![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/5a/41d44c184694cfe29e7dce706055397d.jpg)
今年のお正月に結った日本髪は「先笄(さっこう)」という髪形です。
江戸時代後期から明治時代初期にかけて、主に京坂の町家の若奥さんに結われていた髪形ですが、お茶屋の女将さんなども結っていました。
![先笄](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/4b/c6db00e88a5999c102f2751d09f28d82.jpg)
![先笄](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/9d/b9bd146fa95406c56ed796e1e1b7a964.jpg)
歌舞伎でも、上方を舞台にした世話物で、よくこの髪形が出てきます。
記憶に新しいところでは、「封印切」のおえんさん。
秀太郎さんのおえんさん、この髪形がすごくよく似合っていて素敵でした~
。
以前、「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」を観た時、仲居頭・万野が先笄に結っていて「なんで女将じゃないのに先笄なんだろう……」と疑問に思っていたのですが、京都・島原の揚屋兼置屋「輪違屋」さんのご主人が書かれた本を読んでいて、ナゾがとけました!
輪違屋さんではかつて、仲居頭さんが先笄に結っていたのだそうです(さすがに今は普通の髪形だと思いますが……)。
なぜ女将さんじゃなく仲居頭さんなのかというと、「輪違屋には『主人』はいるけれど『女将』はいないから」。
輪違屋さんの場合は、男あるじ(ご主人)が差配しておられるお店なので、奥様は素人の女性ということになり、お店には一切出てこないきまりだったそうです。代わりに店のこまごましたことを取り仕切る女性が仲居頭さんで、いわば「女将代わり」ですから、仲居頭さんが先笄に結っていたようです。
髪形一つとっても、奥が深いんですね~!
私がこの髪形を結ったら、どう見てもおえんさんじゃなく仲居頭万野といった風情ですが……
。
現代では、衿替え直前の舞妓さんが先笄を結いますが、「舞妓さん仕様」の先笄は、もともとの先笄とは形が微妙に異なり、飾りも派手になります(「舞妓さん仕様」の先笄の写真はこちらの記事にあります)。
この髪形は、名前のとおり笄(こうがい)を使って結い上げることと、頭の中央に「橋の毛」と呼ばれる尻尾のような毛をつけていることが大きな特徴です。
見た目がとても複雑な髪形ですが、どんなふうに結われていくのかざっくりとご説明しますと……。
1)髪のパーツを前髪、鬢(びん:サイドの髪のこと)、後頭部にわけ、前髪以外の毛を後ろで一つに束ねます。
※本当は、この前や間に、髪にコテをあてたり鬢の形をつくったり髱(つと。うなじの部分の髪のこと。関東では「たぼ」といいます)を形づくったりなど細かな手順がありますが、ここでは省略させていただきます。
2)1で束ねた髪を上に折り曲げ、髷尻(まげじり)を作ります。
3)2で折り返した髪の先を笄に巻き付けて固定し、上から鹿子をかけます。
4)輪っか状のかもじ(添え毛)を笄にかけます。
5)前髪の形をつくり、髷の上に橋の毛をのせて「いち止め」で固定します。
とまあこんな感じで、あれよあれよという間にできあがりました。
島田と比べてかもじが少ないぶん結い上がりも早かったですし、すごく軽くて楽でした。
2の時に、髪を下に向かって折り曲げると、「両輪」という髪形になります。
子どもができると両輪に結い替えたそうで、「両輪」は関東での丸髷に匹敵するような、京坂の既婚女性の代表的髪形だったようです。
歌舞伎の場合だと、まだ子どもが小さい若奥さんだと先笄にしていることが多いみたいです。
関西式の日本髪は、前髪をいちばん最後に作って、余った前髪の先を髷の根元に巻き付けるのですが、関東式では最初に前髪を作り、前髪の先も一緒に束ねて髷をつくっていきます。
「橋の毛」は、今では「油つけ」と呼ばれるかもじを使いますが、もともとは、長い前髪の先をそのまま後ろに渡していたのだと思われます。
「橋の毛」の先を髷に固定する際に使うのが「いち止め」という飾りで、これがないとこの髪形はできません。
今回使っている「いち止め」は撥形のもので、これに黒元結で橋の毛を固定していますが、橋の毛の上から挿して固定するタイプのいち止めもあります。
今回使っている髪飾り(櫛、笄、鹿子、いち止め、玉かんざし)はすべて自前です!![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/choki.gif)
鼈甲の笄やいち止めはヤフオクでゲットし、珊瑚の玉かんざしは京都でたまたま入ったアンティークショップで見つけました。
笄や玉かんざしはヤフオクでもよく出ていますが、「いち止め」はなかなかありません。
ところが昨年の秋ごろ、「今度のお正月には先笄を結ってみたいけど、いち止めがないのよね……」と思ってヤフオクを見たら、ちょうど出品されていたのです!
しかも、マイナーな道具なので競争相手もなく、あっさり落札できてしまったのでした
。
笄は、この髪形の場合だともう少し短いもののほうがいいんですが、短いのがなかったので(祖母が持っていた丸髷用の笄だと短すぎる)、「大は小を兼ねる」で長いやつにしちゃいました
。
来年のお正月までに、もう少し手ごろな長さの鼈甲の笄を見つけたいところ……
。
鹿子は、絞りの半衿を約半分の長さに切ったものを使いました。
残りの半分を襦袢の衿につければ、鹿子とおソロになります(上の写真では普通に白衿にしちゃってますが……)。
歌舞伎を観ていてこの髪形が出てくるとつい頭のほうに目が行ってしまうくらい、大好きな髪形なので、結っていただけてとても気分が良かったです。
結髪にあたって多大なご尽力をくださった美容師さんに、あらためて御礼を申し上げます。
江戸時代後期から明治時代初期にかけて、主に京坂の町家の若奥さんに結われていた髪形ですが、お茶屋の女将さんなども結っていました。
![先笄](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/4b/c6db00e88a5999c102f2751d09f28d82.jpg)
![先笄](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/9d/b9bd146fa95406c56ed796e1e1b7a964.jpg)
歌舞伎でも、上方を舞台にした世話物で、よくこの髪形が出てきます。
記憶に新しいところでは、「封印切」のおえんさん。
秀太郎さんのおえんさん、この髪形がすごくよく似合っていて素敵でした~
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/heart.gif)
以前、「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」を観た時、仲居頭・万野が先笄に結っていて「なんで女将じゃないのに先笄なんだろう……」と疑問に思っていたのですが、京都・島原の揚屋兼置屋「輪違屋」さんのご主人が書かれた本を読んでいて、ナゾがとけました!
輪違屋さんではかつて、仲居頭さんが先笄に結っていたのだそうです(さすがに今は普通の髪形だと思いますが……)。
なぜ女将さんじゃなく仲居頭さんなのかというと、「輪違屋には『主人』はいるけれど『女将』はいないから」。
輪違屋さんの場合は、男あるじ(ご主人)が差配しておられるお店なので、奥様は素人の女性ということになり、お店には一切出てこないきまりだったそうです。代わりに店のこまごましたことを取り仕切る女性が仲居頭さんで、いわば「女将代わり」ですから、仲居頭さんが先笄に結っていたようです。
髪形一つとっても、奥が深いんですね~!
私がこの髪形を結ったら、どう見てもおえんさんじゃなく仲居頭万野といった風情ですが……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_shock1.gif)
現代では、衿替え直前の舞妓さんが先笄を結いますが、「舞妓さん仕様」の先笄は、もともとの先笄とは形が微妙に異なり、飾りも派手になります(「舞妓さん仕様」の先笄の写真はこちらの記事にあります)。
この髪形は、名前のとおり笄(こうがい)を使って結い上げることと、頭の中央に「橋の毛」と呼ばれる尻尾のような毛をつけていることが大きな特徴です。
見た目がとても複雑な髪形ですが、どんなふうに結われていくのかざっくりとご説明しますと……。
1)髪のパーツを前髪、鬢(びん:サイドの髪のこと)、後頭部にわけ、前髪以外の毛を後ろで一つに束ねます。
※本当は、この前や間に、髪にコテをあてたり鬢の形をつくったり髱(つと。うなじの部分の髪のこと。関東では「たぼ」といいます)を形づくったりなど細かな手順がありますが、ここでは省略させていただきます。
2)1で束ねた髪を上に折り曲げ、髷尻(まげじり)を作ります。
3)2で折り返した髪の先を笄に巻き付けて固定し、上から鹿子をかけます。
4)輪っか状のかもじ(添え毛)を笄にかけます。
5)前髪の形をつくり、髷の上に橋の毛をのせて「いち止め」で固定します。
とまあこんな感じで、あれよあれよという間にできあがりました。
島田と比べてかもじが少ないぶん結い上がりも早かったですし、すごく軽くて楽でした。
2の時に、髪を下に向かって折り曲げると、「両輪」という髪形になります。
子どもができると両輪に結い替えたそうで、「両輪」は関東での丸髷に匹敵するような、京坂の既婚女性の代表的髪形だったようです。
歌舞伎の場合だと、まだ子どもが小さい若奥さんだと先笄にしていることが多いみたいです。
関西式の日本髪は、前髪をいちばん最後に作って、余った前髪の先を髷の根元に巻き付けるのですが、関東式では最初に前髪を作り、前髪の先も一緒に束ねて髷をつくっていきます。
「橋の毛」は、今では「油つけ」と呼ばれるかもじを使いますが、もともとは、長い前髪の先をそのまま後ろに渡していたのだと思われます。
「橋の毛」の先を髷に固定する際に使うのが「いち止め」という飾りで、これがないとこの髪形はできません。
今回使っている「いち止め」は撥形のもので、これに黒元結で橋の毛を固定していますが、橋の毛の上から挿して固定するタイプのいち止めもあります。
今回使っている髪飾り(櫛、笄、鹿子、いち止め、玉かんざし)はすべて自前です!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/choki.gif)
鼈甲の笄やいち止めはヤフオクでゲットし、珊瑚の玉かんざしは京都でたまたま入ったアンティークショップで見つけました。
笄や玉かんざしはヤフオクでもよく出ていますが、「いち止め」はなかなかありません。
ところが昨年の秋ごろ、「今度のお正月には先笄を結ってみたいけど、いち止めがないのよね……」と思ってヤフオクを見たら、ちょうど出品されていたのです!
しかも、マイナーな道具なので競争相手もなく、あっさり落札できてしまったのでした
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
笄は、この髪形の場合だともう少し短いもののほうがいいんですが、短いのがなかったので(祖母が持っていた丸髷用の笄だと短すぎる)、「大は小を兼ねる」で長いやつにしちゃいました
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
来年のお正月までに、もう少し手ごろな長さの鼈甲の笄を見つけたいところ……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_do.gif)
鹿子は、絞りの半衿を約半分の長さに切ったものを使いました。
残りの半分を襦袢の衿につければ、鹿子とおソロになります(上の写真では普通に白衿にしちゃってますが……)。
歌舞伎を観ていてこの髪形が出てくるとつい頭のほうに目が行ってしまうくらい、大好きな髪形なので、結っていただけてとても気分が良かったです。
結髪にあたって多大なご尽力をくださった美容師さんに、あらためて御礼を申し上げます。
そっかぁ~封印切ですね!印象に残っていたのは
尾っぽのようなのが、橋の毛と言うのねぇ
橋の毛の流れとこの笄の長さが、きっとバランスがいいのでしょうね~
もう~
今度お会いできる日がきたら、是非全身のお写真を拝見させてくださいね
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
素敵な日本髪ですね(ため息
私も一度で良いから、結ってみたいです~。
いやぁ~、素晴らしい日本髪「先笄」を拝見させていただきました。
詳しいご説明もあり、とてもよく分りました。
日本髪一つにもその意味や背景があるんだなぁと感心致しました。
綺麗に結い上げた藤娘様を拝見し新春から目福でございますよ。襟足もお綺麗ですぅ~
いろんな事を教えて頂ける藤娘さまのブログが今年も楽しみです
関西風の髪形にはこの「橋の毛」がかかったものが結構多いのですが、橋の毛があると華やかな感じになりますよね
舞妓さんの髪形を結っておられる美容師さんにやっていただいたので、鬢や髱の形も京風なのです~!
京風だと鬢も小さめなので、普通の着物にもあわせやすくて助かります
次にお目にかかる際には、ぜひぜひ全身写真も見てやってくださいまし~
毎年日本髪をお願いしている美容室の方によると、お正月に日本髪を結う人がだんだん増えてきているそうで、嬉しいです
七五三の時などに、お嬢さまとお母さまが揃って日本髪になさるケースもあるそうですよ
kazuraさまもぜひ~!
本年もどうぞよろしくお願いいたします
日本髪は、年齢や立場に応じてさまざまな髪形があり、本当に奥が深いですね~。
関東と関西とを比べてもさまざまな点で違いがあって、なかなか面白いです
ここ最近、お正月に日本髪を結う方がまた増えてきているそうで、嬉しいです
お嬢さまにもぜひぜひ!
本年もどうぞよろしくお願いいたします
しかもおえんさんと同じ型だとは・・・
じゃらじゃら~っていいながら山城屋さんによって行かなくちゃ~!!!ですね
ひたいの形が、こういうおぐしにあうかどうか決まると思うのですが、藤娘さまはそれがぴったりだからお似合いなんですね、きっと!
お芝居を観ても、なかなかそこまで気が回りませんでしたが「橋の毛」が出てきたら「さっこう」かな?と思ってみられるようになっていけたら
新しい世界を教えてくださってありがとうございます
いつもながら丁寧な記事も 嬉しい限りです。
有難うございます!!
歌舞伎では 衣装に目をやるのが やっとなので
これからは 髪型にも注目します。
普段は、オデコが広いのが恥ずかしいのですが
上方を舞台にした世話物狂言だと、お内儀さんなどの髪形が先笄になっていることが多いので、ぜひ注目してみてくださいまし
おえんさんをはじめ、芝居の鬘だと橋の毛がこんなふうに反ってないのですが、髷の部分の形などはよく似ているので、横から見るとわかりやすいかもしれません~。