昨日(9月21日)、東京で開かれた国際鼻科学会に参加してきました。
好酸球性中耳炎の海外文献は探しても見つからず、欧米であまり注目されていないのだとは思っていましたが、実は好酸球性中耳炎という病気は、日本以外では全く報告されていないということを知って、驚きました。
民族や社会環境が違えば、病気も違ってきます。たとえば急性中耳炎ですが、米国の小児科学会の急性中耳炎ガイドラインを見ますと、米国内でもイヌイットとネイティヴアメリカンは、急性中耳炎が難治性になるリスクが高いとされています。生活習慣も違いというのもあるでしょうが、想像をたくましくすれば、彼らは私たちと同じモンゴロイドの血をひいています。東洋人は中耳炎が重症化しやすいという可能性はあります。
世界で最も抗菌薬の使用をきびしく制限する急性中耳炎ガイドラインがあるオランダに行った子が、何回も急性中耳炎を起こし、激痛と高熱があって家庭医にかかっても、数日で治るからとガイドラインに従って全く治療をしてもらえず、確かに数日で鼓膜が破裂して膿みが出て、膿みが出れば痛みも熱も下がるのですが、そのうち鼓膜の穴が塞がると、また激痛と高熱を出すという繰り返しだったそうです。しかし、オランダでは、家庭医の紹介がないと耳鼻咽喉科専門医にかかることができず、そういうことが数ヶ月続きました。結局、その子のお父様の同僚の方の尽力で、直接耳鼻咽喉科専門医にかかることができ、鼓膜にチューブを入れてもらったとのことです。
今回の学会でも確認できましたが、欧米では慢性副鼻腔炎を、鼻茸を伴うものと、伴わないものの、二つに分類していますが、欧米の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎というのは、日本の好酸球性副鼻腔炎そのものです。欧米では、日本でいう通常の副鼻腔炎が鼻茸を生じるほど重症化することが少ないようです。
ベルギーの先生の講演では、ベルギーでは鼻茸を伴う副鼻腔炎の83%に喘息を合併するが、中国での調査ではそれが15%程度だそうです。副鼻腔炎が欧米と違うのは、日本だけでなく、韓国を含めた東アジアに共通したことのようです。
日本では、もともとはそれほど多くなかった好酸球性副鼻腔炎の患者さんが、この10年間でかなり増えており、それは韓国でも同様だそうです。もっとも、この病気のことがだんだん知られるようになって、今まで診断されていなかった人が診断されるようになったという部分もあるでしょう。でも、まだまだ診断されていない患者さんも、たくさんいらっしゃると思います。