好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎について知っていただくために開設したブログです。現在更新は行っていません。

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎とは、多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、難治性副鼻腔炎です。白血球の一種である好酸球が、血液や粘膜で増えているのが特徴です。しばしば喘息(とくにアスピリン喘息)を伴い、好酸球性中耳炎を合併することもあります。アスピリン喘息とは、ほぼすべての解熱鎮痛剤と、着色料や防腐剤などいろいろな誘発物質で喘息を起こす病気です。

アスピリン喘息の病態

2011-08-29 22:00:13 | アスピリン喘息

アスピリン喘息では、他の喘息に比べて、局所(気管支粘膜)でよりたくさんの好酸球と肥満細胞が活性化され集積している。それらは、ペプチドロイコトリエン(LC(ロイコトリエン)C4、D4、E4)の合成律速酵素であるLTC4synthaseを過剰に発現しており、非発作時でもペプチドロイコトリエンを産生している。NSAID誘発時は、さらに好酸球、肥満細胞の活性化と集積が進み、著明なペプチドロイコトリエンの増加をもたらす。 参考文献 アスピリン喘息の分子医学的病態、機序. 谷口昌実、榊原博樹、末次勧: 現代医療30(3):159-167

おそらく、アスピリン喘息を合併する、あるいは合併していなくても多くの好酸球性副鼻腔炎の副鼻腔粘膜でも、同じことが起きているはずです。好酸球性副鼻腔炎に比べれば、アスピリン喘息の方がより多くのことが分かっているので、耳鼻咽喉科医もアスピリン喘息についてよく知ることによって、好酸球性副鼻腔炎をもっと理解できると思っています。

例えば、肥満細胞は、粘膜の1型アレルギーの主役です。この細胞の表面に結合したIgEに抗原が結合すると、ヒスタミンやロイコトリエンといった、アレルギーの症状を引き起こすいろいろなものが、放出されます。同時に、好酸球を増やす働きも持ちます。たとえばIL-5の産生です。IL-5は、好酸球の活性化、分化、寿命延長をさせるサイトカインです。肥満細胞は、他の喘息やアレルギー性鼻炎と同様の症状を起こす働きと、アスピリン喘息や好酸球性副鼻腔炎を悪化させる働きとを併せ持つ、重要な細胞です。しかし、現在のところ、好酸球性副鼻腔炎では、十分に検討されていません。

もっとも、アスピリン喘息にも分からないことがたくさんあります。たとえばNSAID過敏症には、気道型(アスピリン喘息)と皮疹型があり、両者が合併することはないとされます。これはなぜなのでしょうか。同じような病態なのに、なぜ気道粘膜と皮膚で、同じ人に起こることがないのでしょうか。

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欧米の鼻副鼻腔炎の分類

2011-08-25 22:11:12 | 好酸球性副鼻腔炎一般

2006年に、副鼻腔炎について、5カ国の専門家がまとめた文献があります。かなり有名な先生方が、著者として名前を連ねた文献です。

Melzer EO, et al: Rhinosinusitis: developing guidance for clinical trials. The Rhinosinusitis Initiative. J Allergy Clin Immnol 118 (5 Suppl): S17-61, 2006.

日本からは日本医大のRuby Pawankar先生が参加していますが、日本における副鼻腔炎の事情が反映されてはいないようです。あとの4カ国は、米国、英国、ベルギー、オランダですので、現在における欧米の鼻副鼻腔炎に対する、ある程度のコンセンサスをうかがい知るのに、よい文献だと思います。ここでは、鼻副鼻腔炎を1.急性おそらく細菌性鼻副鼻腔炎、2.鼻茸のない慢性鼻副鼻腔炎、3.鼻茸のある慢性鼻副鼻腔炎、4.典型的なアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎、の4つのタイプに分類して、研究していきましょうということになっています。

日本では、通常の鼻副鼻腔炎でも、しばしば鼻茸を伴うというのが当たり前です。また、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は、まだ一般にはそれほど知られていません。それなので、このような分類を見ると、少しとまどいます。

3.鼻茸のある慢性鼻副鼻腔炎の特徴として、嗅覚障害と両側性の病変であることが強調されています。また治療として、経口ステロイド、抗ロイコロリエン薬、(日本ではそれほど行われていませんが)アスピリン減感作があげられています。これらは、日本の好酸球性鼻副鼻腔炎に似ています。

また、4.アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎については、鼻茸は必須条件ではありませんが、アレルギームチン(真菌と脱顆粒した好酸球を含む粘液)が強調されています。真菌のことを除けば、好酸球を含むムチンは、好酸球性副鼻腔炎の特徴とされています。したがって、日本で言う好酸球性副鼻腔炎は、3と4の一部にまたがるということになるのでしょうか。

ただ、この4つの分類も絶対ではなく、欧米でも研究者によって違う病名が使われたりしています。世界的にも、好酸球性副鼻腔炎については、まだ解明されていないことが多いことの現れと言えるかも知れません。しかし、好酸球性副鼻腔炎あるいはその類縁疾患については、欧米でも多くの文献が出ていますから、だんだんいろいろなことが分かってくるはずです。

 

 


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メイヨクリニック

2011-08-24 23:28:25 | 好酸球性副鼻腔炎一般

メイヨクリニックは、アメリカでも有数の病院で、また研究施設でもあります。1970年代に、好酸球のmajor basic Proteingが気道粘膜の破壊作用であることを示し、好酸球性炎症の研究のさきがけになったDr. Gleichもここの方でした。私が若いころ、ヨーロッパに比べてアメリカでは鼻科学というものはあまり重要視されておらず、アレルギーや耳手術の専門家はいても、鼻科学をやっている先生はあまりいませんでした。その中で数少ないアメリカの鼻科学の専門家、E.B.Kern教授もメイヨクリニックの方でした。

現在、そのメイヨクリニックの研究グループが、好酸球性副鼻腔炎の原因として、真菌(カビ)を重要視しています。私の後輩の松脇先生は、そのメイヨクリニックに留学し、帰国後も好酸球性副鼻腔炎の診療と研究に当たっています。

来月東京で、国際鼻科学会が開催されます。そこで、メイヨクリニックのallergy disease reserch laboratoryの紀太先生の“ 気道自然免疫が果たすアレルギー性炎症における役割”という講演があり、聴きにいきたいと思っています。


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細菌感染との関係

2011-08-23 08:41:19 | 好酸球性副鼻腔炎一般

喘息も風邪がきっかけで悪化することがありますが、好酸球性副鼻腔炎もその傾向があります。粘濃性の鼻汁を伴って、同事に鼻茸の増大を起こす方は、けっこういらっしゃいます。細菌感染を起こせば、粘膜の炎症は強くなってあたりまえですが、これがふたつの違う病気が重なったと考えるべきなのか、細菌感染に好酸球性副鼻腔炎自体を悪化させる要因もあるのかは、不明です。

風邪はウイルス感染ですが、それに引き続いて細菌感染を起こすことも、しばしばあります。細菌の毒素、あるいはそれに対する防御反応が、好酸球性の炎症の引き金になる可能性も、なくはないのです。

いずれにせよ、風邪をひかないに越したことはありません。急に気温も下がっています。ご注意ください。また風邪をひいたら早く治すこと、また粘濃性(どろっとした色のついた鼻汁)になってしまったら、耳鼻咽喉科で治療を受けることをお勧めします。


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なぜ鼻副鼻腔炎が一番多いのか

2011-08-22 20:54:59 | 好酸球性副鼻腔炎一般

アスピリン喘息、好酸球性中耳炎、好酸球性副鼻腔炎のうち、副鼻腔炎が最も多く、また最初に発症することが多いのはなぜでしょうか。その理由は不明です。血中の好酸球が増えているのに、炎症を起こすのが気道だけなのがなぜかも、不明です。

似たような粘膜ですが、この三者の粘膜は全く同じではありません。鼻副鼻腔の粘膜が一番厚く、おそらく血流や細胞成分も一番多いということも、理由のひとつかも知れません。

好酸球性炎症が悪化する引き金になるものは、食べたり飲んだりして、消化器で吸収され、血流を介して局所に届く場合と、空気といっしょに吸い込んで直接気道に入る場合と、二通りあります。

鼻は、吸い込んだ空気が一番はじめに入る場所です。鼻はもともと、空気の中の有害なものを、粘膜の表面の粘液に吸着したり、空気に適度の温度と湿度を与えたりして、下気道を守るためにあるのです。鼻は、三者の中で、最も大量の有害なものに曝されて、自らが犠牲になって気管支や肺を守っていると言ってもよいでしょう。好酸球性副鼻腔炎が一番多く、最初に起きることが多いのは、そのせいかも知れません。そうであれば気道の好酸球性炎症は一般に、外界から空気と一緒に入ってくる何者かが、重要な原因になっている可能性が高いことになります。

また、鼻副鼻腔で起きている好酸球性の炎症は、気管支と比べると桁違いに強くなります。鼻茸は究極のリモデリングかも知れませんが、気管支でそのようなものができたら、それだけで息ができなくなってしまいます。副鼻腔でも気管支でも、杯細胞が増えて粘度の高い分泌物が貯まりますが、気管支炎で副鼻腔炎で起きているような貯まり方をすれば、やはり息ができません。

好酸球性副鼻腔炎の粘膜です。赤紫色に染まっているのが、杯細胞から分泌されるムチン(高粘性分泌物)です。

幸い副鼻腔は息の通り道としては脇道ですし、鼻腔は気管支に比べると、とても広いですし、鼻呼吸ができなければ口呼吸ができますから、鼻副鼻腔で強い炎症が起きても、それで窒息することはありません。しかし口呼吸では、鼻が本来持っている気管支を守る働きがないまま、有害なものが直接奥まで入ってしまいますから、鼻を治すことは、気管支喘息の改善にもつながると考えられています。

 

 

 

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