夕美は、その日、思いきって祖父に聞いてみた。
「ね、おじいちゃん…。『いさみや』の前の旅館は、『かねみつ』って言ってたよね。その前は民家だった…って。」
「うん」
縁側で夕涼みをしていた祖父は少し眠たそうだ。
「あの旅館の元々が民家って…、かなり広いよね。お金持ちだったの?」
夕美は、どこから聞いたらいいのか分からず、とりあえず民家の住人について聞いてみようと思った。
「確か…夫婦と娘さんの3人家族って、言ってたよね。」
「あぁ…。」
「たった3人で暮らすには広すぎるよね。」
「…確かにな…。元々は地主さんの一家だったから、金持ちだったらしいけどな…」
「『かねみつ』はその人達がやったの?」
「いいや、家を売ったらしい…」
「…そうなんだ…その家族は、この町には住んでないの?」
「…いろいろあって、遠い所に引っ越した…って聞いたなぁ…」
「いろいろって…?」
祖父は遠い目をした。
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