骨董と偶像

好きなもの&気になるものリスト

『スターウォーズ』四半世紀ぶり

2004-10-31 00:03:42 | 映画
第一作(シリーズ的にはいつの間にかエピソード4)を日本初公開時に新宿プラザ劇場で観た。その劇場公開版をTVで一度観た以来の鑑賞。
その後の日本語版や特別版やレーザーディスクやDVDにも手を出さなかったので、「アレ。こんなところにジャバが出てきたっけ」と驚いたり、「オッ、ボバ・フェットもいるわ」、クリーチャーがやたら増えたな、とか。ハン・ソロのミレニアム・ファルコンは斜め上から太陽をかすめたと思ったが、真上から降下してくるとか。

そういや、テレビ初公開時のレイア姫の声は大場久美子だったっけ。ひどかった(笑)。
レイア姫のキャリー・フィッシャーも新三部作のナタリー・ポートマンには負けるぞと思いつつ、今回観たかぎりではさほどひどくもなかったんだな、と納得しつつ「レイア姫もCGでブラッシュアップ(美容整形?)されているんだろうか」と疑心暗鬼にかられた。

いっそのこと、今回の地上波放送はアフレコでお遊びしたらよかったのでは?
たとえば「スターウォーズ―家庭内戦争―」

レイア「パパ。またあたしたちの邪魔をしたわね!」(またあなたね、ダース・ヴェーダー)
ダース「悪い子だ。レイア、言うことを聞きなさい」(姫。反乱軍の基地はどこですか)

多重放送で「お笑いアドリブ・モード」をお楽しみいただけます、とか。ついでに「奥様は魔女」のように観客の笑い声を挿入してもいい。

ちなみに二作目「エピソード5 帝国の逆襲」、三作目「エピソード6 ジェダイの復讐」(←公開時はこうだった。今は「ジェダイは復讐なんかしないよ」という制作者の意向で「ジェダイの帰還」に変更されている)は劇場でしか観ていない。が、やたら作品世界が構築・規定された「ファントム・メナス」(劇場では未見。ビデオのみで鑑賞)を観た後、素朴な疑問が。

アナキン・スカイウォーカーを訓練する際、成長しすぎているとジェダイ評議会が難色を示したが、ルークの場合はもう大学進学の年頃。あ、評議会ないからノープロブレムなのか。
このあたりのフォース・エクササイズにおける年齢的限界というものはあるのだろうか。

小栗虫太郎「方子と末起」

2004-10-30 15:31:21 | 
大野加奈子@現代視覚文化研究会いわく、「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!」

ならば、逆もまた真なり、「レズが嫌いな男子なんかいません!?」

「お姉さま、慕わしい、うつくしいお姉さま。末起は、お姉さまの永遠に、お腰元ですわ」
「末起ちゃん、御免なさいね。あたくしの、可愛くって可愛くって嚥みこんでしまいたいあなたに、あんなことをさせて・・・・・・」

・・・こんな書簡体小説に魅かれるあなたであれば、小栗虫太郎のこの掌編を気に入るのではないか、と思う。分量にして20ページちょっとなので、立ち読みできてしまう。しかし、本当に気に入った人間ならば、この掌編を『小栗虫太郎集』というパッケージごと、わが手の所有に帰したいと思うはずだ。ちなみに『小栗虫太郎集』は本来、怪奇探偵小説名作選のラインナップには入れる予定はなかったらしいが、社会思想社倒産によってテクストの入手が困難な状況になることを危惧した編者日下三蔵によって世に出ることになった。

ふたりが出会ったのは、おきまりの「女学校」。方子が四年生、末起が二年生の時だった。方子はその後、療養所生活に(もちろん高原のサナトリウムに違いない)入り、離れ離れになって手紙を交換する境遇となった。そこにおこった末起の母おゆうの殺害事件。今度は末起の命が危ないとする方子は手紙で危険を知らせるのだが・・・・・・

 それに何故、女が女を愛してはいけないというのだろうか。此処でふたりの少女が、永遠の童貞を誓うのに・・・・・・。
 方子は、口をとがらせ、うっとりと抗議を呟いた。腹んばいの、したからは土壌の息吹きが、起伏が、末起の胸のように乳首に触れる。回春も近い。方子は自分の呼吸にむっと獣臭さを感じた。(ちくま文庫版『小栗虫太郎集6』所収「方子と末起」)

「自分の呼吸にむっと獣臭さを感じた」という部分がたまらなくエロティックである。


怪奇探偵小説名作選 6 小栗虫太郎集(ちくま文庫)
日下三蔵編

出版社 筑摩書房
発売日 2003.05
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  4480038337
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アルフォンス・ミュシャ フィギュアミュージアム

2004-10-29 21:05:49 | アイテム
食玩はときどき買ってしまう。
コンプリートはせず、つまみ買いにとどめている。やたら購入している知人からはダブリが袋ごと送られてきたりするので、統一感がカケラもないコレクションである。

今回は以前から期待していた「アルフォンス・ミュシャ フィギュアミュージアム」(タカラ)だったが、くだくだ述べるよりもその出来を画像でご覧いただきたい。
単に塗りがへたくそなやつが当たってしまったのか、それとも平均してこうなのか。だとすれば、今どきカプセルフィギュアでもこんなものは出まい。

左隣の諸葛孔明(北陸製菓。海洋堂フィギュアコレクション「三国志」第壱集)と較べて欲しい。同じような値段でこの違いである。50ミリていどのフィギュアで高度な造形を要求するなかれ、と言う意見もあるかもしれないが、三国志の武将たちはどれも素晴しい出来。感動モノである。
孔明なんて川本喜八郎氏の原型を彷彿とさせるのに、ミュシャのほうは過剰包装の上にこのざまだ。海洋堂だから「はずれ」はないと思ったのに。
ミュシャ財団はこんなものを許可したのか。フィギュア以上にミュシャのファンだからよけいショックである。

しかも「三国志」のほうにはライチゼリー(けっこう美味)、「ミュシャ」はガム。菓子でも負けているではないか。このあたり、おもちゃ屋とお菓子メーカーの差が出たか。特に北陸製菓は「アリスのティーパーティ」で経験値は明らかに上!。

ミュシャ独特の輪郭が出ないまでも、むしろ、彩色より象牙バージョンのほうがよいのではないかと思う。すごいのは限定1000個で本物のダイヤが埋め込まれたフィギュアが入っていること。同じものが抽選で300名にもらえるらしい。埋め込まれたダイヤが気の毒な気がするが・・・・・・

タカラ「アルフォンス・ミュシャ・ミュージアム」

来年、東京にもミュシャ展がくるって。そっちを観にいったほうがいい。会場でこの食玩を売ってくれるなよ(笑)。

北陸製菓「三国志フィギュアコレクション第壱集」

さっさと曹操を出すように。

『デビルマン』カイム=アッシー君?

2004-10-29 00:26:13 | 
永井豪の傑作、というよりはコミック史上屈指の名作『デビルマン』。今さら何をどう語ろうと新鮮味はないのだが、何度でも語りたい思わせることこそが名作の名作たるゆえん。
映画『デビルマン』はかなしくなるような出来だと漏れ聞いたが、これから語るのは映画には登場しなかったデーモン・カイムのこと。

カイムとは、妖鳥シレーヌに片思いの四足歩行デーモン。容姿が性格を形成すると考えると、犀のような動物。
そしてシレーヌは、作品『デビルマン』のもうひとつの顔といっても差し支えあるまい。デビルマンをゴジラにたとえれば、シレーヌはモスラ(いやキングギドラか?)。デビルマンをウルトラマンにたとえれば、シレーヌはバルタン星人。人類の敵デーモン一族の中でもきわだった印象を残している。最初の単行本(講談社5冊本)だと第2巻がまるまるシレーヌ編であったために、これだけでも独立の作品として読むことも可能だった。その後、作者が加筆していき、単行本の構成もくずれていってしまったが、「かんりにん」はもちろん最初の単行本の形が好きだ。
デビルマン(アモン)とシレーヌとカイムの人間臭い三角関係をわざわざ巻頭カラーでもってくる必要はないと思う。すでにして、二足歩行の二人の間に割って入る余地はないぞよ、カイム。

アモン、シレーヌ、カイムはクラスでもスポーツ万能の男子、美人と評判の女生徒、マジメだけど目立たない男子という図式になる。しかし、女生徒は男子とスポーツで対決。敗れそうになった時、サッと助けにあらわれるのが地味でまじめなカイムなのだ。
で、やることといったら「献体」。自分の首を飛ばして、胴体を女生徒に差し出し、合体!。

泣きながらデビルマンと戦うシレーヌは・・・「血まみれでも美しい」とカイムが言わずとも、やっぱり読んでいるとだんだんシレーヌのほうに肩入れしてしまうのだ。不思議。だから、報われない愛に生きるカイムの姿も共感を呼ぶのかも。しかし、「かんりにん」はこのカイムを見ると、一頃は巷におった「アッシー君」を想起してしまうのである。

「アッシー君」というのは「かんりにん」がもっとも蔑む人種のひとつである。彼らは女の子が働いているか、勉強しているか、あるいは友達と楽しいひとときを過ごしている間中、ずっと車の中で待ち続けているのである。
デビルマンとの戦いが敗色濃くなり、「ゼノンさまー、お力をッ」と哀願するシレーヌの前に、ほい来たと現れ、「おれの体を使え」と言うカイムは、「いやーん、終電なくなりそう」「いやーん、くたびれたー」という女性のところへ「おれの車に乗れ」って、やってくる男そのもの。
そう、くるま体形のカイムはシレーヌの「アッシー君」だったのだ。
ちなみにラストでも死んだシレーヌは明と了から「美しい」とか「すばらしい敵だ」とか、賞賛されるけど、カイムは銅像の台座扱い。「アッシー君」の行く末というのはこの程度のものなのだろう。

女性が楽しく遊んでたり、いっしょうけんめい勉強して、自分の時間を活用・謳歌している間中、車の中でひとりボーッと待っているくらいなら、車外に出てワックスがけでもしてたほうがよいと思うのだが(違うって)。

新潟中越地震クリック募金

2004-10-28 19:13:28 | Weblog
街頭の赤い羽根共同募金さえ、シャイな「かんりにん」にはなかなか・・・・・・
とりあえず、こういうクリック募金(1クリック1円)でもって、被災地の方々へのお役にたてばと思いまして。下のようなサイト様の活動を知りまして。
サイト内「平成16年新潟県中越地震に義援金の募金」バナーをクリックするだけです。

募金パーク

あ、あとは原稿料入ったら勇気をふるいおこして義援金送りますッ

『Mishima - A Life in Four Chapters』

2004-10-28 00:15:53 | 映画
ポール・シュレーダー監督、1985年作品(日本未公開)。

「かんりにん」はレンタルビデオ店であちらのビデオソフトを見つけて借りた。そして、ダビングした。ちっぽけな店がよくこんなもの、置いたものだと思う。

昭和四十五年(一九七〇)十一月二十五日、作家・三島由紀夫が東京の市谷の陸上自衛隊東部方面総監部の総監室において割腹自刃した。その一日を三島が自邸を出て割腹するまでを描いたハリウッド映画。
緒形の演技(もっとも三島本人にやらせてみたかったけど)は迫真、だが、こういった映画を劇場で繰り返し上映され、ソフトとして消費されることを考えれば、公開に反対した遺族の気持ちはわからないでもない。
だが、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が遺族の反対にあってもアニメ化・公開されてしまうのにくらべたら、三島未亡人の意向だけで、劇場公開・ビデオ発売に待ったがかけられるものだろうか。
(ちなみに三島割腹当時の防衛庁長官であり、この映画が完成した時期に首相だった人物の意向?のほうがよっぽど・・・・・・笑)

内容は決して三島自身を貶めたり、茶化しているようなところはない。ドキュメンタリータッチの本編に幻想的な三島作品の世界がからむ、外人の目を通して見たちょっと奇妙な日本の一日。

主なキャスティング

緒形拳(三島由紀夫)
塩野谷正幸(森田必勝)
織本順吉(益田東部方面総監)
利重剛(少年時代の三島)
坂東八十助(溝口)
萬田久子(マリコ)

ほか李麗仙、沢田研二、永島敏行、三上博史、加藤治子など。

劇中に三島作品の1シーンが挿入されていたり、なかなか魅せる。サブタイトルの「A Life in Four Chapters」がそれを示しており、『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』『仮面の告白』という三島の代表作を取り上げているのだ。
鑑賞するにはREGIONの問題があるが、ソフトやREGION FREEのハードウェアを使うなど、その点をクリアできれば、DVDという手もある。

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先頃、全集にCDが入るという初物で話題をまいた「三島由紀夫全集」だが、自分の全集には何から何まで入れてくれと言ってたらしい彼がこの映画を見れば、「『憂国』もこれも入れてくれ」と言ったかも?。

サントラもあるとは驚き。

惣治、泰淳、零士の「十三妹」

2004-10-27 01:41:53 | 
1983年、初の文庫版雑誌というふれこみで角川書店から「月刊小説王」が、講談社から「IN POCKET」が発売された。レトロ調で冒険小説を中心とした「月刊小説王」に対して、ポップでモダンな「IN POCKET」は好対照だったが、現在まで残っているのは後者のみである。

今はなき「月刊小説王」の創刊号がこれ(写真参照)。表紙をかざっているのは山川惣治が描く侠女十三妹(シーサンメイ)。山川惣治はこの少し前に角川からアニメ「少年ケニア」が映画化されているし、同社が積極的に文庫版で絵小説を売り出していた。
「十三妹」は山川の新作だったのである。「月刊小説王」がポシャった後、加筆されて単行本にもなった。

十三妹モノというと、「かんりにん」はつい手が出てしまうのだが、その根源は『聊斎志異』の挿話「侠女」、さらにそれをもとにした香港映画にある。十三妹モノの代表は中国の古典『児女英雄伝』であるし、また武田泰淳の『十三妹』(これは先頃中公文庫から再登場。しかも鶴田謙二の挿絵入り♪)、同じく「女賊の哲学」(だったかな)がある。どうも侠女というと、極道の妻よりもチャイニーズヒロインのほうが好みである。
松本零士の『児女英雄伝』にはガッカリしたけど。やっぱり、あなたには歴史モノは無理だよ。それに書き出したらきちんと完結させなさいって。
武田泰淳も後半の中途半端なところに目をつぶれば、かなり楽しめる。ストーリーは「児女英雄伝」の後日譚にあたるのだろうか。スーパーヒロイン十三妹を夫に持った安公子。これは「近代文学」同人たちのミューズであった百合子さんと彼女を妻にした泰淳の投影なのか?

で、今のところいちばん面白いのは山川惣治の絵小説「十三妹」であるような気がする。
原典ともいえる『児女英雄伝』からだいぶはずれてしまっているけど、とにかく、チャーミング。乱闘中にズボン(一応、男装している)を脱がされても戦い続け、戦い終わったあとに「あー、ズボンなしだったね」とアッケラカンとしている。
武器は銀の弾弓(弦が鋼なので誰も弓にひっかけることができない)、および黄金づくりの太刀(十三妹の父が倭寇から入手したもの)。でも、なんといっても最大の武器は白い下半身なのだった。

十三妹(中公文庫)
武田泰淳著
出版社 中央公論新社
発売日 2002.05
価格  ¥ 820(¥ 781)
ISBN  4122040205
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十三妹(シイサンメイ)中公文庫


武田の「女賊の哲学」は彼の全集か、あるいは「現代日本文学大系81」などに収録。

『百年の孤独』

2004-10-25 23:08:45 | 
あれほど文学の閉塞状況にノボ・ムンドを提供したラテンアメリカ文学であるが、今では「百年の孤独」などと言っても焼酎の銘柄という答えがかえってくるケースも一笑にふすことはできないのではあるまいか。

G・ガルシア=マルケスの年代記風の長編小説は、ノーベル文学賞という勲章をひっさげてあらわれた。上のカバーは改訳前のもの。膨大な人名、繰り返しあらわれる同名異人を処理すべく、系図をこしらえながら読んだ方も多いのではないかと思う。先日ひさしぶりにページを繰ったところ、中からレポート用紙にエンピツで書かれた稚拙な「ブエンディーア家系図」が出てきた。

これが改訳新装版となるとそのあたりが親切設計。もはや昔の読者ほどに系図づくりに精を出さなくてもよいようだ。しかし、「かんりにん」は改訳版を読んでいないため、これに対する言及は避ける。

ずいぶん人に薦めた本だが、残念ながら「面白かった!」という反応がかえってきた記憶がない。そういう意味では、「かんりにん」の布教の力は同書の売れ行きにさほど貢献していないはずである。面白いと思った人間は、すでに『百年の孤独』を知っていたからだ。
それは、すでにマルケスが創造した幻の町マコンドの住民登録が済んでいることを示す。
同じくマコンドを舞台にした短編集『ママ・グランデの葬儀』もあわせて読みたいものである。

しばらくぶりでマルケスの名を聞いた。
「G・マルケス氏、海賊版に一矢?=出版直前に最終章書き換え」という配信記事である。

「百年の孤独」などで知られるメキシコ在住のノーベル賞作家、ガルシア・マルケス氏(77)がこのほど10年ぶりに発表した新作「メモリア・デ・ミス・プータス・トリステス」。これは、1950年代を舞台に、コロンビア人の老人が愛の遍歴を述懐する内容で、27日に出版予定だったが、母国コロンビアで印刷所から流出したとみられる海賊版が広く出回ってしまった。
マルケスは対抗措置として、発売日を1週間早め、さらに最終章を書き換えたと発表した。
マルケスはいまだにマコンドに近い土地で、ネオリアリズムの魔法を操っているようだ。


百年の孤独
G・ガルシア=マルケス〔著〕・鼓直訳

出版社 新潮社
発売日 1999.08
価格  ¥ 2,940(¥ 2,800)
ISBN  4105090089
マコンド村の創設から100年、はじめて愛によって生を授かった者が出現したとき、メルキアデスの羊皮紙の謎が解読され、ブエンディア一族の波瀾に満ちた歴史が終わる…。1972年刊の改訳、新装版。 [bk1の内容紹介]

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『耳をすませば』汐ネエの怒鳴り声

2004-10-22 00:06:18 | 映画
『耳をすませば』は興行的にみると宮崎作品(ちなみに宮崎駿自身はプロデュース・脚本・絵コンテのみ。監督は近藤喜文)の中では上位とは言いにくい。なぜかと考えてみたが、まずラピュタやナウシカのような冒険活劇でもなく、トトロのようなユーモラスな作品でもないこと、それにだめ押しだったのがこの映画の予告編ではないか。
「好きなヒトが、できました」と自転車の荷台に載った月島雫が天沢聖司の背中に額をつけてつぶやく。
これで、まず男性アニメファンの出足は半減してしまったのではないか。だって、劇場へ足を運ぶ以前に、ヒロインが「あたし、彼氏できちゃったから」と先んじて宣言しちゃったのである。他人のモノになっちゃったんだから、もう関係ねえや、と。これが動員減につながった一因ではないか、と思う。また、ひとりでとか野郎ばかりで観にいくには少々照れもある純愛路線。劇場で浮いてしまうのを避けたファンもいることだろう。

だが、作品自体は繰り返しの鑑賞にじゅうぶん耐え得る佳作である。中でも「かんりにん」は雫のお姉さん汐(しほ)がお気に入りである。汐は妄想癖のある雫とは対照的。活動的でありながら、家事もそつなくこなし、まさに今自立しつつある女性である。こんな女子大生、少ないだろうな。
柏崎から東京までヒッチハイクで帰ってくる。服を脱ぎながら妹にあれこれ指図する。マンション共用廊下から手紙を投げる。「コーヒー、飲む?」と母親にコーヒーをいれてやる際、蓋を片手に持ちながら器用にスプーンでコーヒーをすくう。「あたしはやるべきことはちゃんとやってるわ」と自信たっぷりに妹を圧倒する。ついでに宮崎作品の中ではめずらしく下着姿もお披露目。何を言ってもやっても「カッコイイ」のである。なんとなく北村薫の「円紫師匠と女子大生」シリーズの「私」とその姉を連想させる。
で、あえて主役の雫&聖司を避け、その筋ではいまだに取り沙汰される「図書カード」問題も避け、汐ネエ研究といきたい。

年齢は18か19歳。大学一年生であろう。両親の信頼を獲得し、奔放なようでいて、考え方は案外保守的だ。
柏崎のおばさんのところへ行ったのは、おそらくバイトがらみか、と。民宿やペンション住み込みのバイト。帰りに東京方面へ向かう車に乗せてもらったというのは、ずばりバイト仲間(もちろん男性)。となると、ヒッチハイクというのは正確ではないか?
帰宅翌日、汐は手紙の投函を雫に頼んでいる。彼への礼状かと思うが、よくみるとクリップで複数の封書(ハガキか)をとめている。クリップが重しともなっている芸のこまかさ。投下するのに狙いをつけやすくなるし、階下の雫にとってもキャッチしやすくなるのである。「クリップごと出すんじゃないよー」と念の入れよう。
ちなみにこの時、「彼氏?」と雫につっこまれると、「バカ」とこたえる汐。まだ今夏の出会いが恋に発展するのかどうか微妙なところだったのだろう。その回答はドラマ後半の「家を出る」宣言に集約されているような気がする。ちなみにツッコミに対して「バカ」と応じるのは宮崎ワールドのお約束である。

汐の恋の相手はどんな男性か。こんがり日に焼けた頼りがいのある男かな。汐は明らかに家族には隠している一面を持っている。
しかしながら、自分を試すという意味では、汐も雫にさほどリードを保っているわけではないのである。それが、ドラマ当初では圧倒的に優勢だったが、後半では雫から「だってお姉ちゃんがどこの高校にもいけないって言った」と反撃され、絶句。あげくに父から退席を命じられてしまう。話がややこしくなると父は踏んだのであろう。しっかりしているようでいて、汐はまだ詰めが甘いのである。この部分があるから、かろうじて汐は年齢相応にみえるのである。

宮崎ワールドでは、特に女性の自立とは、家業を継ぐか、家を出ることに象徴されている。「紅の豚」のフィオはピッコロ社を継ぐ。「魔女の宅急便」ではキキが十三歳で親元を離れて、修行のため遠くの町で自活する。「もののけ姫」のサンは棄てられたことによって、生まれながらに自立している。家族に先立たれ、孤児となっていた「天空の城ラピュタ」のルシータも同様だろう。
家を出たあとの汐ネエの奮闘ぶり(下宿探しとかキャンパス生活とか就職活動とか)も見てみたい気がする。


号泣してもいいですかァ~「スウィングガールズ」

2004-10-21 00:14:11 | 音楽
映画「スウィングガールズ」のオリジナルサウンドトラック。劇中のセリフ「これって、ジャズ?」「ジャズやるべ!」などが挿入され、楽しい一枚。A列車やムーンライトセレナーデ、シングシングシングなどポピュラーな曲が集められているので、はじめてジャズを聴くという方にもおすすめ。アルトサックスがモノにならなかった「かんりにん」のジャズ初体験は、父が持っていたグレン・ミラーのレコード、アメリカン・パトロールだったっけ・・・

SWING GIRLS...

1 Take a train ride
2 A列車で行こう (演奏:SWING GIRLS)
3 Through the window
4 Falling in Blue
5 Platanus Garden
6 Keep on going, Girls !
7 Stay away from me
8 -swing talk
9 故郷の空 (演奏:SWING GIRLS)
10 メイク・ハー・マイン (演奏:SWING GIRLS)
11 イン・ザ・ムード (演奏:SWING GIRLS)
12 That's what it is !
13 Reminding Sorrows
14 A列車で行こう (Snowy Ver.)  (演奏:SWING GIRLS)
15 -swing talk
16 ムーンライト・セレナーデ (演奏:SWING GIRLS)
17 メキシカン・フライヤー (演奏:SWING GIRLS)
18 シング・シング・シング (演奏:SWING GIRLS)
19 -swing talk
20 What a wonderful worldこの素晴らしき世界 / Louis Armstrong
21 [Bonus Track]-swing talk
22 [Bonus Track]失恋してもラヴィン・ユー / 工場のフォークデュオ