫対策でかなり動いたのですが、あまりメディアには取り上げられていなかったような気がします。そして連休中に赤松農水大臣と舟山農林水産政務官が外遊していたこと、山田農水副大臣が現地視察をまったくしていないこと(5月23日追記:ワクチン接種の現地視察をしています(ソース))は、どういうわけかメディア対策がうまくいっているようで、あまりメディアで叩かれていません。まぁ、赤松氏は外遊中にゴルフをしていたというガセネタが話題になりましたが。他方、東国原知事を執拗に攻め立てる新聞記者がいたことも問題になりました。

 こうした状況をネットを通じて知り、ふと思い出したことがあります。私が、昔、某大学の国際交流を担当する部署にいたときのお話です。

 その部署では学生の送り出しもやっていました。短期留学のプログラムを運営していたのです。どれも安全な国へのプログラムだったのですが、海外で万が一、大きなトラブル(不意の事故による学生の死亡事件など)があった時に備えて、某危機管理会社と契約していました。

 在任中、その会社から提供されたマニュアルを読んで、内容を報告するよう命じられたことがあります(今考えると、おかしなはなしですが)。そのマニュアルを熟読したのですが、マスコミ対応について多く割かれていたことを記憶しています。

 つまり、記者会見でこれを言ってはいけないとか、状況が不確かなときはこういうようにとか……です。そのマニュアルには明記されていませんでしたが、今から思えば、マスメディアの報道による二次災害を極力防ぐための対応の指南だったのでしょう。

 なにか事件が起こったとき、その事件を知らせる報道の役割は重要だと思います。しかし、現実には、マスメディアはその事件にかかわる組織を隙があれば、攻撃することしか考えていない……だからこそ、危機管理マニュアルにマスコミ対応が載っているのでしょう。本来は、事件が起こった時に被害者やその家族のケアをどうするかが一番大切なのですが、メディア対応を誤るとそのケアすらできません。

 「メディアは極めて恐ろしい野獣だ」が、危機管理マニュアルを読んだ正直な読後感でした。考えてみれば、事件が起きたときの記者会見場で、たとえば雪印のように、メディア対応を誤って倒産した会社だってあります。

 今、宮崎県に注がれているメディアの視線は、まさに野獣のそれでしょう。あまつさえ、フジテレビのように消毒せずに取材するという暴挙にでるところもあります(ソース)。消毒場所について「知らない」と答えたようですが、これは事前取材をまったくしていないということであり、プロとして失格です。

 マスメディアは、こんな大失敗をしながらも、あまり非を認めません。しかしながら、今はインターネットがあります。記者会見の模様をすべてインターネットで公開する地方自治体もあります。市民の側が、マスメディアを監視するツールが少しずつではありますが、整いつつあるといっていいでしょう。良識のある市民がメディアの報道を検証し、メディアに非があればそれに抗議する。それをうけてメディアもよりよい取材のあり方を考えるという正の循環ができればと願っています。

 もっとも、今回の口蹄疫事件では、事件について報道しないなぁと思ったら、いきなり責任者を探し出すなんていう報道姿勢であり、現状は「羽織ゴロ」のように思えます。

 マスメディアを徹底的に批判して、まともな報道ができるように教育するのは、市民の役割なのかもしれません。