Entrance for Studies in Finance

銀行の投融資におけるモラルダウン

銀行の金利が下がり設備投資額が増えたというのが公式発表(金融機関の収益を圧迫 2018年6月頃 新規貸し出し0.6%前後まで低下 異次元緩和前の2012年末の1.1%から低下 貸出競争で契約も取れない 借換え時に低い金利で融資契約奪われる 財務体質がぜい弱でも高い金利がとれる企業への融資が増える)

銀行の個人向け融資。アパートローンとカードローンの急拡大が問題視されている。さらにスルガ銀行のシェアハウスローンは、銀行という組織を挙げて不正にローンを拡大した疑いが強い。背景には企業向け融資の拡大がなお低調で、利回りが低い中、これらのローンの利回りが高く、銀行の収益改善に有効だった側面が指摘されている。アパートローンやシェアハウスローンについては、そもそも長期の需要見通しに即しているか疑問の声があり、最終的には銀行の債権として不良化するのではないかとされている。カードローンについては、系列のノンバンクに不良債権を回す仕組みのため、ローンを行うメガバンクには傷がつかないが、これはそもそも消費者金融規制における総量規制(借入人の年収の3分の1以内)の尻抜け行為ではないかという指摘がある。結果として、安易な貸出で過大な債務を負った個人の破産や系列ノンバンンクの不良債権拡大が生ずる恐れがある。背景には日本銀行が行っている超低金利政策(異次元金融緩和政策)のため金融機関が利益確保に苦しんでいる問題がある。この超低金利政策が、経営上の規律をダウン(モラルダウン)させているのである。地銀が金利上昇リスクが高い外債運用に飛びつくのも、同じであり、日銀の政策の結果、銀行が投融資でモラルを低下させているといえなくない。

スルガ銀行(創業家の岡野一族が支配。一族の実態のない親族企業に融資。もともと不動産融資 アパートローンなど個人向け融資が9割という特異な銀行(通常の銀行は融資に占める個人は3割程度)このような特異なビジネスモデルにはほかの銀行と異なったより厳しいリスク管理が必要なのではないか 預金総額約4兆円強 融資総額約3兆2000億円)のシェアハウスローン(横浜東口 渋谷 二子玉川などの支店が関与) 販売業者に年収1000万以上 預金残高700万以上といった社外秘の審査基準を伝達 借入希望者の年収(シェアハウスの所有者の所得、年収、資産を証明する書類を偽造 エビデンス=借入希望者の年収・金融資産情報の偽造 レントロール=物件の入居率・家賃などの偽装 満室時想定賃料の7割が融資上限・物件価格の9割はが融資上限 逆算して想定賃料・物件価格を高く計算 行員自身が偽装に加担) 預金額 売買契約 預金通帳 入出金明細の金額を改ざんして融資を実行していた。カードローンで融資した資金を預金させる手法もとられた 個人は法人と違い借換えをためらわず3-4%のアパートローンから客は借り換えで逃げ出し、融資残高を維持するために新規案件に傾斜することになった。営業至上主義 営業の行員には前年実績値の1.5倍=スチレッチ目標 毎月1億円の有担保ローン 月10億円のノルマ課せられた例も ノルマ ビルからとびおりろ 家族を皆殺しなどのパワハラ 暴力 強迫。 販売業者側が偽造したとされるが、銀行側も偽造を知りながら融資を繰り返していた。各店の支店長以下の職員のほか、本店の役職員も絡んだ組織的な犯罪の疑いが強い。審査部には営業部上がりを配置し、形式主義的審査で不適切融資を黙認放置。異を唱える人員は配置替え。問題に関与した役職員がすでに退職あるいは解雇した疑いもある。シェアハウス融資の総額は2035億円(個人向け融資の2割 土地建物の価値は)。借り手は1258人(多くは1億以上を借り入れる)。シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社のスマートデイズが東京地裁に民事再生法適用を申請して受理される(2018年4月9日 3月末の負債総額は約60億円 入居者を確保できず2018年1月から賃借料支払止まる)。運営会社としてほかにサクトインベストメントパートナーズ、ゴールデンゲインなどがあり、ゴールドゲインも5月23日に東京地裁で破産開始手続気に入り破綻した。スルガ銀行は実質与信費用(貸倒引当金)を45億円から436億円に拡大。2018年3月の連結純利益予想430億円は210億円に縮小。
後述するアパートローンとともに実需を離れた過大なローンの供給は結果として、不動産不況を強める結果になる恐れも強い。

これだけでたらめな事例がでても 遠藤金融庁長官(森長官の後任)は定期検査への復帰を否定している。森信親金融行政の失敗を示す事例ではないか?

アパートローン

2016年末残高が22兆円強 6割強が地銀分 地方でのアパートローン拡大は人口減少と一致しない動き。ニーズがないため、極端にはフリーレントで借り主募集する動きも。2015年の相続税課税強化が影響。節税目的(債務により財産額圧縮)でアパート建設。相続税対策としてのアパートローン。
背景:金融庁がアパートローン拡大に警戒姿勢 銀行は建築業者に顧客を紹介し手数料(建築請負金額の0.5-3%程度)を得ていた
ノンリコース型:責任財産限定型 返済の原資とする特定の財産を限定したローン アパートローンの場合は当該のアパートとその敷地に限定する このような限定の代わりに金利は一般のローンより高め

アパートやマンションなど投資用不動産をめぐる融資は、利回りが高いため拡大。不動産業者側は投資家とサブリース(転貸:一括借り上げ家賃保証制度)契約を結ぶことで、家賃保証、空き室保証をして投資家を安心させようとする。ただし、家賃保証には相場の下落により減額の可能性が、空き室保証についても免責期間が設定されている。金融機関にすると案件の多くは不動産業者側の紹介なので、支店の業績を低コストで上げる手段になる。半面、業者側が数値を改ざんするリスクがある。金融機関の審査上の工夫としては、投資家の自己資金の要件を取得価格の2割以上とする、家賃の2割下落した場合、金利が3%台に上昇した場合のシミュレーションをする、建築費の妥当性を検証する、現地調査で周辺相場・空き室状況を確認する、エリアを限定する、担保評価を保守的にする。書類改ざんを防ぐため通帳、源泉徴収票など原本確認を徹底する。営業店長の決済権限を制限するか本店決済とする。また融資当初に仮に問題がなくても環境変化の問題がある。物件取得時点で土地価格、建物価格、入居者の見通しが適正かどうか。賃貸料の下落、空き室率の上昇 金利の急上昇 大規模修繕の必要の発生など。スルガ銀行のシェアハウスローンの場合は建設会社が多額のキックバックを不動産会社に払う、不動産会社は物件を高額で取得する、スルガ銀行は投資家に投資資金を融資し投資家は割高な物件を割高な金利で入手する、不動産会社は入手したキックバックでサブリースの赤字を補填し、販売代理店にキックバックもしていた。大変奇妙だが、キックバックは投資家も含め関係者で一緒に食べており、不動産会社が自分だけもうけるという構造ではない。だからこそ、この「バブル」は続いたのだろう。ただニーズがないところに物件の供給を続ければ、空き室率の上昇でいつか限界がくる。

投資家が高額物件を購入したのは、不動産価値評価法の一つである収益還元法が悪用されたと伝えられている(日経2018年10月11日)。つまり賃料とか入居率を実際より高く仮定することで、高い期待利回り、高額の不動産評価を演出したとされる。収益還元法で出される数値は、多くの仮定にもとづいており、実際の取引価値とは別個のものと考えるべきだろう。

カードローン 地銀で縮小の動き(2017年9月)これまでの審査厳格化から踏み出す 無担保で使い道が自由であるため拡大(金利は10%超)

2017年6月末で残高5兆6793億円 前年同月比8.6%増 消費者金融業者が年収の3分の1までという総量規制がある(2006年末成立の改正貸金業法による)のに野放し(利用者の8割は3分の1超の制限を超えている実態) 銀行のカードローンが消費者金融(融資残高は2017年3月末で2兆7000億円)の1.5倍規模に増加(全銀協の発表では2017年8月末で加盟116行の残高は4兆3715億円 大手11行では2兆4237億円で全体の55%)。過剰融資の可能性が指摘されている。

年収の3分の1あるいは2分の1に融資額上限を制限する 年収証明不要の場合は融資上限引き下げ。銀行が貸して、焦げ付いたときはノンバンクに損失リスクを移す。役割分担して銀行本体を傷つけない仕方をしていることが問題になった。

三菱東京UFJ→アコム  三井住友→SMBCコンシューマーファイナンス

みずほ→オリエントコーポレーション

背景:金融庁が総量規制を示唆(2017年8月)

融資枠(コミライン) 審査は事実上締結時のみ。財務状況が良好な企業に対象を限定することでリスクを調整。

企業(財務状況の良好な企業が対象 金利を長期固定できるメリット) 銀行とのお付き合い いざいうときの2017年7月で契約件数1万1000社あまり 利用は6000社。契約額は約30兆円。利用額5兆円程度。将来の保険。企業の銀行融資需要は依然弱い、伸びは年率2-3%。民間の事業会社ではグループ会社への親子融資が拡大。2017年3月末で55兆6241億円 この4年で倍増。

外債運用
運用難から外債投資に走る銀行が多い。金融庁は海外金利急騰を懸念していたが実際に米金利の上昇で2018年3月期決算では外債投資で損失を被る銀行が続出した。

2017/10/24(2018/10/24)

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