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東京グリンツィング シェフブログ

フレンチレストランのシェフが紹介する季節の料理と食材

ゴールデンパイナップルのカラメリゼ ココナッツアイスクリーム添え

2007年08月05日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

ゴールデンパイナップルのカラメリゼ ココナッツアイスクリーム添えです。

夏の時期になりますと、パイナップルとココナッツ、ラム酒の組み合わせのデザートを作っています。

組み合わせのアイデアは、カクテルのピニャ・コラーダから来ていますが、毎年いろいろと形を変えて楽しんでいます。

去年のブログでもご紹介しましたが、前回のゼリー寄せにしたパイナップルのラビオリ仕立てから変わって今年は、ヴァニラとカラメル味の温かいパイナップルに、冷たいココナッツのアイスクリームを合わせてみました。

パイナップルは、通常の物よりも甘味の濃いゴールデンパイナップルを使っていますので、とてもリッチな味わいになっています。

作り方ですが、最初にカラメルソースを作ります。

鍋でグラニュー糖を焦がした所に、パイナップルジュースを加えて少し煮詰めておきます。

そしてオーダーが入りましたら、フライパンにバターを熱してから、カットしたゴールデンパイナップルを入れてソテーします。

軽く両面を色付けたら、ヴァニラビーンズとピスタチオナッツ、レーズンを加えて更にソテーしていきます。

途中フライパンを動かす度に、ヴァニラビーンズがバターに溶け出して、とても良い香りがキッチンにひろがります。

そこに作っておいたカラメルソースを加えて、パイナップルに絡ませながら煮詰めていき、最後にラム酒を入れて仕上げます。

常温のお皿に、熱々のパイナップルのカラメリゼとバニラビーンズ、ピスタチオ、レーズンを盛り付けて煮汁をまわしかけたら、ココナッツのアイスクリームを添えて完成です。

とてもシンプルですが、冷温の温度差と作りたての香りの高さは、レストランのデザートならではの美味しさです。

この一皿は、焼き菓子やムース等のデザートやガトー(お菓子)と違い、フレッシュな食材そのものを調理している感じがします。

野菜やお肉の代わりに果物を、塩胡椒の代わりに砂糖とスパイスやハーブで味付けをして、そして加熱する事によって香りと味を引き出しているのです。

料理人の作るデザートと言う意味では、パティシエではない自分らしく、そして街場の小さなレストランらしいのではないでしょうか。

 

 

 

 


焼き立てのブリュッセル風ワッフル ヴァローナチョコレートのアイスクリーム添え

2007年07月22日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

焼き立てのブリュッセル風ワッフル ヴァローナチョコレートのアイスクリーム添えです。

ワッフルはベルギーが有名ですが、おおまかに二つの種類に分かれるそうです。

一つは食べ応えが有りもっちりとしていてパン生地に近いリエージュ風と、もう一つは味わいも軽くてサクサクした食感のブリュッセル風があります。

今回グリンツィングでは、焼き立てでこそ美味しいブリュッセル風をお出ししています。

単品として十分に美味しく完結したお菓子のリエージュ風のワッフルに比べて、ブリュッセル風はアイスクリームや生クリーム、ジャム、ソース等と組み合わせて食べる事が多く、レストランのデザートにはピッタリです。

焼き立てが一番美味しく、時間と共にサクサクの食感が失われてしまいますので、瞬間を味わっていだきたい一皿です。

その上には、フランス ヴァローナ社のビターなチョコレートで作った濃厚なアイスクリームを添えていますので、香り高い食後酒とも楽しんでいただけると思います。

ベルギーのイメージが強いワッフルですが、フランス修行中にも食べる機会が有り、自分の中でとても印象に残っています。

それはレストランのデザートでは無くて、ある街の屋台で食べた記憶です。

その時の職場の休憩時間に、いつもはクレープを食べていたのですが、そこには別に幾つかの屋台がでていて、たまには違う物を食べようと見つけたのがゴーフル(フランス語でのワッフル)でした。

注文をするとその場で焼いてくれて、最後に粉糖を振って手渡ししてくれるのですが、初めて食べた時はそのサクサクした軽さと美味しさに、本当にびっくりしました。

それ以来、クレープに変わってゴーフルばかり食べていた思い出があります。

ワッフル(ゴーフル)は、何処にでも有る食材で作るシンプルなデザートです。

勿論、レストランですので一つ一つの卵や牛乳等は良質な物を使っていますが、その他に必要な材料も小麦粉、砂糖、塩、イースト、バター位な物です。

正直、ワッフルだけの材料費はとても低いのですが、それと美味しさとは別の問題だと思っています。

確かに高級な食材は、良質で美味しい場合も多く、その良さを表現する事は料理人の仕事には間違いありませんが、平凡でありきたりな食材を感動する美味しさにする事も、とても大切な仕事だと思います。

実際、ワッフルを焼く時には、他の作業をストップしてその事だけに集中します。

それはまさに、物を作っている瞬間です。

一度に沢山は作れませんし、毎回微妙に違いが出て来ますので、合理的ではないかもしれません。

しかし自分の作りたい物は、このワッフルの様に一つ一つに人の気持ちの入った料理なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 


アメリカンチェリーの温かいスープ 赤ワイン風味 ヴァニラアイスクリーム添え

2007年07月09日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

アメリカンチェリーの温かいスープ 赤ワイン風味 ヴァニラアイスクリーム添えです。

今が旬のアメリカンチェリーを、スパイス風味の赤ワインと共に軽く煮込み、その上に冷たいヴァニラアイスクリームを乗せてみました。

同じサクランボでも、国産の佐藤錦等は繊細でとても美味しいのですが、フランス料理として加工することを考えると、味わいも色もしっかりしたアメリカンチェリーの方が合うと思います。

特に今回の様に、黒胡椒やクローブ、シナモン、ヴァニラ等のスパイスや、風味の強い赤ワインとの相性はピッタリです。

作り方で工夫した点は、ただ加熱しただけでは風味や色の薄い赤ワインを、じっくりと半分に煮詰めてからコーンスターチで濃度を付ける事で、イメージした味になりました。

温かくてスパイシーなスープに、冷たくてまろやかなアイスクリームを合わせたその味わいと温度のギャップが、このデザートの美味しさだと思います。

キッチンでも、スープにアイスクリームが少し溶けかかった所を急いでお出ししなければいけませんので、タイミングに特に気を使う一皿でも有ります。

スープが冷めたりアイスクリームが溶けすぎても美味しくありませんので、お客様にも出来立ての瞬間を楽しんでいただきたいと思っています。

サクランボは旬の短いフルーツの一つですが、今年はどんな一皿を作ろうか楽しみでもあります。

この短い時期を逃すと来年まで使う事が出来ないと思うと、とても頭を使います。

そして去年よりも良い物でなければ、今作る事の意味が有りません。

義務として常に向上しなければいけない料理人の仕事は、大変でとても尊い職業だとつくづく思います。

 


抹茶のクレームブリュレとレンズ豆のアイスクリーム

2007年05月27日 | デザート

本日は、デザートの一皿をご紹介します。

抹茶のクレームブリュレとレンズ豆のアイスクリーム添えです。

フランス料理のレストランという事も有り、今まではあまり和のイメージのある食材を使う機会が有りませんでしたが、自分の料理の幅が少しでも拡がればと思い考えてみました。

前菜やメインデッシュでは、ワインとの相性やお店のスタイルも有りますので、あまり思い切った食材や調理法の冒険は出来ませんが、最後のデザートでの遊び心は、お客様にも理解していただけると思います。

オーソドックスなデザートのクレームブリュレを抹茶風味にアレンジして、その上にはレンズ豆をココナッツミルクと共に煮込んで作ったアイスクリームを乗せています。

今回の抹茶は和の食材ですが、しかし出来上がりは間違いなくフランス料理のデザートです。

生クリームと卵黄がベースの濃厚な生地の表面を、カソナードと言う砂糖を振ってパリパリに焦がした甘く香ばしい味わいは、誰もが好きな一皿でフランス料理の王道の一品だと思います。

上に乗せたレンズ豆のアイスクリームも、甘く煮た小豆の様ですが、そこにココナッツの風味が加わることで、不思議とフランス料理らしくなっています。

フランス料理の前菜からメインデッシュ、チーズと進んで、最後に日本人が食べてホッとするデザートを作りたかったのです。

勿論、フランス料理を食べなれた方や、デザートとしての華やかさを求められる方は、チョコレートやミルフィーユ等のデザートを楽しんでいただけたら良いと思います。

 

しかしレストランには毎日、本当に沢山の色々なお客様が来られます。

初めてフランス料理を食べられる方、フランス料理に詳しい方、家族で来られる方、会社の接待で使われる方、お友達や彼氏や彼女の誕生日、等様々です。

キッチンの中にいる自分は、直接の接客はしていませんので、お客様とお話をしたりお会いする事は出来ませんが、客席の見える小窓からはいつもその状況を見ています。

一人一人のお客様に好みがあり、その食事の意味があります。

すべての要求に応えることは不可能かもしれませんが、自分の出来る範囲で、少しでも沢山のお客様に喜んでいただけたらと思っています。

 

 


チョコレートの一皿

2007年04月16日 | デザート

本日は、大人の為のデザートの一皿をご紹介します。

チョコレートの一皿 です。

焼きたてのとろけるガトーショコラに、コニャックをたっぷりと効かせたトリュフショコラ、そして冷たく滑らかなショコラのアイスクリームを盛り合わせてみました。

ソースとアイスクリームに添えたチュイルにもチョコレートを使っていますので、チョコレート好きにはたまらない、チョコレート尽くしのデザートです。

素材にもこだわりまして、質の高いフランスのヴァローナ社のビターチョコレートを使っています。

味わいは濃厚ですが適度にほろ苦く、チョコレートとコニャックの香りが素晴らしいので、最後まで飽きずに食べていただけます。

しっかりとしたメインデッシュと赤ワインを召し上がった後には、この様な香り高いデザートと共にゆっくりと食後酒を楽しむ時間も、フランス料理の醍醐味の1つだと思います。

是非ともお料理だけでなく、デザートにもワインや食後酒を合わせてみてはいかがでしょうか。

フランス修行中には、フランス人のデザートに対するこだわりに感動した思い出があります。

どこのレストランでもデザートに、本気で取り組んでいました。

日本でもお菓子屋さんやパティシエの人気が有りますが、レストランのデザートも、もっとお客様に楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

話は変わりますが、歳を重ねるごとに仕事の厳しさについて考える事が多くなります。

そんな時はいつも祖母の事を思い出します。

自分が小学生の頃、学校から帰ると祖母はいつも「勉強しなさい」やら、「きちんとしなさい」等とても口うるさくて、子供だった自分は毎日の様に祖母とケンカをしていました。

もともと勉強嫌いで料理の道に進んだ所もあるのですが、とても奥が深く、また学ぶことの楽しさを教えてくれたのも料理ですので、この道に進めた事を今では運が良かったと思っています。

しかし大人になるにつれ、誰が自分の事を一番心配してくれていたのか、誰が一番将来の自分の事を考えていてくれたのか、わかってきました。

今はもう、祖母に直接「ありがとう」は言えませんが、本当に感謝しています。

仕事の話から少しずれましたが、今日はそんな事を考えていました。