Entrance for Studies in Finance

航空機 ホンダ 三菱重工業 川崎重工業 IHI

以下の2015年11月の記事から3年余り。
ホンダジェット(米国拠点で製造 7人のり 月産4機ペース 2018年8月現在)は好調。小型ビジネスジェット(富裕層の保有率 米国18% 欧州8% 日本2% 日本は90機弱 米国は1万3000機 日本の対象富裕層4500人 米国は72000人 北米・欧州ではエアタクシーのサービス、ニーズがある。)で2017年通期(47機) 2018年上期(17機)と納入機数で米セスナを抑えて世界首位を続けた(2018年5月末 世界での運用機数86機)。販売台数を増やし2021-22年の黒字転換を目指している(2018年6月)。

これに対しリージョナルジェットを目指した三菱航空機。2009年9月以降、納入時期の延期を繰り返している(2018年10月までの納入延期は5回 延期理由は、素材変更 検査不備 部品の仕様決定難航 主翼の強度不足 配線の設計変更など)。親会社の三菱重工の重荷になっている。最近ではカナダの小型旅客機メーカーボンバルディアが機密流用を行ったとして三菱航空機を米シアトルで提訴(2018年10月)。三菱重工は債務超過状態(2018年3月末で1100億円)にある三菱航空機に単独で2200億円の金融支援(1700億円の増資引き受けと500億円の債権放棄)を行って債務超過状態を解消させた。

リージョナルジェットの世界では、カナダのボンバルディア、ブラジルのエンブラエルが2強。三菱はこの2強を追う形だった。大型機では、米ボーイングと欧州エアバスが激突していた。ところがLCCの台頭により、小型機にシフトするようになり、2社とも小型機に戦略を移すようになった。エアバスはカナダのボンバルディアの事業を買収して、米国での小型機生産に乗り出す構え。ボーイングは2019年中にもブラジルのエンブラエルを傘下に収める構え。三菱は、米ボーイングとアフターサービスで提携していることが強みだったが、どこにも納入実績がないまま、ボーイングとの関係も微妙になっている。しかしその原因は、三菱の側の開発・納入の遅延である。すでに開発費は6000億円以上。果たして成果は出るのだろうか(2019年1月7日追記)。

航空機の生産に関わる企業の浮上(2015/11/07) 

 航空機の需要が今後20年間で倍になるということが2012年―2013年といわれ続けている。新興国の格安航空の台頭、旅客貨物など航空輸送の伸びが見込まれている。この航空機の生産に関連するメーカーが注目されている。

国内では三菱とホンダがそれぞれ自社ジェット機の開発を続け、ホンダはすでに顧客納入を開始している。

 2015年4月23日にホンダはビジネスジェット ホンダジェットを国内初公開した(二輪車メーカーとして1948年創業 1963年4輪車に乗り出す その4輪車はエアバックのタカタ問題 フィットのソフトウェア問題という2つのリコール問題、を抱え 2012年9月に掲げた2016年度に世界販売台数600万台という経営目標を事実上棚上げ 経営戦略の転換に追い込まれている タカタ問題は死傷事故につながるが、事態は深刻と考えられる。4輪車のリコール問題、事故情報の報告漏れ(2000年成立トレッド法により事故情報をNHTSAに定期的に報告する早期警戒報告制度を2003年から14年秋まで10年以上にわたり怠った法規違反)問題で苦境に立つホンダにとって明るい話題となった。
 7人乗り 航続距離2185km 時速778km 価格450万ドル。
 エンジン(GEと提携 共同開発 米国で2014年11月量産開始 年間500基)からの一貫生産が特徴。飛行機の開発開始は1986年。2015年より顧客への納入を開始している。

 三菱では1965年に納入開始したYS11(1962年初飛行 プロペラ型エンジン旅客機)以来50年ぶりの国産旅客機MRJの初飛行を2015年11月実現。三菱重工業傘下三菱航空機が研究開発の主体。国産小型ジェット機MRJ(92席 47億円 航続距離3380km エンジンは米プラット&ホイットニー社製次世代エンジン 部品装置などの国産比率は3割とされる。部品点数95万点、自動車の30-40倍。多数の内外メーカーの協力がなければ飛行機生産は成り立たない。機体公開2014年10月 2008年開発開始 当初2013年10月ー12月に飛行予定 全日本空輸、日本航空などが導入予定) MRJの開発費用は1500億円を超える:2013年3月までに1800億円超える投資済で今後も投資必要。部品数は100万近い巨大プロジェクトである。そのため2007年に販売活動を開始してから(事業化決定2008年3月)3度にわたり初号機引き渡し時期の延期をした。初飛行はたびたびの延期の末に2015年11月実現した(納入開始予定2017年4-6月)。競合はエンブラエル(ブラジル)のEジェット。機体の3割が日本製の部品とのこと。飛行機制御器でナブテスコ。車輪装置で住友精密工業など。政策投資銀行では2015年5月の法改正で特定投資業務と呼ばれる企業の競争力強化などを目的とする資金供給制度を整備したが、この枠組みで1000億円超を投資する方針。

川崎重工業 三井造船との統合の破たん 社長解任事件
 ボーイング向けに航空機の胴体の一部を生産している川崎重工業(純国産哨戒機P1を量産)でも777そして787向けの受注、さらにはそれぞれの後継機向けの受注も見えるなど、航空宇宙部門が収益の柱になっている(2013年4月から6月 三井造船との統合をめぐって社長が解任される異例の事件が起きている(三井は国内造船第4位 川崎との統合で第3位に浮上する構想であった) 造船について川崎重工は中国で現地海運大手と合弁で造船所の運営を軌道に乗せていた。他方 三井造船は海洋資源開発の分野で実績があった。ところがこの問題で川崎で社長解任劇が生じ、結果として両社で社長が交代する異例の展開となった。

背景には造船業界の構造がある。長期のトレンドでは荷動きの増加は過去10年以上継続している。しかし船腹量が過剰に供給され続けたために、バラ積み船の貨物運賃は安値が続く。また造船能力の過剰も解消されていない。実需の2倍の造船能力に達しているとされる。他方三井造船では2014年1月に昭和飛行機工業を買収。これにより発生した負ののれんを含めて、最終損益黒字300億円台を達成している (13年3月期は82億円の赤字)。2014年3月期に過去最高の受注高(1兆1000億円規模)を達成した。

川崎重工業における経営方針の転換(事業部門ごとの収益管理の徹底)

川崎重工業では航空機 鉄道車両 二輪車を成長の柱とする方針を明示。前社長の方針を正面から否定。川崎重工業では、規模拡大で悪化していた財務数値の改善と収益管理の徹底、構造改革の推進をその後示している。まずDEレシオ2014年3月末1.2倍から1.1倍に引き下げる(規模拡大が行き過ぎ、三菱重工業に比べて財務改善で見劣り)。配当性向は30%目安を維持。 EBITを投下資本で割ってROICを算出 連結ROICを2013年3月期6.1%から2016年3月期11%に引き上げるのが目標)。

川崎重工 ロールスロイスと航空機エンジンを開発 川重は中核の制御装置を開発 オープンローター方式で燃費を大きく改善する

エアバス社ではA320の後継機を2030年に航空会社に納入予定 現在10%の日本製部品の比率を高める方針
  背景に燃費重視 
ボーイング787 中型機 
787では日本勢担当比率は35%
   2013/01 発煙トラブル 一時運航停止後2013/05 運航・納入再開
  三菱重工 Boeing 787の主翼
  川重   Boeing 787の前部胴体
  IHI    Boeing 787のエンジン部品
2013/06 GEと航空エンジン開発で合意報道 
Research: Boeing 787問題(2013年5月)

次世代大型機777X 開発中(2019年納入目標 2020年納入開始 400席の大型機 日本勢が21%)
  富士重工業(中央翼など) 三菱重工業(機体後部胴体) 川崎重工業
競合機 エアバスA350(エンジンはロールスロイスが独占供給 2014年初号機納入へ)
  2013/10 日本航空がエアバス導入決める

三菱重工業のポートフォリオ経営
 しかし川崎の収益管理の徹底や構造改革は、三菱重工業の後追いに見える。三菱重工業は、原子力発電事業や航空機事業などリスクの高い事業を進めていることで知られる。川崎に先んじて2012年度に事業格付け制度を導入。64の事業ユニットを収益性や事業性共通の尺度で測り、収益管理を徹底するようにした。これにより撤退(事業譲渡含む 商船建造から撤退)とともに成長分野への経営資源の集中(設備投資のほか買収など)も容易になった。航空機のほか衛星打ち上げ事業など宇宙開発事業も知られている(H2Aに続き基幹ロケットH3の開発 2020年度打ち上げ予定 この分野で強いのはロシアのプロトン 米ボーイングのデルタ、欧州アリアンスペースのアリアンなど 米ベンチャースペースXの2013年の低コストでの参入が話題。2014年9月に米NASAは2017年初飛行を目指す有人宇宙船の開発の委託先としてボーイングとともにこのスペースXを選定した。スペースXは米電気自動車ベンチャーのテスラのCEOイーロンマスク氏が2002年に創業した)。国相手の防衛宇宙事業は営業利益率6%で安定。

 三菱が構造改革に乗り出したのは2012年。事業別採算性の導入。成長分野に経営資源を集中。発電プラント事業(ガスタービンや石炭火力で強い)が伸びている(14年2月 日立と火力設備事業統合を完了 三菱日立パワーシステムズ)。ボーイング向けの胴体主翼生産が拡大。(このほか 製鉄機械事業で日立と事業統合 さらにシーメンスと合弁会社設立)そしてシェールガス革命を背景にしたコンプレッサー、LNG船受注増加。円安も寄与して2015年3月期連結営業利益2400億円超えて18年ぶりに過去最高を更新。2014年3月期も営業利益は上振れ。17年ぶりの最高益更新だった。2014年3月期2015年3月期と2期連続最高益を達成した。火力発電システム(米GE 独シーメンスと競合)と製鉄機械の2つの事業分野で世界top目指す。 2014年シーメンスと組んで仏アルストム買収目指す(買収は失敗し米GEが買収を実現)

売上高営業利益率の改善 10年3月期2.2%⇒14年3月期6.2%
自己資本利益率 1-2%⇒14年3月期11%(2015年度からの3ケ年計画では売上高5兆円:現在は3兆円規模 自己資本利益率10-12%目指す) 売上高5兆円(今は3兆円) 18年3月末で株主資本2兆円(15年3月末1兆6000億) ROE10%以上(同6.5%) 連結配当性向は30%プラスマイナス5% 自社株買いは否定 など。売上高5兆円の高収益企業を目指すが財務的方針は比較的保守的。
 市場は三菱重工業の高効率経営を評価したとされる。三菱が行っていることは事業部門ごとの収益管理の徹底にある。ポートフォリオ経営と呼ばれる戦略的事業評価制度。全事業を57の事業ユニットに集約。成長性や投下資本利益率を評価。CFを生まない事業は縮小撤退というもの。成長性の高い分野に経営資源を集中するため事業分野を4分野に集約

IHI 航空機エンジンで伸びる 資金効率改善
 またボーイングとエアバス向けにエンジン部品を供給しているIHIでは、民間航空機向けエンジン部品の販売が伸びている。過去に就航した機体向けの交換用部品の販売も堅調。IHIは不振の造船部門を連結から切り離した。

 IHIは造船部門をJFEHと経営統合し(ジャパンマリンユナイテッド誕生2013年1月)2014年3月期から連結対象から外した(なお国内造船最大手は今治造船 第2位がこのジャパンマリンユナイテッド)。航空宇宙部門(ボーイングやエアバスにエンジンを供給は好調。同様の航空宇宙部門好調の効果は、川崎重工業や三菱重工業でも指摘される。従来これらの重機械メーカーの業績は造船事業が引っ張っていた。ところが他方 造船はリーマンショックまえの増産投資(建造能力の過剰)、船価の低迷の影響で厳しい。大手は付加価値が高いLNG船や海洋資源開発関連設備にシフトしているがそれでも厳しいことに変わりはない。航空機エンジンと自動車用ターボエンジンで伸びる。プラント設備は競合激しく低収益。資金効率の改善で負債を抑える方針。仕入れから代金回収までを短くすることで資金を捻出できる。2014年9月 平均日数が136日でGEの2倍以上。これを7日(約2%)短縮すると200億円の捻出効果がある

   無人機(ドローン、農業用ヘリ、軍用ジェット機など 内部気圧維持 酸素維持不要 航空時間距離伸ばしやすい パイロット不足にも対応) ドローン(最大手は中国のDJI 玩具主体が仏パロット コマツでは上空からの工事現場撮影3次元データ化サービス開始 富士通では橋梁点検での接写技術開発中 生活物資輸送では世界各国企業が実用化に取り組む) 無人ジェット機(YSEC 明和工業など)

 衛星(三菱電機 NEC IHI 宇宙航空研究開発機構JAXA) 海外企業(米スペースシステムズロラール 仏ロラール) 小型衛星(アクセルスペース:東大発ベンチャー キャノン電子)

2015/11/07 original   2019/01/07 冒頭部分追記

Area Studies ビジネスモデル 経営戦略 

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