2013年1月27日の仙台は雪景色。
前日の日差しに、だいぶん雪が解けたと思いきや、翌日はまた真白な綿のように雪が敷き詰められていくこの頃。
新たな雪は柔らかい。小さく軽やかな雀も、舞い降りた先の足元が柔らかく、さすがに埋まってしまった。
めんこいめんこい。
暦は、あと七日もすれば節分で、その翌日に立春を告げるのだが、こちらで野に花が咲くのはもっと先のこと。
雪明りが美しいとはいえ、時々花の彩も恋しくなって春が待ち遠しくなろう。
そんな時に、馴染みの店で季節の花を楽しむ。
ただし、その店は和菓子屋だ。
職人の手業で咲く、小さな甘い花々も心を和ませる。
先日は、凛として力強さや明るさを漂わせる、水仙と寒牡丹を求めた。
この菓子の花々を、より美しく咲かせる器がある。
「雄勝石」の銘々皿だ。
雄勝は、津波で多くを失った町。
あの日、普段は穏やかで美しい雄勝湾が暴れ、町が飲み込まれた。
住む場所も仕事場も、数分で押しつぶされていく恐ろしさ、それを目にした人々の心を思うと、むせぶほど切ない。
(↓2012年7月4日の石巻市雄勝町)
そこは、海の幸と玄昌石が豊かな町であった。
雄勝の石は、漆黒の美しさが活かされ、昔は硯で有名だった。
今、津波からの再起を目指す中で、雄勝石は硯だけでなく、様々な器としても活用されている。
手にした銘々皿は、黒地に柔らかな光沢があって、縁ふちの割り模様は岬の岩を思わせ、石肌がさざ波のように見える。
そこに花の菓子を乗せると、良く引き立ち、一層鮮やかになった。
雪解けの始まった丘に咲くようだ。
寒牡丹は厳しい寒さを受け止めて咲き、水仙は雪中にも咲き始めて春を知らせる。
被災地で努力する人々の姿も、寒中の花に似る。
菓子の花を乗せ、雄勝の石に宿った春を見ながら思う。
この明るさが、きっと雄勝にも広がっていくようにと。