現在ブログの更新を行っていません。
以前にも書きましたその理由です。
ひとつには私が大学にいた頃に得た知識や経験は、既に書き終えたということがあります。大学にいる頃は、同僚の先生方とともに、この病気にとりくんで、全国の耳鼻咽喉科医の中でも、おそらく最も多くの患者さんを診させていただきました。しかし、開業して既に17年が経ち、やはり新しい情報も知識も、現役の最先端にいる専門家の先生方には、追いつけなくなっているからです。
もうひとつの理由は、このブログを見て遠方から私のクリニックを受診してくださる方が、ときどきいらっしゃるのですが、あまりそういう患者さんのお役にたてていないのです。この病気は短期間に治る病気ではありませんし、症状が悪化したときには、すぐに対応しなければならないことがありますので、あまりに遠方の方だと、治療を行うのに限界があるのです。
数年前から休眠状態で、いただいたご質問にも気づかないままでいました。改めてお詫びいたします。
ご質問をいただいてもお応えしないままで、かえって申し訳なく、今後はご質問の受付も終了させていただきます。
最後に、休眠状態になったこの数年の間に、私が気がつかずにいたご質問のいくつかにお答えしておきます。あまりにも遅いお答えになってしまいましたが。
点鼻のステロイドについてご質問をいくつかいただいていました。好酸球性副鼻腔炎ではなく、交通事故による頭部外傷による嗅覚障害についてのご質問もありましたが、確かに嗅覚の神経がすべて断裂してしまうと、回復しないことも多いですが、なかには回復する方もいらっしゃいます。主治医の先生に相談しながら、すぐあきらめることなく、治療はされた方がいいと思います。頭をのけぞって(懸垂頭位)点鼻するのは苦しいし、うまく嗅覚の神経に届かないことがありますので、その場合は、次にお示しする”快適ポジション”を試してください。
*ステロイド点鼻のための快適な姿勢(Kaiteki(快適) positon)
点鼻する側を上にして、横になってください。(左の鼻に点鼻する場合は、右を下にして、横になります。)
そのまま首を回して、顔を30度上に向けます。次に顎を30度上げます。
その姿勢で、上側(右下に横になっていたら、左側)の鼻に、数滴点鼻を行い、しばらくその姿勢を保ちます。
身体を起こすと、薬がのどに落ちてきますので、それは飲み込まずに口から出して、さらにうがいをして薬を洗い流してください。
次に反対側(先に左に点鼻したら右側)に点鼻するために、左を下にして横になって、同様の方法で点鼻してください。
下のサイトで、Kaiteki(快適) positonの動画が見られます。(説明はドイツ語ですが、見ていただければ分かると思います。
https://www.allgemeinarzt-online.de/a/kaiteki-position-1792455
難病指定についても、ご質問をいただいていました。好酸副鼻腔炎の難病指定は、当初思っていたより、難しいようです。県によって多少事情が違うでしょうし、以下は私の推測も含みますので、間違っているかも知れません。主治医の先生に相談してみてください。
好酸球性副鼻腔炎の方は、軽症の方も含めればかなりの数にのぼりますので、基本的に重症の方だけしか指定しない方針のようです。具体的に言いますと、手術をしてもすぐ再発してしまうような方が対象になります。事実上、既に手術を行っていて、手術のときに取ったポリープの細胞を調べて好酸球が多いというのが確認され、なおかつ再発した方でないと、指定されないように聞いています。
ご自分の症状が好酸球性副鼻腔炎かどうかというご質問には、正直に言って正確にお答えすることが難しいです。診察して検査をしないと、何とも言えません。例えばステロイドが効いたら必ず好酸球性副鼻腔炎であるとも言えないのです。ステロイドは、アレルギー性鼻炎などにも著効があります。
このブログも休止状態になっていましたが、その間、治療法には、大きな進歩はありませんでした。原因の究明については、数々の研究も進められているので、いずれそれが治療法にも結びつくと期待しています。
ご存知の方も多いと思いますが、国の対応には変化がありました。
27年1月1日から新たな難病医療費助成制度が施行されていますが、厚生労働省の検討委員会が3月19日、難病医療法に基づき、7月から医療費の助成が始まる指定難病の第2次実施分に196疾患を認める方針を了承したとのニュースがありました。好酸球性副鼻腔炎も、今回難病として認められた疾患のひとつです。
知事の指定を受けた指定医に限り、難病の患者に対する医療費助成の申請に必要な診断書を記載することができます。また原則、知事の指定を受けた医療機関等(指定医療機関)が行う医療に限り、指定難病患者の方が医療費助成を受けることができます。
医療費の助成は、根本的な解決というわけではありませんが、それでもいくらかは治療が受けやすくなり、また難病に指定されたことによって、この病気に対する医師や一般の方の認識も高まるでしょうから、その意味でも、良いことだと言えます。
更新がずいぶん滞っています。
ひとつには、私が大学にいた頃に得た知識や経験は、既に書き終えたということがあります。大学にいる頃は、同僚の先生方とともに、この病気にとりくんで、全国の耳鼻咽喉科医の中でも、おそらく最も多くの患者さんを診させていただきました。しかし、開業して既に13年が経ち、やはり新しい情報も知識も、現役の最先端にいる専門家の先生方には、追いつけなくなっています。
もうひとつの理由は、このブログを見て遠方から私のクリニックを受診してくださる方が、ときどきいらっしゃるのですが、あまりそういう患者さんのお役にたてていないのです。この病気は短期間に治る病気ではありませんし、症状が悪化したときには、すぐに対応しなければならないことがありますので、あまりに遠方の方だと、治療を行うのに限界があるのです。
さらに、耳鼻咽喉科医である私には、気管支喘息や肺炎についての診断や治療を、的確に行えません。以前書きましたように、この病気はおそらく単純にひとつの疾患ではなくて、いろいろな疾患を含んでいる可能性があります。鼻副鼻腔炎あるいは中耳炎については、いろいろなバリエーションがあっても、ある程度対応できますが、気管支や肺、ないしはChung Strauss 症候群のような全身の疾患になると、そうではありません。
そのように、このブログを見て受診される患者さんのご期待にそえないことが、あまりにも多いので、このブログで私があたかも現在もこの病気の最先端にいるような印象を与えることは、避けなければならないという反省もあるのです。
それでも、この病気をあまりご存じない患者さんや、あるいは耳鼻咽喉科医も、まだ決して稀ではないことも知っていますので、そういう方々のお役にたてるよう、ブログは今後も続けていきます。またコメント、ご質問をいただけば、私に出来る限りのお答えをさせていただくつもりです。私自身も更に勉強して、お知らせするべき情報があれば、更新をしていきます。
いろいろなことで、このブログの更新もずいぶん怠ってしまいました。最新のニュースではないのですが、今日ひとつ新しいことがあったので、報告です。
私は出席していない学会なのですが、今春の日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会のスポンサードセミナーの記録を、そのセミナーのスポンサーである日本新薬のMRさんが持ってきてくれました。座長は鹿児島大耳鼻咽喉科の黒野教授、演者は相模原病院の谷口正美先生です。下にその内容を要約します。
*アスピリン喘息にロイコロリエンが関与していることは以前からよく知られているが、鼻茸を有する喘息患者さんの尿中には、鼻茸のない喘息患者さんに比べ、尿中のロイコトリエン(LTE4)が多いこと、そして鼻茸を手術で除去すると、尿中LTE4が著明に減ることから、鼻茸がロイコトリエンの主要な産生源であると考えられる。
*鼻茸におけるロイコロリエン産生の主役は好酸球であると考えられる。
*アスピリン喘息患者さんにアスピリンを全身負荷すると、上下気道(鼻と気管支)症状に伴い、尿中LTE4濃度が2~30倍に上昇する。安定期と異なり、アスピリンによって誘発されるロイコトリエンの主な産生源は、肥満細胞である。
*手術で鼻茸を除去すると、アスピリン負荷試験に対する感受性とロイコトリエンの過剰産生が低下すること、そして吸入ステロイド薬により喘息を安定化させても、鼻茸の改善や尿中LTE4濃度の低下は見られないことからで、アスピリン負荷時のアスピリン喘息の主病態は下気道ではなく鼻茸にあると考えられる。
*ただし、ロイコトリエンの過剰産生のみではアスピリン喘息は起きないので、他の因子も関係する。
好酸球性副鼻腔炎の患者さんで、鼻の手術の後に喘息も改善することが多いですが、谷口先生のご講演の内容は、その裏付けになります。
いただいた学会の記録にはもうひとつ、日本新薬の研究所の方の”好酸球性副鼻腔炎モデルマウスにおけるデキサメタゾンペシル酸エステルの作用”という題の発表の要約が載っていました。エリザスという粉末のステロイド点鼻薬が、マウスの鼻の真菌(かび)による好酸球性炎症を改善させたという報告です。(エリザスは、液体のステロイド点鼻と異なり、防腐剤が入っていない点で、私は好酸球性副鼻腔炎の患者さんには、多用しています。)
ここにひとつだけ参考文献が載っていましたが、その著者のひとりDr.Bolger WEは、若い頃私がスウェーデンにいるとき、同じ施設に留学してきて、一緒に副鼻腔炎の研究をした先生です。Development of a murine model of chronic rhinosinusitis. Lindsay R, Slaughter T, Britton-Webb J, Mog SR, Conran R, Tadros M, Earl N, Fox D, Roberts J, Bolger WE.
今夜は、大学の後輩であり、現独協医科大学教授の春名先生の講演会でした。春名先生は、好酸球性副鼻腔炎の専門家として、第一線で活躍している先生ですので、今日はいくつか質問をさせてもらいました。
Q:難病情報センターのホームページに出ている(春名教授も研究メンバーに入っている)、研究奨励分野とは何なのか?A:好酸球性副鼻腔炎について、全国的に調査をして、診療指針を作っていくのが目的。しかし、国から出る研究費はたった50万円とのことで、この予算で何ができるかは疑問。
Q:同じホームページで、好酸球性副鼻腔炎の患者さんが好酸球性中耳炎を合併すると聾に至るとあるが、そんな症例はどれぐらいいるのか?A:自分(春名教授)も経験がないし、少ないと思う。確かに好酸球性中耳炎は副鼻腔炎以上にやっかいだが、きちんと治療すれば、聾に至ことはないのではないか。
Q:日本にアスピリン脱感作を行っている施設はあるのか?A:唯一、相模原病院が行っているが、それも確立された治療として行っているわけではない。相模原病院では、アスピリン喘息の確定診断が主目的で、アスピリンを投与(静注?)して発作の誘発を見る方法を行っているが、付随的にそれで脱感作が成立するかどうかを、見ているだけらしい。
以上、非公式な会話の中での質問ですので、不正確な点もあるかも知れません。文責は私にあります。