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winny裁判 被告に罰金刑

2006年12月14日 04時30分44秒 | 政治・世相・スポーツ等
winny裁判の判決が出た。

結果は150万円の罰金刑。つまり有罪。いやあこれは微妙な量刑だね。懲役何年、執行猶予三年とかだと実質的になにも困ることないから、かといって実刑にするほどのことかということもあるから、罰金というのは随分苦しんだ結果だと思う。

さて、ネットでは「これでは包丁を作っただけで殺人の幇助になってしまうのか」といった論が展開されているが、そんなことはない。人を殺しやすく、足がつきづらい包丁を作って誰でも使えるようにしておいた場合と、料理に使うために作られた包丁との違いだ。包丁ならば人を殺せば証拠が残るけど、人を殺した場合に証拠の残らない包丁を作ったら、殺人のために作ったのだということになってしまうだろう。

ただ、問題なのは、不特定多数の中の任意の人物への幇助というのが成り立つかどうか。通常ならば、実際にwinnyで違法行為をする人と意思の疎通がなければならないのではないかと思うんだけど、利用目的が一致したうえでのDLが暗黙の疎通ということになるんだろうか。

さて、朝日のサイトには判決の要旨が載っているので、さらにかみ砕いて紹介したい。

有罪の理由は以下。

・winnyの公開は違法行為の実行手段そのものの提供であること
・それが匿名性など、実行行為そのものを容易たらしめていること
・技術そのものは中立だけど、違法行為に専ら使われることを想定して作っていて、またそのように使われていること

つまり、違法行為のために作られ、匿名性など違法行為を行いやすく便宜を図っているから、大元のP2P技術は合法でも、winnyを作って公開したことは違法行為の幇助となるという結論。

まあ、とくにおかしな部分はない。

で、これに対する被告のコメントは「新しい技術を開発しただけで違法になるのはおかしい」というのだけど、単にセンターサーバがいらないP2P技術を開発しただけじゃなくて、いちいち重くなるのに暗号化しちゃってるのがいけないと思うんだよね。
普通に使ってもとても便利なソフトで、たまたま違法行為にも使えるっていうふれこみならば、MXみたいにセキュリティもなにもなく、すぐに足がつくような構造にしておけばよかったんだ。

違法行為を行うかどうかはその人の自由かもしれないけど、違法行為をしたときにその追及から逃れやすい構造にあえてしたというのが、違法行為に使われることを前提としたとみなされても仕方がない。

実際、被告はMXの利用者の逮捕をうけて、匿名性の高いP2Pソフトの必要性を感じ、開発を宣言している。新たなP2P技術を開発するのに、違法行為をしたときに追及を逃れやすくする機能をつける必要性は全くない。実際、winnyで違法行為をして逮捕されたのは、winny自体の追跡ではなく、「これからファイルを流す」と宣言した掲示板の書き込みが発端である。利用者を特定できる技術があると報道されることもあるが、未だにwinnyだけで逮捕者は出てない(と思う)。

これでは、人を殺すと死体を処理してくれる包丁とか、速度違反をすると光学迷彩がかかって捕まらなくなる車を開発するようなものだ。現実的にいえば、オービスにナンバーが映らなくするような部品の販売などがそれにあたるだろう。

さらに報じられるところでは、被告自身は逮捕を恐れてか、アップロードを行わない、ダウンロード専用のwinnyを自分専用に作っていたそうだ。そのような状況においては、違法行為のために作ったのだと言われても仕方がない。後に「違法行為に使わないでね」と言ったところで、上島竜平が「押すなよ、押すなよ」というのと同じ事だろう。明らかに押せって意味だろw

匿名機能等、追跡が難しくなる機能を内包していなければ、フェアユースを前提としたソフトですと言えたのにね。その場合、違法行為をした人だけがどんどん捕まって行くだけなんだよね。

民事になっちゃうけど、たとえば掲示板に違法な書き込みがあったとして、そいつのIPが分かってればそいつに直接文句を言えるけど、IPを隠していたら、その隠してる管理者が責任を負うことになる。そうやって2chの管理者は他人のした違法行為の賠償金の支払いを命じられてるわけ(払ってないらしいけど)。

責任の所在は、故意に関わってくる。違法行為があったと認定されるには、その故意があってこそだ。違法行為に使われるのがわかってて作った、というのであればそれは行為としては幇助となろう。それが適用されるべきか否かというところには議論はあるだろうが。本当に違法行為に使われるつもりがなく、使われてたことを知らなかったのなら有罪じゃないと思うけど、そんなの一般的に考えてありえない。


ああ、あと弁護士がおかしい。この壇俊光という弁護士のやりかたがまずかったというのはあるだろうね。供述調書の全否定なんて普通の弁護士じゃリスク多すぎてやらせないことだと思うし、不特定多数への幇助の正否に絞るべきだったんじゃないかな。

ここでコメントをしているが、それによれば「高速道路で速度違反が行われていることを知っている国交大臣が逮捕されるのか」というが、これは全く事実をとらえていない。
国交大臣が、スピード違反をした車が逃げやすいようにオービスを撤去しているとか、光学迷彩を車に取り入れさせてるとかwそういう行動を取っているなら話は別だが、ちゃんと警察に便宜を図って違法車両を取り締まっているのだから、責任などはない。
さらには「著作権侵害を蔓延させる意図は無かった。そういう事実認定をしたら普通は無罪だと思うが、なぜか有罪になってしまった」というが、これは判決文の中にあった文章についての誤解である。

判決文によれば、被告は、ネット上で著作権侵害が蔓延するような社会を望んだわけでも、そのためのソフトであるとまではいえないというのであって、winnyが違法行為のために作られたものではないと認定したわけではない。
一般論として、著作権という考え自体をぶっ壊すためのものではなく、単にその場限りにタダで著作物を手に入れたい、そのために作ったと認定されただけなのだ。なにも違法行為のために作られたソフトではないと認定されたわけではない。この弁護士には読解力というものが欠けているのだろう。
どうやらこの壇俊光という弁護士は検索するとよそではひどいことをしてるようなので、興味のある方は調べてみるといいかもしれない。


まあ、結論とすれば、被告が違法行為のためにこのソフトを作ったのは事実だ。だったら多少の責任はある。無罪となったとしても十分社会的制裁を受けていると言えるだろうし、この裁判に意味はあった。有罪としても、支援金があるんだから大したことじゃないだろう。実刑だったらやり過ぎだと思うけど、正犯が執行猶予になってるのだからそれはないだろう。総じて、正義と言える判決だと思う。

匿名機能さえなかったら、合法前提のソフトだったと強弁できたはずだった。
違法行為を行った人物は処罰されるべきで、それを隠そうとしている人物もまた、同じく処罰されるべきだ。つまり、違法な書き込みをした人物のIPをひた隠しにする会社もまた、違法行為を行った者が取るべき責任のうち一部でも取る必要がある。これが日本という法治国家の常識なのである。

gooの人、見てますか?w

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