好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎について知っていただくために開設したブログです。現在更新は行っていません。

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎とは、多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、難治性副鼻腔炎です。白血球の一種である好酸球が、血液や粘膜で増えているのが特徴です。しばしば喘息(とくにアスピリン喘息)を伴い、好酸球性中耳炎を合併することもあります。アスピリン喘息とは、ほぼすべての解熱鎮痛剤と、着色料や防腐剤などいろいろな誘発物質で喘息を起こす病気です。

日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の記録から

2012-09-10 16:43:00 | 好酸球性副鼻腔炎一般

いろいろなことで、このブログの更新もずいぶん怠ってしまいました。最新のニュースではないのですが、今日ひとつ新しいことがあったので、報告です。

私は出席していない学会なのですが、今春の日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会のスポンサードセミナーの記録を、そのセミナーのスポンサーである日本新薬のMRさんが持ってきてくれました。座長は鹿児島大耳鼻咽喉科の黒野教授、演者は相模原病院の谷口正美先生です。下にその内容を要約します。

*アスピリン喘息にロイコロリエンが関与していることは以前からよく知られているが、鼻茸を有する喘息患者さんの尿中には、鼻茸のない喘息患者さんに比べ、尿中のロイコトリエン(LTE4)が多いこと、そして鼻茸を手術で除去すると、尿中LTE4が著明に減ることから、鼻茸がロイコトリエンの主要な産生源であると考えられる。

*鼻茸におけるロイコロリエン産生の主役は好酸球であると考えられる。

*アスピリン喘息患者さんにアスピリンを全身負荷すると、上下気道(鼻と気管支)症状に伴い、尿中LTE4濃度が2~30倍に上昇する。安定期と異なり、アスピリンによって誘発されるロイコトリエンの主な産生源は、肥満細胞である。

*手術で鼻茸を除去すると、アスピリン負荷試験に対する感受性とロイコトリエンの過剰産生が低下すること、そして吸入ステロイド薬により喘息を安定化させても、鼻茸の改善や尿中LTE4濃度の低下は見られないことからで、アスピリン負荷時のアスピリン喘息の主病態は下気道ではなく鼻茸にあると考えられる。

*ただし、ロイコトリエンの過剰産生のみではアスピリン喘息は起きないので、他の因子も関係する。

好酸球性副鼻腔炎の患者さんで、鼻の手術の後に喘息も改善することが多いですが、谷口先生のご講演の内容は、その裏付けになります。

いただいた学会の記録にはもうひとつ、日本新薬の研究所の方の”好酸球性副鼻腔炎モデルマウスにおけるデキサメタゾンペシル酸エステルの作用”という題の発表の要約が載っていました。エリザスという粉末のステロイド点鼻薬が、マウスの鼻の真菌(かび)による好酸球性炎症を改善させたという報告です。(エリザスは、液体のステロイド点鼻と異なり、防腐剤が入っていない点で、私は好酸球性副鼻腔炎の患者さんには、多用しています。)

ここにひとつだけ参考文献が載っていましたが、その著者のひとりDr.Bolger WEは、若い頃私がスウェーデンにいるとき、同じ施設に留学してきて、一緒に副鼻腔炎の研究をした先生です。Development of a murine model of chronic rhinosinusitis.  Lindsay R, Slaughter T, Britton-Webb J, Mog SR, Conran R, Tadros M, Earl N, Fox D, Roberts J, Bolger WE.


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする