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ふくらく通信

東北人が記す、東北の良さや震災の事、日々のなんだりかんだり。
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春を待つ雄勝の石に花の菓子:2013年1月の記録

2017-09-24 14:53:26 | 東北被災地の歩み:南三陸・石巻

2013年1月27日の仙台は雪景色。

前日の日差しに、だいぶん雪が解けたと思いきや、翌日はまた真白な綿のように雪が敷き詰められていくこの頃。

新たな雪は柔らかい。小さく軽やかな雀も、舞い降りた先の足元が柔らかく、さすがに埋まってしまった。

めんこいめんこい。 


暦は、あと七日もすれば節分で、その翌日に立春を告げるのだが、こちらで野に花が咲くのはもっと先のこと。

雪明りが美しいとはいえ、時々花の彩も恋しくなって春が待ち遠しくなろう。


そんな時に、馴染みの店で季節の花を楽しむ。

ただし、その店は和菓子屋だ。

職人の手業で咲く、小さな甘い花々も心を和ませる。

先日は、凛として力強さや明るさを漂わせる、水仙と寒牡丹を求めた。


この菓子の花々を、より美しく咲かせる器がある。

「雄勝石」の銘々皿だ。


雄勝は、津波で多くを失った町。

あの日、普段は穏やかで美しい雄勝湾が暴れ、町が飲み込まれた。

住む場所も仕事場も、数分で押しつぶされていく恐ろしさ、それを目にした人々の心を思うと、むせぶほど切ない。

(↓2012年7月4日の石巻市雄勝町) 


そこは、海の幸と玄昌石が豊かな町であった。

雄勝の石は、漆黒の美しさが活かされ、昔は硯で有名だった。

今、津波からの再起を目指す中で、雄勝石は硯だけでなく、様々な器としても活用されている。


手にした銘々皿は、黒地に柔らかな光沢があって、縁ふちの割り模様は岬の岩を思わせ、石肌がさざ波のように見える。


そこに花の菓子を乗せると、良く引き立ち、一層鮮やかになった。

雪解けの始まった丘に咲くようだ。


寒牡丹は厳しい寒さを受け止めて咲き、水仙は雪中にも咲き始めて春を知らせる。

被災地で努力する人々の姿も、寒中の花に似る。


菓子の花を乗せ、雄勝の石に宿った春を見ながら思う。

この明るさが、きっと雄勝にも広がっていくようにと。




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