今年に入ってからの、国内の好酸球性副鼻腔炎の文献です。まだすべてに目を通していないので、これから少しずつ整理していきます。ほとんどが総説的なもので、新しい知見はあまりないようですが、最近は学会発表や論文も増えてきており、それだけこの病気に関心をもってくれる先生が増えているということです。
主に医師用の文献ですが、患者さんにとっては、これらの著者の病院では、好酸球性副鼻腔炎に注目し、治療を行っているというめやすになるかもしれません。
9)専門医のためのアレルギー学講座 好酸球増多を主徴とする疾患 好酸球性副鼻腔炎と好酸球性中耳炎 石戸谷淳一(横浜市立大学附属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科), 佐久間康徳 アレルギー(0021-4884)60巻5号 Page535-546(2011.05) *総説
10)抗IgEモノクローナル抗体(オマリズマブ)が奏功した好酸球性中耳炎・副鼻腔炎例 大島英敏(東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科), 川瀬哲明, 小林俊光 耳鼻咽喉科臨床(0032-6313)104巻5号 Page319-323(2011.05) *ステロイドに抵抗するアスピリン喘息症例で、好酸球性中耳炎、好酸球性副鼻腔炎合併例(耳漏、鼻汁のスメアで好酸球)に、オマリズマブで症状が改善した。好酸球性副鼻腔炎には必ずしもIgEは関与しないという報告が多いが、これはIgEの関与を示唆する報告である。
*以下は臨床免疫・アレルギーの好酸球性副鼻腔炎の特集です。
11)【好酸球性副鼻腔炎の病態と治療】 好酸球性副鼻腔炎と好酸球性中耳炎との関連 臨床免疫・アレルギー科(1881-1930)55巻4号 Page448-453(2011.04) 松谷幸子(仙台赤十字病院 耳鼻咽喉科)
12)【好酸球性副鼻腔炎の病態と治療】 好酸球性副鼻腔炎の外科的治療 鴻信義(東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科学教室) 臨床免疫・アレルギー科(1881-1930)55巻4号 Page442-447(2011.04)
13)【好酸球性副鼻腔炎の病態と治療】 好酸球性副鼻腔炎(喘息合併)の保存的治療 池田勝久(順天堂大学 大学院医学研究科耳鼻咽喉科学講座) 臨床免疫・アレルギー科(1881-1930)55巻4号 Page435-441(2011.04)
14)【好酸球性副鼻腔炎の病態と治療】 好酸球性副鼻腔炎の病態 石戸谷淳一(横浜市立大学附属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科), 佐久間康徳, 塩野理, 小松正規, 佃守 臨床免疫・アレルギー科(1881-1930)55巻4号 Page429-434(2011.04)
15)【好酸球性副鼻腔炎の病態と治療】 好酸球性副鼻腔炎の概説 春名眞一(獨協医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科) 臨床免疫・アレルギー科(1881-1930)55巻4号 Page422-428(2011.04)
4月の日本耳鼻咽喉科学会に4題、アレルギー学会に2題、3月の呼吸器学会に1題、好酸球性副鼻腔関連の演題が出ています。
16)【アレルギー疾患の疫学とナチュラル・ヒストリー】 好酸球性副鼻腔炎・好酸球性中耳炎 石戸谷淳一(横浜市立大学附属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科) アレルギーの臨床(0285-6379)31巻2号 Page133-138(2011.02) *解説
17)眼症状を呈した好酸球性副鼻腔炎の1例 本間あや(北海道大学 大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野), 高木大, 鈴木清護, 中丸裕爾, 福田諭 耳鼻咽喉科・頭頸部外科(0914-3491)83巻1号 Page79-82(2011.01)
2001年にその病名が確立された好酸球性副鼻腔炎は、その後もいくつかのことが分かってきました。2006年の日本鼻科学会の臨床問題懇話会で、”好酸球性副鼻腔炎の克服に向けて”というタイトルでシンポジウムが行われました。司会は、千葉大学の岡本教授と順天堂大学の池田教授です。シンポジストは、横浜市立大学の石戸谷先生、慈恵医大の松脇先生、三重大学の竹内教授、千葉大学の山本先生でした。この先生たちが、今後もこの病気に本格的に取り組んでいただけると、心強いです。
ここでは、「好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔粘膜または鼻ポリープに著明な好酸球浸潤を伴う易再発性の慢性副鼻腔炎の総称である。」と定義されました。そこには但し書きがあり、病因、病態、重症度が異なる様々な疾患が混在している、とされています。またI型アレルギー疾患ではないということも言われています。
疫学調査から、「手術適応となる慢性副鼻腔炎の20-40%を好酸球性副鼻腔炎が占める。」 「喘息の合併 が60~80%みられ、喘息を合併する副鼻腔炎の70%以上を占める。」ですから、10年前の私の例よりもかなり多くなっています。「好酸球 性中耳炎の合併が30%近くに見られる。」というのも、私の経験よりかなり多いです。好酸球性副鼻腔炎は、最近さらに増加し、また重症化しているのでしょうか。
文献38)第35回鼻科学臨床問題懇話会 ・好酸球性副鼻腔炎の克服に向けて . 日鼻誌46(1): 37~49, 2007.
このブログの目的は、
1.好酸球性副鼻腔炎だと気づかずに、適切な治療を受けられないでいる方に、自分の病気に気づいていただく。
2.好酸球性副鼻腔炎の患者さんが、病気を治していくための手助けになる。
3.まだ好酸球性副鼻腔炎をよく知らない医師に、この病気のことを知っていただく。
4.好酸球性副鼻腔炎にはアスピリン喘息を高率に合併するので、アスピリン喘息についても、知っていただく。
5.自分自身の知識を増やしていく。
まずスタートしてみようということで、この1週間、手持ちの知識、情報をアップしましたが、はじめに目指した、患者さんのために役に立つブログには、まだほど遠いものです。今後、
1.のためには、まずこのブログを見ていただく工夫を、していきます。
2.についても努力していきますが、私などのブログよりも、実際この病気と向き合って前向きに生活していらっしゃる、みやびさんのブログを見ていただいた方が、ずっと得るものが大きいと思います。3.についても同様です。
4.については、宮川先生のサイトで、実際のご経験に基づいた、きめ細かな情報が得られます。
目標は、宮川先生の喘息のサイトの好酸球性副鼻腔炎版をつくることですが、私の力では及ばないところも多いです。このブログをはじめて、自分の知識がいかに限られたものであるか、改めて分かりました。しかし、大学の先生の方が情報や知識は多いと思いますが、開業医には、より患者さんに近い目線で見ることができるという利点もあります。
当面は、5.の自分の知識を増やしていくことが中心になてしまうかもしれません。その中で、少しでも患者さんの役に立つ情報を出していければと思います。また、ご質問をいただければ、私にできる限りお答えしよう考えています。
主に医師用の参考文献です。まず、日本で好酸球性副鼻腔炎という病気が見つけられ、その概念が確立するまでの文献です。
1)深見雅也、柳清、浅井康和、鴻信義、森山寛.内視鏡下鼻内手術の適応ー術後経過不良例の検討ー. 日耳鼻 98: 402-409, 1995.
2)柳清、深見雅也、森山寛、他: 喘息を伴う慢性副鼻腔炎に対する鼻内手術の効果.
日耳鼻 98:1540, 1995.
*喘息を合併する慢性副鼻腔炎は、内視鏡下鼻内手術の術後経過が不良となる傾向があることを報告しています。
3)飯野ゆき子, 宮澤哲夫: 副鼻腔炎の臨床像と副鼻腔粘膜浸潤細胞との関係. 耳展 39(補1): 65-69, 1996.
4)石戸谷淳一, 小口直彦, 鳥山稔, 他: マクロライド療法に対する有効例と無効例の免疫組織科学的検討. 耳展 39(補1): 41-45, 1996.
*副鼻腔粘膜に好酸球浸潤が強い例には、マクロライド療法が有効でないことが報告されています。
5)深見雅也, 浅井和康, 森山寛, 他: 術中所見より見た慢性鼻副鼻腔炎の病態分類. 耳展 40(補2):150-154, 1997.
6)柳清:慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻内手術後の予後に関する研究ー上顎洞粘膜の組織像と内視鏡所見からー. 耳展 41: 15-37, 1998.
*好酸球浸潤が強く喘息を合併する例では、内視鏡下副鼻腔手術の術後経過が不良であることを報告しています。
7) 深見雅也、柳清、鴻信義、飯田誠、吉川衛、春名眞一、森山寛: 好酸球浸潤を指標に加えた、慢性副鼻腔炎病態分類 ー内視鏡手術症例の組織学および免疫組織学的検討からー. 鼻科学会誌 38:441-450、1999.
*粘膜に好酸球浸潤が強い例では、多発性の鼻茸や粘性の高い貯留液が見られ、術後経過が不良で、喘息(とくに非アトピー性喘息)を合併することが多く、血中の好酸球も多いことを報告しています。
8)春名眞一, 鴻信義, 柳清, 森山寛 : 好酸球性副鼻腔炎. 耳展 44:195-201、2001.
*好酸球性副鼻腔炎という疾患名を提案し、その特徴を明確にしました。
診療施設1に紹介した以外の慈恵医大の分院と関連病院を紹介します。
同愛記念病院耳鼻咽喉科
私が開業直前までいた病院で、アレルギー・呼吸器科の喘息の治療にも定評があります。
太田総合病院耳鼻咽喉科
現在、私のクリニックで内視鏡下手術(入院)が必要な患者さんは、はだいたい太田総合病院にお願いしています。
厚木市立病院耳鼻咽喉科