ふたばようちえん日記 2 (園長の雑記帳)

このブログでは、幼稚園で子どもたちとかかわる中で、園長が日頃考えていることや大切にしていることを不定期に綴っていきます。

幼児教育の大切さ (その2)

2013-10-09 17:14:45 | Weblog
 幼児教育についてのある調査があります。

 幼児期から文字や数などの知的教育を受けた子どもと、遊び中心の保育を受けた子どもの、小学校に入ってからの成績についての研究が報告されていました。結果は、小学校1年生では、早期教育を受けた子どもの方が成績が良いのですが、2年生になると逆転するというものでした。

 この結果は、現在の日本社会の多くの方にとっては意外なものに映るでしょう。知的教育はできるだけ早くから受けさせた方が、その後の学力の向上につながると思われている方が多いと思います。そして、多くの人々の中にそのような認識があることによって、幼児向けの教育産業が多数成り立っています

 しかし、事実は逆に出ています。基礎を育てるべき時には基礎をしっかり育てた方が、その後につながっていくのです。様々な研究がそのことを明らかにしているので、日本をはじめとして先進諸国では、政府が幼児教育に関する要領や指針に遊びを中心とすることを定め、実際に保育現場でもそのようにしています。

 一般の方々と専門家や政府との間に大きなずれがあることは、幼児教育に関わるものとしては非常にもどかしいですが、どんなことでも、「基礎」に関わる部分については同じなのかもしれません。

 家を建てる時も基礎工事が大切です。しかし、基礎工事の技術で建築業者を選ぶ人はあまりいません。実際に地震の際は、地盤改良を行うか杭基礎を施すかすべきところに平基礎で建てられたために、傾いたり倒壊した事例が多数見られました。多くのケースで訴訟になっていますが、責任はどこにあるのでしょうか。宅地を造成した業者、その土地を販売した業者、建物の設計者、施工業者、販売業者…。家が一軒建つまでには、多くの人の手を経ています。その中の一人でも、基礎工事について責任をもって考える人がいたとしたら、防ぐことができたはずです。

 教育も同じです。先の研究の幼児期から早期教育を受けた子どもたちの成績の責任は、誰がとってくれるのでしょうか。

 相対的に成績が下がってしまったことにはいろいろな原因が考えられます。早くにやらせ過ぎてしまったために勉強が嫌いになってしまったこと。遊びを通して培われるはずの知的好奇心や探究心が育っていないこと。遊びの中での様々な経験を通して育つ問題解決能力が育っていないため、勉強における応用力が伸びにくくなっていることなど。

 これらの責任は、子どもたちの教育を引き継いだ小学校以上の先生方が必死に担おうとしてくれています。本来の教育計画よりも進度を遅らせて学習が定着するように繰り返したり、基礎のところに戻って勉強の楽しさを感じることができるように授業に遊びの要素を取り入れる工夫をしたり。

 しかし、これらの取り組みも、基礎を培うべき時期にしっかり基礎を育てていれば必要なかったはずのこと。小学校の先生も、本来の計画に沿って学習を進めることに全力を注ぐことができたはずです。

 人間は哺乳動物の一種であり、自然界に生きる生き物です。その成長や発達は、神さまが作られた自然の摂理にしたがって進むことになります。植物には茎や葉が伸びる時期があり、花が咲き実が実る時期があります。肉食動物も乳を飲む時期があり狩りを覚える時期があります。人間は暫しそのことを忘れ、人間的な思いで成長・発達を急がせようとします。しかし、そのことがかえって子どもたちの成長・発達を妨げることにつながっています。幼児期はいわば見えないところで根が伸びる時期。その成長を、しっかり守っていきたいですね。

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