ふたばようちえん日記 2 (園長の雑記帳)

このブログでは、幼稚園で子どもたちとかかわる中で、園長が日頃考えていることや大切にしていることを不定期に綴っていきます。

のびのび遊ぶという教育

2021-11-06 09:56:10 | Weblog
 毎年、園児募集の時期になると、入園を考えている方から「勉強の時間はないのですか?」と聞かれることがあります。保護者の中には、早い時期からしっかり勉強する幼稚園がよいか、小さいうちはのびのび遊ばせた方がよいのかで迷う方が多くいらっしゃるようです。

 のびのび遊ばせたいという方も、大きくなったら勉強ばかりで遊ぶことができるのは今だけだから、という理由から選ばれるケースが多いようで、遊ぶということ自体にはそれほど積極的に意味を見出してはいないようです。

 実は、のびのび遊んでいるだけのように見えるところが、一番しっかり学んでいます。幼稚園には、ゲームなどの遊び方が決まっているものはなく、自ら遊び方を考え、工夫することではじめて楽しくなるように、計画的に環境が作られています。また、一人で楽しく遊ぶことができる遊びから、友達と協力し合わなければなり立たない遊びまでが、年齢や発達段階に応じて計算されて配置されています。

 そのような環境の中で、子どもたちは、自ら考え行動することや、自分の思いや考えを表現すること、友達と協力し合うことなどを、経験を通じて学んでいます。

 自発活動としての遊びを中心とする教育は、自ら考え行動する力を育てるための方法として、平成元年に国が幼稚園教育要領として定めています。本園はもちろんのこと、国公立幼稚園や大学附属の幼稚園はみな同じ教育方法で保育を進めています。

 これに対して、知識の詰め込み型の早期教育は、一定の知識は得ることができますが、自ら考え行動する力は育ちませんし、国が定める幼稚園教育要領からはずれてしまいます。しかし、幼稚園としては今も多数派です。

 小学校以上も、国は知識の詰め込み型の教育を改め、自ら考えて行動することを通して学ぶ総合学習という形にシフトしようとしましたが、ゆとり教育ということで多くの人が反対し、現在も知識の詰め込み型教育が続いています。

 教育と国の発展は直結していて、国は現状を非常に憂慮しています。

 欧米先進諸国の教育は、早くから自ら考えて行動する力を育てる方向へシフトしたため、自ら考えて行動するタイプの人材が育ち、ITをはじめ、先端技術や商品や価値が次々と生み出され、高付加価値の産業が興り、経済が発展しています。

 日本は、知識の詰め込み型の早期教育を受けていますから、自ら考えて行動する力が育っていません。指示を待ち集団でそろって行動する力や、覚えたり練習して再現する力が育っていますので、集団で同じ作業をするタイプの労働には向いていますが、新しい技術や商品を開発するために自ら考えたり試行錯誤したりといった仕事は苦手です。そのため、日本の産業界ではイノベーションは起こりにくくなっています。欧米の先進諸国にどんどん引き離され、経済は停滞し、所得は下がる一方です。

 このような、教育と人材育成の方向性の差が、現在の世界的な経済格差につながってしまっています。

 子どもたちと国の将来を考えて行動している人々が国の中心にもいるにもかかわらず、国全体としてはまとまることができていません。まとまることができない根っこのところに、幼稚園での教育の在り方があります。

 子どもたちみんながのびのび遊び、自ら考え、自ら行動できるように育っていくことができれば、この国も変わっていくのだろうと思います。
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